24 センセイ!

2008.1


 最近の日本語のアクセントの乱れは、やはり気になる。といっても、アクセントというのは、当然標準語と関西弁では違うわけだし、関西弁のアクセントが間違っているなどということはもちろんない。けれども、いちおう標準語で話すことになっているらしいNHKのニュースなどで、このアクセントはおかしいんじゃないかと思うことがあって、それがどうも気になってしかたがない。その代表が「二月」と「四月」である。

 ぼくの「標準語的感覚」によれば、「二月」は「ニガツ」と平板なアクセントで読むのが正しいと感じられる。ところが最近ではまずほとんど「ニガツ」の「ニ」にアクセントを置いて読む。「ニ」が強く、音程も高く、「ガツ」が弱く、音程もやや低い。「シガツ」も同様である。これがどうも気になるし、嫌だ。

 先日、柳家喜多八師匠のラジオでのトークを聞いていたら、「師匠」つまり「シショウ」のアクセントについて、最近は「シショウ」の「ショウ」のほうにアクセントを置く人がいて気になると言っていた。これは当然「シ」にアクセントを置くべきだろう。

 これもつい先日、中学1年生相手に漢字のテストをやって、「宣誓」というのを出題したら、テストの後、かなりの生徒が「センセイって、先生だと思っていました。」と言う。「だって、小学校の運動会で、選手宣誓をやったんじゃないの? センセイ! ぼくたちはスポーツマンシップにのっとり、とかさ。」と言うと、「だから、先生! っていうことかと思っていたんです。」と言う。「じゃあ、君たちは、宣誓を先生に向かって言っていると思っていたのか。」「そうですよ。」「しかし、宣誓と先生じゃ、アクセントが違うだろ。」「だって宣誓なんて言葉、知らないし……。」

 言われてみればもっともである。運動会とか甲子園大会の開会式で、それこそ何度も何度も見て、聞いているのに、「選手宣誓」というのは、誓いの言葉ですよ、「宣誓」というのは「先生」のことじゃありませんよ、と丁寧に教えてもらう機会などは、小学生にはたぶんなかったろう。

 けれども、アクセントについて、もし小学校の先生や親が少しでも子供に注意を促すことがあったなら、「宣誓!」と球児が叫んだとき、おや「先生」じゃないんだな、と子供は感じるはずである。アクセントなんてどうでもいい、いや言葉にアクセントがあるなんてことを意識しない世の中には、勘違いも蔓延するという次第である。


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