11 我が家の法事は大騒ぎ

2007.10


 前回祖父のことを書いたのだが、そのちょうど翌日、10月21日はその祖父の30回忌と祖母の13回忌の法事だった。法事とはいっても、普段は顔を合わせない親族が一堂に会するような法事とは違い、ぼくの母とぼくら夫婦、それにぼくの妹夫婦の5名だけのいたって気楽なものである。

 秋とはいえ底冷えのするお寺の本堂でお経をひとしきり聞いたあと、卒塔婆を10本ほどもってお墓に向かう。仕事で中国によく行く義弟が、この卒塔婆って、お寺の買値で500円ぐらいなもんですよ、これみんな中国から輸入しているんです、という。寺に払う金は1本につき3000円だから、ずいぶんもうかるよなあ、それに、こんな小さな法事でも卒塔婆を10本も使うわけだろ、いったい日本全国でどのくらいの卒塔婆が使われているんだろう、それで中国の森林を伐採しているんなら、仏教もエコロジカルにならなきゃダメだね。

 お墓の掃除も終えたところで義弟から渡されたお線香は一握りほどもある。これをみんなで分けるのか、と思ってお墓をみたら、もうすでにお線香は山盛りに供えられている。ぼくの家の墓の隣に、叔父の家の墓もあるので、いつもそちらにもお線香を供えるのだが、そちらも山盛りでもうもうと煙を吐いている。

 え? 全部火をつけちゃったの? と家内が叫んでいる。義弟は、家から持ってきた新しい線香の二つの束に全部火をつけてしまったのだ。今更消すわけにもいかない。二つ並んだお墓に、すべてのお線香を供えたら、もう煙は「たなびく」なんてものではなくて、まるで焚き火でもしているかのようにもくもくと立ち上る。あまりのことに、みんなでゲラゲラ笑っていたら、大口開けたぼくの口に変な虫が飛び込んで、思わずペッと吐き出した。ほんとに、真剣みに欠ける一族である。それにちっともエコロジカルでない。

 食事は夜、いつも行く駅裏の中華料理店に行った。さんざん食べて飲んで、母をタクシーで帰したあと、どういう成り行きだったか、カラオケに行った。ぼくはドロドロ演歌、妹もやはりドロドロ演歌。ドロドロの血は争えないということだろうか。それとも育ちがそうさせるのか。いっぽう家内は『天使の誘惑』を女学生みたいな声で歌う。義弟はといえば『乾杯』を熱唱しながら娘の結婚式はまだまだ先だというのにもう涙にむせんでいる。祖父も祖母もおまえら一体何やってんだとあの世であきれていたことだろう。


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