43 地震がくるといいながら

2008.6


 『地震がくるといいながら高層ビルを建てる日本』という本が出ているが、ヨーロッパ人からすれば、地震がくるのが分かっているのに、どうして日本人は平気で高層ビルなんて建てるのだろうかと不思議に思えるということなどが書いてあって、その疑問はぼくもずっと持ってきたものなので、その本を買うまでもなく納得共感してしまった。

 昔は日本は地震があるから高層ビルは建てられないという話だった。それがいつの間にか高層ビルが乱立するようになった。まさか倒れてもいいやということになったわけではないだろうから、よほど技術的な進歩があったとしか思えない。しかし『高層難民』なんて本も出ていて、地震がきたとき、パタンと倒れないまでも、エレベーターなどが使えなくなり、50階に住んでいる人などは給水車と「家」の間を徒歩で上り下りしなければならなくなるなどというオソロシイ記述をみると、ほんとにどうするんだろうと思ってしまう。それも、高層ビルのマンションは、危ないから格安だというならまだ分かるが、超高級マンションなのだから、ますます分からなくなる。

 2016年のオリンピックに開催地として東京が名乗りをあげ、今度の選考でトップ当選したなどという話もよく分からない。東京の直下型地震がこの30年間に起こる確率は70パーセント、東海地震にいたっては85パーセントにも及ぶというのに、どうしてそんな危険なところでわざわざオリンピックをやらなければいけないのか理解に苦しむのである。オリンピック中に大地震が起きたらどうするつもりなんだろう。トップ当選をうけて、超党派の議員連盟の面々が能天気に笑っている姿をみると、腹立たしくなってくる。

 オリンピックなんてどうでもいいから、少しでも東京を安全な都市にするような改造をするべきではないのか。オリンピックでバカ騒ぎをするような時代はとっくに終わっているはずではないか。

 石原都知事が「オリンピックの東京開催に都民が白けているのは、マスコミのせいだ。」と怒っていたが、そのマスコミも、「東京オリンピック」には冷たくても、北京オリンピックなんてやってる場合じゃないでしょなどとは絶対にいわない。要は、目先の金が欲しいということだ。ましてタクシーに乗って、ビールが出てきたら普通飲むでしょうと平気で言う議員たちに、目先の更に先へ想像力を働かせろといっても所詮は無理な話なのかもしれない。


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