5 緊急地震速報

2009.8


 台風19号の雨が気になっていたせいで、朝5時ちょっと前に目が醒め、トイレにいった。雨はそれほど強くない。気象情報を聞こうと思って枕元に置いてあるipod用再生機の付属ラジオでNHKの放送を聞いていた。まだそれほど近づいていないようだなと思っていると、突然放送が中断しどこかで聞いたことのある警告音のようなものがけたたましく鳴り、「緊急地震速報が出されました。地域は静岡県と神奈川県です。」という音声が流れた。えっ、これ本当か? と思う間もなく、そう5秒ほど後だろうか、激しい揺れが襲ってきた。5時7分。駿河湾を震源とするマグニチュード6.5の地震だった。津波注意報が出ているということが繰り返し報じられ、そのうち横浜の揺れはどうやら震度4だったということが間もなく分かった。

 緊急地震速報というものが運用され始めたのは確か去年だったと思うが、そういうものが出ても、おそらくその時にラジオをつけていることはないだろうから、一生耳にすることはないだろうと思っていたし、万一そういうものを耳にしたところで、数秒ではどうにもならないと思っていた。ところが今回もろに聞いてしまったのである。結構感動してしまった。

 数秒ではどうにもならないということは確かだった。しかしこの数秒で、ちょっとした心構えはできた。「さあ、いらっしゃい!」なんて威勢のいいものではないが、少なくとも不意を突かれるよりはましだという気がした。もっともこれも震度4程度のことだったからかもしれない。

 その後寝付けないのでラジオを聞いていたのだが、いつの間にか落語が始まった。こんな時にNHKもずいぶんと暢気なことをしているなあと思いつつ聞いていると、どうやら演目は「転宅」。さていったい誰だっけ、聞いたことのある声だなあと思い、確かめるために終わりまで聞いたが、ナレーションも入らずに次の演目に移った。今度は「猫の災難」である。これもどこかで聞いたなあ、それにしても変な放送だなあと思いつつこれも最後まで聞いたが、今度はそのまま無音状態になった。いかにもおかしいので、よく確かめると、何のことはない、いつの間にかipodが再生されていたのである。寝ぼけてipodの方のボタンを押したらしい。道理で聞いたことのあるものばかりだったわけだ。柳亭市馬だった。

 まあ東海地震本体でなくてよかった。本体だったら落語など聞いいられる場合じゃなかった。


*ipod用再生機=ipodは通常はイヤホンで聴くわけだが、これをラジカセのようにして聞くことができる機械がいろいろ発売されている。

ちなみにぼくのipodには、落語が200題以上入っています。



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