26 カラスで村起こし!

2000.6


 

 

 カラスの子育てが始まっているらしく、都心のオフィス街あたりでも、気の立ったカラスに人間が襲撃されるという事件が頻発しているらしい。カラスが集まるのは、生ゴミ故だが、大阪あたりではゴミの回収が夜なので、カラスはあんまりいないのだそうだ。それなら、東京でもそうすればいいのにと思うのだが、コトはそう簡単でもないのだろう。

 カラスの被害が問題になると、結局行き着く所、人間がカラスの棲息環境を破壊したからだ、悪いのは人間で、カラスに悪気があるわけではない、カラスはただ子供を守りたいだけなのだ、というような話になる。

 しかし、そもそも悪気のある動物なんてどこにもいない。悪気のあるのは人間だけだ。人間に向かって、彼のやった行為は確かに人に迷惑をかけたけれど、まあ悪気があってやったわけではないから許してやろうよ、という話なら分かるが、悪気など初めから存在しないカラスの「悪さ」を、悪気がないのだから許そうなんて、まったく筋の通らぬ話だ。

 邪魔な動物はやっつける、それでいいではないか。現に、我々はゴキブリを目の敵にして、ありとあらゆる薬物や仕掛けを使って大量殺戮にいそしんでいる。ゴキブリと共存できる社会を、なんて誰も言いやしない。それどころか、最近のゴキブリ殺しの薬のCMときたら、いくら相手がゴキブリでも、こんなにひどくおちょくるのは失礼ではないかと言いたくなるぐらい、ゴキブリの尊厳を傷つけている。

 何年前だったろうか、東北地方のある村が勇気ある決断をした。カラスの被害に困り果てた村人たちが、災い転じて福となすとばかり、「カラス料理で村起こしをしよう」と考えたのだ。カラスは食べてみると意外にうまいのだそうだ。外見からは想像できないが、肉は白くて淡泊な味とか。これはいける、一石二鳥だというんで、カラスの刺身、カラスの唐揚げ、カラスの照り焼き、カラス鍋(料理の名前までは覚えていないので、適当に思いつくままです。念のため。)と、まあ、カラス尽くしで、キャンペーン開始直前までいったようだ。

 ところが、やっぱりクレームがついた。カラスが可哀想の大合唱に、村おこしの妙案もあえなく露と消えてしまった。何でそんな圧力に屈するのだ、ガンバレと、その村まで駆けつけたいような気持ちだった。今ではその村の名前も忘れてしまったが、村人は「チェッ、ウメー話だったのによお」なんて言って、カラスを睨んでいるのだろうか。




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