48 ちゃんと起きて使おう、iPad

2010.6


 iPadを手に入れてから10日ほど、まだ使いこなせているわけではない。2日ほど前のことだが、朝、ベッドに横になったまま、何か便利なアプリがないかと探していた。すると漢和辞典らしきものがあったので、おやどういうものかなと思って、そのアイコンにタッチしたところ、突然その近くにあった別のアプリのダウンロードが始まってしまった。仰向けに寝たまま操作していたので、指が思いがけない場所に触ってしまったのだ。あ、しまった、と思っている間もなく、ダウンロード終了。「悲劇」はここからだった。

 iPad用のアプリには、無料のものと有料のものがある。有料といっても、100円ぐらいのものから数千円のものまである。それらが、ごちゃまぜに並んでいるのだ。今、ダウンロードされてしまったアプリが一体有料だったのか無料だったのか、ドキドキしながら調べてみた。どうか無料アプリでありますように、たとえ有料でも200円ぐらいでありますように、と念じながら。

 ところが何と、1400円の有料アプリ。しかもドイツ語の辞書らしきものである。(何しろ全部ドイツ語なのだから、辞書なのかどうかも分からないのだ。)最悪の事態である。これがせめてフランス語の辞書なら、まだ何とか使える。ほとんど講義にも出なかった大学のフランス語の授業ではあったが、いくつかの単語も覚えている。しかしドイツではどうしようもない。まったく読めない「本」を1400円も出して買ってしまったわけなのだ。

 現実の書店だったら、絶対こういうことは起こらない。ドイツ語の本をレジに持っていくことなどあり得ないし、それより何より、ドイツ語の本の棚の前なんて絶対に行かない。ところが、こういうバーチャルな「店」には、普通の日本人には縁のないものまでゴチャゴチャに並んでいて、しかも、指でちょっと触るだけで、それで、1400円払って買ってしまうことになり、それを「あ、ちょっと待って、間違った!」と叫んでも、絶対に聞き入れてもらえないのだ。第一店員もいないのだ。

 その日は朝からブルーな気分だった。ベッドの上で1400円掏られてしまったようなものだ。しかしこういう「悲劇」は、IT機器とつき合う以上は何度か経験しなければならないこと。これからiPadを購入される方には、アプリの購入だけは、ちゃんと起きて、きちんとiPadを机の上に置いてから、なさることを心からお勧めする次第である。


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