75 原点は腹ばい

2007.2


 NHKの「趣味悠々」という番組で、「ようこそ! 鉄道模型の世界へ」というのがはじまった。すでに2回放送されているが、なかなかおもしろい。

 第1回と2回は、とにかく基本中の基本で、NゲージやHOゲージの模型を、フロアーに線路を敷いてとにかく走らせてみましょうというだけのことで、昔息子たちが小さかったころに、畳一畳ほどのレイアウトを制作し、さんざんNゲージを走らせたことのあるぼくみたいな者にとっては、分かりきったことがほとんどだったが、それでも線路を内周と外周に分けた場合、ポイントの切り替えで電流の流れはこう変わりますなんて具体的に説明されると、そうかそういうことになっていたのかと妙に感心するところもあったりして、けっこう勉強にもなる。

 しかし、何といっても面白いというか、笑ってしまうのは、出演しているオジサン二人である。一人は、三波豊和、51歳、もちろん三波春夫の息子である。(この三波春夫の「はるお」を漢字でどう書くのかふとわからなくなって「三波春雄」でグーグルで検索してみたら何と1570件ものヒットがあった。そのほとんどが、「三波春夫」について書いたものであり、つまりそれだけの間違いが流通しているということだ。おそろしい。そういえば前回のエッセイで、浅丘ルリ子を浅丘るり子と表記してしまい、熱心な読者から指摘を受けて、すぐに訂正したということもあるので、人ごとではないのだが。)もうひとりが、諸星昭弘という人で38歳(にしては、ずいぶんオジサンに見える人だが)、模型作家・イラストレーターだそうだ。「昔鉄道模型で遊んだ記憶がある」という程度のオジサンが、鉄道模型の専門家に教えてもらうというコンセプトである。

 第1回で、とにかくNゲージの線路をまるく敷いて、さて電車を走らせたところ、すぐに三波豊和は線路端に腹ばい、片側のほっぺたを床につけて走ってくる電車を見始めた。諸星さんも同じ格好をする。いい年したオジサンが二人、床にべったり腹ばいになって電車の模型を見るの図は、テレビではなかなか見られない光景だ。

 これがやっぱり基本ですねえといいながら、第2回でもふたりは腹ばいになって目を輝かせていた。4歳になる孫がプラレールを走らせるとき、必ず同じ姿勢になって電車を見るのだが、そういえば息子達もそうだったし、ぼくもそうだった。結局、鉄道模型の原点はここなのだなと改めて確認した次第である。


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