25 笑いがいちばん

2010.1


 落語ブームと言われてずいぶん経つが、いまだに続いているようだし、お笑いの世界も最近はずいぶん勢いがある。年末の108組のお笑い芸人が登場するスペシャル番組を見ていたら、そのほとんどが一度は見たことがある芸人だったので我ながら驚いた。

 子どもの頃からお笑い番組が好きで、テレビの前でゲラゲラ笑っていた。特にコント55号の登場は衝撃的だった。あまりのおかしさに、文字通り畳の上で笑いころげた。本当におもしろいときは、立っていることも座っていることもできないもので、立っていれば膝から崩れ落ちるし、椅子に座っていれば床に転げ落ちる。これでなくてはダメである。笑うといっても、もう息ができないくらいに笑いの発作が続き、涙は出るし咳き込むし、もう死ぬかと思うくらいのおかしさでなければダメなのである。コント55号の場合はそういうおかしさだった。

 最近ではある寄席で、柳家花緑の枕に若い女性が引きつけを起こしそうになるくらい笑い、このまま椅子から転げ落ちるか、失禁でもするかと心配したほどだったということがある。まあ落語では、こうした笑いが必ずしも求められているとは思わないが、格別のおかしさがあった。

 年末のM1グランプリでは、「笑い飯」のネタが久々の大爆笑ものだった。あまりのおかしさに久しぶりにテレビの前でヒーヒー言ってしまった。最高だった。もっとも「笑い飯」はこのネタがあまりに完成度が高すぎて、決勝のネタが霞んでしまい、優勝は逃してしまったが、まああれだけ受ければいいだろう。

 こうして見てくると、最近のお笑い芸人は、うまい人たちが多いとつくづく感じる。ただテレビでは細切れで、じっくりと見せてくれないのが残念だ。ライブに行けばいいのだろうが、そういう暇もないので、テレビで今のところは我慢するしかない。

 ぼくのエッセイも、初期の頃は結構笑えるものが多かったのだが、最近は老人の愚痴みたいなのが多くて反省している。生徒や教師の話で、笑えるネタはいくらでもあるのだが、なかなかこういう場では書けないのが残念だ。ネタにされた人を傷つけることなく、笑い話にするというのは至難の技。そういう意味では自虐ネタがいちばん安全なのだが、それにはそれなりの覚悟がいる。

 早稲田を出たのに、パンツ一丁で出てきて「早稲田を出ました。何の意味もない。」と踊って、一定の笑いをとってしまう小島よしおなどは、ある意味エライのかも。


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