44 3D好き 

2010.5


 つい最近、家から歩いて10分ほどの所に映画館が出来た。上大岡駅前の再開発にともなって出来た高層マンションの低層部に映画館も入ると聞いたのはもう3、4年も前のことだ。自宅から歩いて行けるところに映画館があるなんて、幼年時代以来のことで、心待ちにしていたのだが、それがようやくオープンの運びとなったのである。

 その上、去年還暦を迎えたのでシニア料金1000円で見ることができる。これはやはり大きい。いつ見ても1000円というのはやはり安い。50本見ても5万円だ。

 今回は、同居している次男夫婦が、チケットを二人分プレゼントしてくれたので、とにかく早く行かねばと思っていたのだが、先日ようやく夫婦で時間がとれることになって、『アリス・イン・ワンダーランド』を見た。初めての3D方式である。

 ずいぶん前から3D上映というのはあったと思うのだが、ここへ来て『アバター』の公開もあり、一気に盛り上がっているような気配だ。『アバター』は残念ながら見逃してしまったが、『アリス』は、監督もぼくの好きなティム・バートンだったこともあってか、予想以上の出来映えと立体感で、大満足だった。

 立体写真というものの歴史は、実は相当古いもので、すでに大正時代に立体写真機があり、詩人の萩原朔太郎がその立体写真に凝って、数多くの作品を残していることは、あまり知られていない事実だ。朔太郎の撮った立体写真は、何の変哲もない風景だが、詩人はその立体感に胸躍らせたに違いない。それが立体映画である。朔太郎が生きていたら狂喜乱舞したことだろう。

 別に映画が立体的に見えたところでたいしたことないじゃないかと言う人もいるだろうが、いやどうして、すごいものである。何しろ、「チュシャ猫」が客席の真上に浮かぶのである。画面の奥から走ってくるウサギが、ビュンと後ろへ走りさるのである。話の筋なんてもうどうでもいい。とにかく字幕が空中に浮かんで見えるだけで、もう素晴らしいの一言だ。

 ぼくも朔太郎と同じように、「立体視マニア」なのかもしれない。そういえば、少し前、わけのわからない模様が印刷された本のページを、じっと見ていると、突然立体的なイメージが浮かんでくるというのがあった。あれにもずいぶん凝った。「ドロップシャドウ」で、文字などが紙から浮いて見えるのも、ものすごく好きだ。

 この勢いだと3D映画なら片っ端から見るということになりかねない。用心、用心。


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