87 シウマイ弁当続考

2014.6.28


   昨日、奥本大三郎のエッセイについて、あれこれとあら探しをして、シウマイ弁当に対する愛はオレのほうが上だなんて豪語したくせに、朝にアップしたそのエッセイを、夕方東京へ行く途中の電車の中でiPhoneで読んでいたら、愛しているわりには、記述が雑だということに気づいた。家に帰ってから、そのエッセイを修正しようと思ったけれど、すでに読んでいる方もいるだろうから、後からそしらぬ顔をして書き直すのは、某都議会議員と同じく卑怯な振るまいにも思えるので、改めて続きとして書くことにした。

 前のエッセイに戻るのは面倒なので、もう一度、奥本氏の文章を引用しておく。

カラシ醤油をつけてたべるシウマイは無論美味しいが、鮪の煮付けが、適当に弾力があってこんなに旨いものだとは、これを食うまで知らなかったし、メンマの風味と歯触り、小さな鶏の唐揚げ、細切りの大根の漬物、塩昆布、ほかほかと上手に炊けた御飯、最後に食う乾し杏まで、弁当の傑作として賞味してきた。どこに何が配置されているか、まさに掌(たなごころ)を指すごとく心得ている故に、目をつぶってでも食べることが出来たし、今もこのように書くことができる。

 ここで前回問題にしたのは「カラシ醤油」「鮪の煮付け」「細切りの大根の漬物」「塩昆布」だが、重大な見落としがあった。「メンマ」である。これも間違いなのだ。メンマというのは、桃屋の「味付けメンマ」などが有名だし、ラーメンの具の定番でもあるが、竹の子が素材ではあるが、それを発酵させたもので、独特の風味がある。しかし、シウマイ弁当に入っているのは、メンマではなく、竹の子を甘く煮たものである。昨日リンクをはっておいた崎陽軒のホームページによれば、「筍煮=シウマイに次ぐ人気のおかず。味がよくしみ込んでいます。」との説明があるくらいで、自信の一品なのだ。1センチ各ぐらいに切ったもので、これはほんとに旨い。これをメンマと言われたのでは、崎陽軒も立つ瀬がないだろうが、奥本氏を非難する気にはなれない。悔しいけれど、ぼくも見逃してしまったのだから。

 もう1つの問題点は、「紅ショウガ」である。崎陽軒のホームページでは、「千切り生姜」と書いてあるのだが、果たして「紅ショウガ」という記述は間違いないのだろうか。単に「紅ショウガ」と書くと、吉野屋の牛丼についてくる真っ赤なものを思い浮かべてしまう恐れがある。シウマイ弁当に入っているのは、真っ赤ではなく、薄いピンク色である。あれを「紅ショウガ」と言ってもいいのかと気になって、ちょっと調べてみたところ、「紅ショウガ」というものは「ショウガを、赤ジソや食紅を加えた梅酢に漬けたもの。」とある。ただし、食紅を加えていないものもあり、基本的には「梅酢に漬けたショウガ」と言えばいいようだ。とすれば、ぼくの記述は、誤解を招きやすいが間違いではないということになる。ただ、崎陽軒のいうところの「千切り生姜」が、「紅ショウガ」であるという確証はない。崎陽軒に問い合わせたいところだが、まあ、やめておこう。

 というわけで、奥本氏の記述は間違いが多くいい加減だが、ずいぶん前の記憶で書いているので、罪は軽い。それに対して、ぼくは、それみたことか、よそ者がウンチクを垂れるとこのザマだと言わんばかりの書き方をしながら、ちっとも正確じゃない。どっちが罪が重いかは明白である。

 そもそも「地元民」などという言葉使いがよくない。自分のことを「生粋の地元民」などと言っているが、ただ横浜で生まれ育っただけのことで、父は静岡、母は新潟の出身だから、「生粋の」という枕詞は、ほとんど間違いである。それに「地元民」ならシウマイ弁当の隅々まで知っているはずだという断定もいただけない。地元民だからこそ、知らない、ということもあるわけである。

 で、最後になってしまったが、例の「エビフライ問題」。昨晩、知人からさっそくメールがあった。曰く「シウマイ弁当ですが、確かにエビフライ入っていたのを覚えています。エビフライが無くなった時、すごく悲しかった・・・」そして、このサイトを紹介してくれた。この知人は、ちょっと年下の女性だが、件の「エビフライが入っていたんだよね。」と言った男性の知人とほぼ同い年。年下なだけに、「食べ盛り」に食い違いがあったのだろうか。

 とまあ、ここまで書いたところへ、この前の登場したぼくの同級生である横浜国立大学教授の林部英雄氏から、次のような例によって丁寧なメールが届いた。彼は、奥本氏と同僚だった時期があるのではなかろうか。

 あなたのことだから既に検索してるとは思うけど、シウマイ弁当には確かにエビフライが入っていました。
 ただ、僕が「エッセイ」の中で言及して欲しかったのは、奥本さんの「メンマ」の記述で、あれは断じてメンマではありません。崎陽軒も「筍煮」といっている通り、乳酸発酵させたものではなく、生の筍を煮込んだものに違いありません。メンマとは歯触りが全く違います。
 実はその「筍煮」が、シウマイ弁当の中での僕の一番の好物なので看過できないのであります。崎陽軒のシウマイ弁当以外の弁当を選ぶ時には、筍煮が入っているかどうかで決めるくらいです。勿論ラーメン等にのっているメンマはメンマで大好物なので、なおさらです。

 といって、同じサイトを紹介してくれていた。

 これだけの反応が瞬時にあるということは、いかにシウマイ弁当が愛されているかの証明ではあるが、「エビフライなんか入っていたかなあ。」なんて言っているぼくなどは、まだまだ「素人」であることは間違いなさそうだ。

 

 

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