89 草なぎ君事件雑感

2009.4


 草なぎ君が逮捕された。酒を飲み過ぎて、深夜の公園で全裸で大騒ぎをしていて通報されたという。その後のテレビの報道たるや、すさまじいものがあった。NHKですら、ほとんどトップ扱い。アナウンサーがまじめくさって、草なぎ容疑者はビールや焼酎を10杯ほど飲んだということです、などと、まるで「10杯ほど酒を飲む。」ということが人道に反した驚くべきことだと言わんばかりの調子で報ずる始末。

 警察も警察で、逮捕されたのが未明で、取り調べが終わって釈放されたのがその日の午後だというから10時間以上も拘留されたことになる。泥酔していて取り調べに応じられるようになるまで相当な時間がかかったにしても、ずいぶんと大げさな対応だ。

 これがもし草なぎ君が無名の庶民で、しかも裸で騒いでいたのが六本木の公園ではなくて、どこか田舎の田んぼだったら、近くの早起きのお年寄りがやってきて、「何やってんだ? おめえ、真っ裸でねえか! そんなモン、大事にしまっておけや。さ、服着て、けえれ!」とか何とか言って家に帰してくれただろう。まさかそのお年寄りが「こりゃ、えれえこっちゃ。犯罪じゃ。」と言って、駐在所に駆け込むなんてことはあるまい。

 都会ではすぐに警察沙汰だ。泥酔のあげく刃物を持ってあばれてどうしようもないのならともかく、ただ裸になって大声出している人間がいただけなら、誰かが近寄って、せめてパンツぐらいはかせてから、通報したいならすればいいではないか。まあ現場にいたわけではないから、本当のところはよく分からないが。

 いずれにしても草なぎ君は超有名人だから、このたびの件はまことに不運と言うべきだろう。まだ酔いが醒めていないモウロウとした状態で別の警察署に移送される姿をテレビで流されたり、謝罪会見までさせられたり、地デジの担当大臣から「最低の人間だ。」とこきおろされたり、さんざんだった。もっともその「裏切られた。」という気持ちも十分に理解できるので、その後大臣が猛烈な抗議にあって謝罪させられたのも気の毒だった。

 知名人のコメントでも、「ぼくだってそのぐらいのことはしたことありますよ。」という西の方の知事のコメントより、「まあ彼もストレスたまってたんじゃないの。裸になりたいって気持ち、ぼくにも分かるよ。」というコメントのほうが大人だなあと共感できたのは、それが大嫌いな東の方の知事のものだっただけに、ちょっと悔しかった。


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