21 金の切れ目が…

2008.1


 今までいろいろなことに手を出してきたが、その90パーセントは途中で投げ出している。それをぼくは自分の「B型の飽きっぽい」性格のゆえだと思ってきたが、今年の年賀状に、昔の教え子が「エッセイ500達成おめでとうございます。先生はB型じゃないんじゃないですか?」なんて書いてきたのを読んで、飽きっぽいのは確かなんだけど、結構続けられるものもあるなあと思った。

 このエッセイを続けることができたのは、もちろん読者の皆様の温かいご声援によるのだが、もうひとつ重要な理由は、「金がかからない」ということである。これは物事を続けるにはとても大事なことだ。もっともお金が湯水のようにあって、使い道に困っているような人には関係のない話だが、そうではない一般市民にとっては、やはり「金の切れ目が縁の切れ目」は不動の真実である。

 去年の冬、300ミリの望遠レンズを買ったことがきっかけとなって、野鳥の撮影に夢中になった。デジタルカメラに300ミリのレンズをつけると、実質400ミリ相当の望遠になるので、自分でもまあ満足のいく野鳥の写真が撮れることに狂喜乱舞したのだった。ところが、「比較は不幸のもと」もまた真実で、最近では野鳥撮影が定年になった中高年のブームとなっている感があり、近くの舞岡公園(ここも野鳥撮影のメッカと化している)に出かけると、それこそ100万円もするようなレンズをつけたカメラを三脚に据えて構えているおじさんたちがゴロゴロしている。

 最初のうちは勝手にしやがれと思っていたが、ホームページなどで、そういう人たちの撮った写真を見ると、やっぱりその差は歴然である。ほんとに白けてしまう。写真というのは、やっぱり道具がものをいう世界。まして野鳥の写真ともなれば、レンズがすべてである。じゃあ、彼らに対抗して大枚はたくことができるかというと、このまま何年も野鳥の写真に自分がはまり続けることはないだろうと思うから、ええい、めんどくせい、やめてしまえ、という結論になる。まあ、一切やめるということではないが、ほどほどにということだ。

 今年で59歳となるはずで、定年も間近となった今、デジタル機器などを追いかけているバヤイではない。来るべき年金生活に備え、金のかからない楽しみにこそ邁進するべきだろう。ひとつ、読書。ひとつ、水彩画。ひとつ、書道。ひとつ、園芸。そしてできれば囲碁。これだけあれば死ぬまで楽しめるはずだ。


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