47 シズシズパタリ

2008.7


 開き戸が開きっぱなしになるのを防ぎ、また、バタンと大きな音をたてて閉まるのを防ぐのが、ドアクローザーというもので、これを見たことがないという人はまずいないだろう。

 勤務校の職員室の出入り口は開き扉なので、当然このドアクローザーがついているのだが、この数ヶ月というもの、これが不調で、教師や生徒が出入りする度に激しい音をたてていた。特に夏になって職員室の窓が全開になっていたりしていて、しかも風が強い日などは、もう部屋中に響くような大音響をたてて閉まるのであった。

 それに対して、「どうなってんだ、このドアは。」とか「このクローザーがダメになっているんじゃないの?」などとブツブツ文句を言う教師はいても、いっこうにバタンバタンの大音響はやむことがなかった。こういうことは事務室に「修理願い」を提出すれば、たいていは数日後に直るはずなのに、だれもそんなものを提出する気もないのか、あるいは提出しても無視されたのか、あるいはほとんどの教師はそんなことには気もつかないほど教育に熱中しているのか、毎日大音響が響き続けていた。

 ぼくは、こんなのはドライバー1本あれば簡単に直せることは知っていたが、誰かがそのうちやるだろうと思って様子をみていた。別にすぐにやってもよかったのだが、いろいろと雑事があってその余裕もなかったのだ。と同時に、事態を自ら進んで解決しようという気の利いた教師がいるだろうかと観察してみようという気持ちもないこともなかった。(イジワルジイサンなので)

 しかし結局そういう教師は現れず、あいかわらずのバタンバタンにとうとう我慢ができなくなって、ドライバーを持って立ち上がった。といっても、ドアクローザーについているネジをちょっと回すというだけの単純な作業なので、一つの扉に3分とかからず、2枚の扉で5分もしないうちに、扉は、シズシズパタリと、まるで高級ホテルの扉のように閉まるようになった。

 それを見ていた若い教師は、へえーっと言って感心している。こういう風にすれば直るのだということをどうも知らなかったらしい。このくらいのことは常識だぜ、と自慢しながら、自分で直そうという気持ちの前に、知らないんじゃしょうがないかと思ったが、知っていても「オレの仕事じゃない。」と、やらなかった教師もいるんじゃなかろうか。だとしたら、生徒に偉そうなことは言えた義理ではないよなあと思うのだ。


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