20 重いカメラをぶらさげて 

2013.4.6


 4月1日は、われわれ夫婦の結婚記念日である。同い年で、23歳の時に結婚したので、ちょうど今年で40周年ということになる。エイプリルフールに結婚したにしては、長いこと続いたものである。もっとも、結婚式の日がエイプリルフールだということは、だいぶ後になって気がついたことで、式の当日は誰もそんなことを話題にしなかった。気を使ってくれていたのかもしれない。教員になって2年目の春休みで、日曜日の大安、それに学校が始まる前に新婚旅行から帰ってこなければならないという条件を満たすのが4月1日だったということだけのことである。

 で、まあ、40周年という節目なのだから、どこかへ行こうと家内の方が言い出して、お伊勢参りもいいなあなどと言っているうちに、どういうわけか、金沢にしようということになった。ハワイとかグアムとかにならないのは、ぼくが飛行機に乗れないからだ。なぜ乗れないのか分からないが、とにかく嫌で、まだ一度も乗ったことがない。

 金沢に行く前に、福井の永平寺にも行きたいということで、金沢駅前のホテルにとまって、1日は主に永平寺、2日は金沢をまわるということにして、ホテルの予約はどうするかとか、電車の時刻とか、切符の手配とかは、全部家内が調べて計画をたててくれた。普通こういうことは夫の仕事なんだろうが、ぼくはどうも旅行の細かい計画が苦手なのだ。数字に弱いので、時刻表を調べて、これに乗ってこれに乗り換えてということを正確に考えることがどうもできない。いまだに24時法に弱くて、16時といわれても、午後の4時のことだとは分かるのだが(分からなければバカだ)、なんか自信が持てないのだ。

 今回は、金沢では、室生犀星、泉鏡花、徳田秋声の3人の作家の記念館を巡るということを一つの目的とした。これでもいちおう国語の教師だし、室生犀星は、ぼくが卒論で書いた作家だ。その作家たちの足跡をたどりつつ、文学碑などに刻まれた「文字」の写真を撮ろうということも目的だった。「文字」なら永平寺にもきっとたくさんあるに違いない。金沢の茶屋街にも、のれんとか、いろいろありそうだ。もちろん、風景も撮りたいし、えちぜん鉄道の電車も撮りたい。

 こうなると、どのカメラを持って行くかが大きな問題となる。コンパクトデジカメは軽くていいのだが、意図する写真を撮ることは難しい。当然、ここはデジタル一眼の出番だが、さて問題はレンズだ。風景では広角レンズが欲しいし、電車や文字となると望遠が必須。となると、ズームレンズということになるが、どのズームレンズにするか。いろいろ迷った挙げ句、カメラはNikonのD7000、レンズは18〜300ミリという超ズームのレンズをもっていくことにした。ところが、これをドッキングさせると、その重量は約1.5キロある。これは相当重い。

 しかし、ここは気合いだ。いい写真を撮ろうと思ったら、カメラが重いなどとヤワなことは言ってはいられない。というわけで、腰にはコルセットをきっちり巻いて、重いカメラをぶら下げて、春浅い北陸を、あっちへウロウロ、こっちへチョロチョロまわってきたのだった。

 ちょっと専門的になるが、今回はデジカメの画像を、jpegではなくて、RAWで撮影した。これは、画像を家に帰ってから、思い切り自由に補正ができるということを意味する。多少露出オーバーの写真でも、画質の劣化なしにちゃんと補正できる。この作業を帰ってからずっとやっているが、これが何よりも楽しい。小学生の頃にカメラを初めて買ってもらったときからのカメラ好きで、高校生の頃には、夜中になると白黒の写真の現像を自分でやるのが何よりの楽しみだったというぼくだから、まあ、昨今のデジタル写真は、「夢のよう」なことなのだ。何しろカラー写真の現像を自分で出来るということなのだから。こんなことは、ぼくが高校生の時代には想像もできないことだった。

 今回撮った写真は、ブログ「Yoz Art Space」にアップし始めている。どうぞご覧ください。

 あ、写真のことばかりになってしまったが、金沢の夜、金沢在住の知人に紹介された店で食べた、「ホタルイカの刺身」と「ホタルイカの石焼き」は、もう、ほんとに旨かった。「手取川」の純米大吟醸とともに忘れがたい味であった。旅の楽しみの究極は、何といっても、その土地の食べ物である。


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