47 ああ、橋幸夫

2000.11


 

 4月に三橋美智也のCDを探した店で、今度は橋幸夫のCDを探したのだが、悲しいかな、昨今の演歌の衰退は目を覆うばかりで、往年のアイドル歌手、御三家のひとり橋幸夫のCDも四枚しかない。その一枚一枚を手にとって、『花の白虎隊』はないかと調べたが、やはりなかった。

 御三家と言えば、橋幸夫に西郷輝彦、舟木一夫の三人だが、この三人の歌はずいぶん傾向が違っていた。西郷輝彦は『星のフラメンコ』に代表されるように、バタ臭い感じで売っていたし、舟木一夫はもう「お茶漬けの味」のさわやかさで、学生服着て『高校三年生』『学園広場』と、ひたすら高校生路線。そこへゆくと、橋幸夫は股旅ものの『潮来笠』を歌うかと思うと、吉永小百合とデュエットで『いつでも夢を』を歌い、その後突然、叙情歌のような『霧氷』でレコード大賞をとるというように、どこかさまよっている感じがあった。その上『花の白虎隊』とは、どうもうまくつながらない。やっぱり違うんじゃないかなんて疑念も生じる。

 とぼとぼ家に帰ると、「花の白虎隊が入ったCDが見つかりました」と、声も弾んでいるようなTさんのメール。今年の10月に発売された「橋幸夫が選ぶ橋幸夫ベスト40曲」というCDに収録されていますとのこと。

 とうとう見つかった。ありがとうTさん。さっそく店に行って取り寄せの依頼をした。三日後に、来た。二枚組で4200円。一曲聴くために4200円は高いが、そんなことを言っていられる場合ではない。

 さすがに、部屋でCDから歌が流れてくるのを待っているときは、ドキドキした。何と言っても30数年ぶりの「再会」である。聞き覚えのある前奏が鳴る。横笛が入る。そして、「会津若松鶴ヶ城 二十日篭りて城落ちぬ」と歌う声。まぎれもなく、ぼくが何度も歌ったあの歌だ。そして、まぎれもなく、橋幸夫の声だ。

 それにしても、何と歌い方が三橋美智也に似ていることだろう。そして二番の歌詞「秘めて清らなおもかげの 白い鉢巻濡れ羽髪 想えばこの胸せまりきて 呼べど火砲(ほづつ)の答うのみ」の抒情性は、三橋美智也の『古城』に何と似ていることだろう。

 『古城』が好きで好きで、小学生のころから歌っていたぼくだから、この『花の白虎隊』にも心ひかれ、愛唱歌となったのだろう。そして橋幸夫も三橋美智也とともに、ぼくのアイドルだったのだ。そんなことをしみじみ納得して、ひとり悦に入ったのだった。









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