41 十分迷惑

2000.10


 

 近頃の若いもんが、何をしようといちいち文句を言いたくないし、勝手にしてくれとしか実際には言いようもないのだが、しかし、どうしても理解に苦しむということはやはりある。

 先日、テレビで見たのだが、後楽園遊園地だかに、何百組というカップルが列を作って並んでいる。何事かというと、今テレビではやりの「未来日記」をそのまま体験できるという企画とのこと。「未来日記」がそもそも何なのかを説明するのも面倒だが、要するに、恋愛ごっこのようなものらしい。テレビでは、見知らぬ二人が渡されたシナリオどおりに行動していくうちに、いつしか本物の愛が芽生えるのだそうである。

 芽生えようが、どうしようが、それこそ知ったことではないが、その後楽園だかに集まったカップルたちは、テレビと同じように「未来日記」を渡され、そのシナリオどおりにセリフを言ったり、キスしたり、質問に答えたりしていくうちに、お互いの愛が確かめあえるという企画のようだった。

 そういう企画があるのだから、この際、出かけていってお互いの愛を深めようとか、確かめようとかいうニンゲンがいても一向にかまわないのだが、どうしてそういうニンゲンたちが、何百組といるのかが分からないのである。その数が異常である。

 お互いの愛を確かめるなんていう作業は、個人個人の勝手な場でやるべきもので、みんなに一緒にやるもんじゃないだろうって、ぼくなんかはどうしても思うわけで、そんな作業をやってるってことがお互いに分かってしまうような状況で、ふやけた顔して、何百組という若者が、公衆の面前に平然と並べてしまうということが、どうしても分からない。

 いいじゃないの、オジサンは黙ってろよ、俺たちが楽しいんだからそれでいいじゃんかって、彼らは言うだろうが、楽しきゃいいってもんでもないだろう。恥を知るってことが大事なんじゃないか。

 せっかく、一人一人がそれこそ自分の持ち味を出し切れる場としての恋愛を、どうしてそんな安っぽいテレビ番組モドキに合わせてしまうのか。人気番組だから、マネしてみたいというのは、ガキの発想じゃないのか。

 そう言うと、ガキで何故わるい、迷惑かけてるわけじゃないだろうと言うだろう。そういう居直りが諸悪の根源。恋愛をできるまでに成長したいい大人が、まだガキであるということは、それだけで十分わるい。そういうガキがあふれているだけで、いい大人は十分迷惑なのである。







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