5 ちょっとした「アナログ回帰」 

2012.12.22


 なんでもかんでもデジタルじゃ味気ないなんて言葉を聞くと、また言ってらあ、しょうがないセンチメンタリズムだなあと思ってきた。いまだに、LPレコードを聴いたり、フィルムで写真を撮ったり、電子書籍を拒んで紙の本にこだわったりする人を見ると、どうしてそういつまでも古いものにこだわるんだろうと軽蔑の眼差しを投げかけてきた、と言っては大げさだが、まあ、頑固だなあと思ってきたわけである。

 しかしどうも近ごろ、デジタルライフに疑問を感じだし、若干反省もし、「脱デジタル」というほどではないにしろ、ちょっとした「アナログ回帰」傾向にある。

 といって、パソコンで音楽聴くのをやめて、LPレコードを集め出したとか、デジタルカメラを捨ててフィルムカメラを中古カメラ店から買ってきたというわけではない。それも悪くないとは思ってはいるが、さしあたっては、「手書き」を大事にしようと思っているのだ。

 去年は喪中だったから、年賀状は書かなかったのだが、今年はやっぱり年賀状をどうしようかというのが悩みだった。今までは、過去に描いた水彩画を使っていたので「型」が決まっていたのだが、ここのところとんと水彩画を描かないので、困っていたのだ。

 書道をやっているのだから、何とかならないだろうかと試行錯誤を繰り返してみてはいたが、うまくいかなかった。ところが、先日、書道の教室で、先生から渡された年賀状の見本を見て、ああ、こんな感じならできるかもと、ようやく光が見えた。巳年だから、ヘビの絵をニョロニョロって描いて、「頌春」という文字を書く。後は、「癸巳元旦」と、住所氏名。これを全部筆で書く。

 しかし、こちらから出すだけでも150枚もあるので、これを全部一枚一枚書いたら大変だ。それで、「ヘビの絵」、「癸巳元旦」、「住所氏名」、それに「ご多幸をお祈り申し上げます。」の文言は、筆で書いたものをスキャンして先に印刷してしまう。その後で、「頌春」だけを一枚一枚手書きで書く、ということにした。出来上がってみると、「頌春」の文字も印刷したように見えてしまうが、机に並べてみると、「頌春」の字がみんな違うので面白い。今までの水彩画の年賀状は、絵はスキャン画像で、縮小されていたのだが、今回はオリジナルな字である。ここだけ「脱デジタル」である。

 しかし、宛名書きは、今年初めて宛名書きソフトを使って印刷にした。今までは、ここにこだわって全部手書きだったのだが、とうとう踏み切った。やってみるとウソのように楽だ。それに書き間違いもないし、誰に出したかもきちんと履歴が残るので大変便利だ。

 まあ、そんなわけで、ぼくの「脱デジタル」「アナログ回帰」というのも、実に中途半端ではあるが、ちょっとずつ重心をずらしていこうかと思っている。


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