87 What a wonderful world 

2007.5


 地球温暖化が深刻な問題で、その原因が二酸化炭素の過度の排出によるものだということがほぼ確実になっていて、これからどうやって二酸化炭素の排出量を減らそうかという国際会議をやっているというニュースのその後に、トヨタがとうとうアメリカのGMを抜いて自動車の販売量が世界一になったというニュースが嬉しそうに流れる。温暖化で地球が危ないといっているときに、車が売れたといって喜んでいていいのかと誰でも思うだろうのに、ニュースでは、その二つがまるで無関係であるかのように伝えられる。

 大型連休ともなれば、決まって高速道路の大渋滞が報じられるが、あれこそ二酸化炭素の大放出だから、みんな家にじっとしていましょうなんて呼びかける知識人のひとりぐらいいたっていいと思うのだが、少なくともテレビにはそういう人は出てこない。

 倉本聡が、北海道の廃業したゴルフ場を元の森に戻そうとして何万本という木を植えようとしているということをテレビで見て、その志やよしと感銘も受けたが、それにしてもこんなに狭い日本の国土に、よくもまあこんなにたくさんのゴルフ場を作りやがったものである。そのことを思うと臍(ほぞ)を噛む思いだ。

 とはいえ、ぼくも今から20年近く前は、数年間ゴルフをやっていて、こんなに面白いスポーツがあったのかと思ったものである。広大なコースを前に、振り回したドライバーに当たった球が、それこそ尾を引くようにまっすぐにグリーンに向かって飛んでいったときなんかは、これがゴルフの醍醐味かあなんてえらく感激したものだ。

 だから臍を噛む思いにも複雑な味わいがある。けれども、やはりゴルフ場の罪は重いし、スキー場もまたしかりだ。「美しい国」などとほざく日本の政治家は、まず日本中のゴルフ場とスキー場をもとの森に戻してからそういうことをほざいてもらいたいものだ。まあ所詮無理な話だから「美しい国」などという言葉は使いようもないはずだが。

 日本ばかりではない。結局、どこも似たり寄ったりだ。「What a wonderful world(なんて素晴らしいこの世界)」とルイ・アームストロングは歌ったけれど、それはベトナム戦争下の世界への強烈な皮肉だったとどこかで読んだような気がする。しかし、こここまで来るとそんな悠長な歌も歌っていられない。「なんて醜悪なこの世界」という呪詛の言葉だけが、今の世界にはふさわしいのかもしれない。


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