47 アップルびいき、あるいはアップル狂い。

2010.6


 つい最近まで、「欲しいものがない」と言っていたのに、今では、欲しいものだらけになってしまった。iPadのせいだ。

 ワープロの出現以来、新製品には次から次へと飛びつき、アップルのコンピュータを買ってからは、アップルの製品をひたすら追いかけてきた。買わなかったのは、iPhoneぐらいのものである。携帯は家族割りなどの問題もあって、簡単にはiPhoneに乗り換えられなかった。それに、携帯はほとんど使いこなせないし、携帯端末でウェブを見る必要性も感じなかった。第一、画面が小さすぎて、老眼に身にはつらい。それでもiPhoneのデザインと機能性には、「使わなくても持っていたい」と思わせるものがあって、その気持ちを抑えるのは結構大変だった。

 そこへ、とうとうiPadのご登場である。アップルファンとしては、買う「義務」がある。何に使うかなどということは、買ってから考えればいいのだ。

 発売初日には間に合わなかったが、6日目には入手できた。久しぶりに買い物のワクワク感を味わった。iPad専用の特設カウンターで手続きをしていると、となりで、70歳代と思われる女性が、息子の代わりに予約に来たと言いながら、「息子のを触ってみて、使えそうだったら私も買うつもりなの。だって楽しそうじゃない、テレビのCMなんかみると。」などと言っていた。70歳の女性に「楽しそうだ」と思わせるコンピュータ製品というのは、やはりたいしたものだ。日本人のくせに、アメリカびいきなのかと言われても、こればかりはどうしようもない。

 買ったその日は、家に帰って5時間ぐらいはiPadにかじりつきで、まあ、昔からそうだけど、あなたは一つのことに夢中になるともう自分のことしか頭になくなるのねえ、という家内の言葉を耳にしながら、ほぼiPadの全容はつかんだ。

 翌日は、学校へ持っていって、片っ端から見せ歩いた。前から買うぞ買うぞと吹聴していたのだが、それにしても、もう買ったのかという呆れ声を聞きながら、まるでアップルの営業マンのごとく、iPadの素晴らしさをプレゼンした。「どうだ。これでも君は買わずにいられるかな?」なんて言うと、まったくこの人はしょうがないなあと、みんな苦笑い。(ひょっとして嘲笑?)

 なんかあんまりパッとしない毎日だけど、これでしばらくは生きていけそうだよ、と言うと、同僚たちは、ちょっと気の毒そうな顔をした。(ように見えた。)


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