54 六本木男性合唱団

2000.12


 

 

  「六本木男性合唱団」というのがあって、先日横浜のホテルコンチネンタルでディナーショーを開催したところ、3万2千円払って600人の人間が集まり、大盛況だったということを、ワイドショーでやっていた。

 「六本木男性合唱団」なんて聞いたこともない名前だと思ったら、各界の著名人の集まりで、何でも、六本木の「クレイドール」とかいう飲み屋に「自然と」集まった仲間だそうで、作曲家の三枝成彰がまとめ役らしい。政界では羽田孜やら鳩山の兄の方(名前忘れた)やら、俳優の奥田瑛二とか、ソムリエの田崎とかいう人とか、まあそれぞれ名の通った人ばかり。それが70人もいて、忙しいなか練習をして、ディナーショーをやったというわけだ。

 一着12万円もする制服を着て、登場した面々だが、その制服たるや、明らかにナチスの制服を意識しているとしか思えず、黒い詰め襟の丈長のコートの左腕に、真っ赤な腕章。「民主党」の政治家が、よくもこんな格好ができるなあと思っているうち、テレビは、羽田夫妻の「歌」を大公開。

 羽田孜が「森へ行きましょう」を一人で歌う。いくら練習不足だと言っても、のっけからピアノに出遅れる。羽田孜が「森へ〜行きましょう〜娘さん」と歌うと、その妻が「やだ〜」と照れながら歌う。それが繰り返されるうち、セーラー服を着た三人(これも著名人)が出てきたり、森首相のお面をかぶった奥田瑛二が出てきたり、この前の政治劇のパロディらしいが、今どきの幼稚園の学芸会でもやらないようなこのバカバカしい出し物の、テレビで見ていても思わず顔を背けたくなるようないわゆる「寒さ」。

 会場の方々にはどの程度うけたのかは知らないが、結構笑い声も聞こえたから、「羽田さん、よかったよ」なんて周囲のオベンチャラもきっとあったに違いないが、あんな醜態を600人の前で演じたら、ぼくだったら、少なくもと1ヶ月間は、夜中に突然目覚め、「ああ恥ずかしい、舌噛んで死んでしまいたい。」と叫び続けるだろうのに、ディナーショーが終わったあとのインタビューで、まったく照れもせず、「歌を歌うってことはいいことですよね」とシラッと答えるあたりは、さすが政治家というものは、こういう図太い神経がなくてはつとまらぬのだなあと感じ入ってしまった。

 それにしても、昨今の日本という国のどうしようもない幼稚さを集約的に見せつけられたようで、シワスの風の冷たさをしみじみと感じたことである。












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