22 それから?心

2008.1


 人間というのは「物語」を追う動物である、というようなことを落語家の柳家小ゑんが言っていた。別に目新しい言葉ではないが、そうだよなあと妙に納得した。

 「それからどうなったの?」というのが人間の基本的な「知りたいこと」である。これが「物語」だ。一方で「それからどうなるの?」というのがある。こちらは答えがないから安心できない。だからこれは宗教の分野になる。「死んだらどうなるの?」という究極の問いに、さまざまな宗教が答えを出している。けれどもそれらは誰も証明できないから、問いは問いとして、永遠の中にぶら下がり続ける。信仰とは、ぶら下がり続ける永遠の問いへの不断の応答と言えるかもしれない。

 「物語」に話を戻すと、とにかく「それからどうなったの?」という問いに、「それから、こうなってね。」「へえ、じゃあ、こうなったの?」「そう思うでしょ? ところが違うんだ。実はこういうことが起きてね。」「へえ、で、どうなったの?」「でね、こうなって、こうなって、それで、こうなっちゃったんだよ。」「うわー、信じられない。で、で、それから?」というのが「物語」である。

 2時間のサスペンスを相変わらず見ているが、いつでもこうした「物語」をドラマの中で追っている。相も変わらず似たようなパターンの物語が展開しても、その都度「それから?」という問いが心にあるから、見てしまう。あまりに展開が予想通りだと腹がたつ。そうかといってあまりにも無理な展開で裏をかかれるのも面白くない。しかし、とにかく「それから?」で、見る。見続ける。

 連続ドラマは面倒だからあまり見ないが、去年の『どんど晴れ』は、教え子が出ているからということで見始めたら、やはり「それから?」にはまった。最後の方ではあまりのハッピーエンドに思わず感動してしまった。こういうドラマはハッピーエンドでなきゃいけない。

 今年はフジテレビのお昼のドラマ『安宅家の人々』に、これも教え子の一人で、長いことずっと応援している俳優の渡辺寛二がレギュラー出演する(岩井和孝役)というので、第1回からビデオに録画して見ている。吉屋信子原作という古い話をバブル期に置きかえたとはいうものの、なかなかすごい展開で「それから?心」を大いに刺激してくる。渡辺寛二も毎回は出ないようだが、牧師の役でいい演技を見せているので最後まで見ることになりそうだ。こっちはハッピーエンドになるのだろうか?


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