95 『おひさま』がはじまった

2011.4.8


 NHKの朝ドラ『てっぱん』も、最終週は大震災のために1週遅れの放映となったが(BShiでは遅れずに放映していた)、それでもようやくめでたく大団円を迎えることができてほっとしたのだった。半年というのは、それこそあっという間で、『ゲゲゲの女房』をつい最近見ていたと思ったら、その後の『てっぱん』がもう終わってしまったことに驚いている。

 『ゲゲゲの女房』の出来が非常によかったので、その後の『てっぱん』は、その題名からも、どういう話なのか見当もつかず、まったく期待していなかったのだが、これも非常によい出来だった。ヒロインの瀧本美織もよかったが、やはり何と言っても富司純子が圧倒的にすばらしく、安田成美もきれいだった。物語の筋も、ちょっと気を持たせすぎの感はあったが、意外な展開があって、日々気をもんで見ていたのだった。

 ヒロインの「あかり」における「尾道の家族」と「大阪の家族」をめぐっての心の葛藤は非常に丁寧に、ときに丁寧すぎるくらいに描かれていて、リアルな感情があふれていたが、あかりと滝沢君の恋にはどうも恋の持つエロチシズムが欠けていて、ほんとうにあかりは滝沢君が好きなのかなあ、滝沢君はどうなのかなあと常に疑問だった。だからこそ、最後に二人は結ばれることがなかったのだといえばそうなのだが、それは計算の上のことだったのか、それとも脚本あるいは演技のつたなさ故だったのか、ちょっと分かりかねる。

 そういえば、やたら声のいい岩崎先生も、いったいこの人はどこに住んでいて何をしている人なのかよくわからなかった。家内によれば、あかりのほんとうの父親を引っ張り出すための人なんだから、その辺はどうでもいいのよ、ということになるが、まあそれならそれで仕方がないとするしかない。いろいろ突っ込んでいけばきりがないが、とにかく楽しめた。ありがとうと言いたい。

 あっという間に『てっぱん』が終わったと思ったら、『おひさま』である。これも、ずいぶん前の番宣で、ヒロインを井上真央がやると聞いて、ぼくは小林麻央がやるとすっかり勘違いして、エビゾウと結婚したばかりなのに、今度は朝ドラかあと、何となく「見たくない」モードだったのだが、『てっぱん』が終わりかかるころになって、次は『おひさま』ですと番宣が入るようになり、そこに出てくる女の子がどうみても小林麻央には見えず、これは幼い頃の役者かなあとまだ思っていたが、とうとう「井上真央」であって「小林麻央」ではないことが分かった。しきりに何だそうだったのかと納得するぼくを家内は冷ややかに見ていたが、同じ「マオ」だから無理もないところではなかろうか。

 とにかく、生徒の名前も覚えられないぼくは、信じられないことに、例えば「小池」と「金子」の区別がつかず、いまだに「小池さん」に向かって思わず「金子さん」と言ってしまったり、演劇部員だった「小島君」と「児玉君」をとうとう6年間も間違え続けたこともある。まあ自慢にもならないが、そんなことだから「井上真央」と「小林麻央」を混同するくらい朝飯前なのである。

 それはとにかく『おひさま』には参った。第1週から、あまりのドラマの展開に、毎回のようにテレビの前で涙してしまうのである。だいたいぼくはテレビをみて泣くなんてことはなかったのだが、昨今の世の中の状況によって、涙もろくなっているのかどうか知らないが、あまりにかわいそうな場面ばかりで、あまりに安曇野の風景も美しく、そのうえ「陽子」の子役の八木優希があまりにうまく可愛く、そのうえ原田知世があまりに透明できれいで、その原田知世がまだ始まったばかりなのに、死んでしまうなんて、とても涙なしには見ることはできないのである。

 第2週あたりから落ち着くだろうが、このままの調子でやられたら、ぼくの涙も涸れ果ててしまうであろう。困ったことである。

 

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