72 鳥を撮る楽しみ

2007.1


 やっぱりどうもぼくは根っからの鳥好きらしい。

 カメラというものを初めて手にしたのは、小学2、3年生ぐらいの時だと思う。親にねだったとき「おまえはカメラなんかで、何を撮るんだ。」と聞かれて「スズメを撮るんだ。」と答えて笑われたことを妙にはっきり覚えている。

 高校生になってからだと思うが、父にニコンFを借りた時も、タムロン製の安いレンズとはいえ200ミリのレンズも一緒に借りて、学校の近くの田んぼで懸命にスズメを撮った。スズメというのは身近な鳥だが、警戒心が人一倍強く、なかなか近寄って撮ることができない。田んぼの稲を食べているスズメを狙って、あぜ道をカメラを構えながら匍匐前進し、近くまで来るとさっと立ち上がってシャッターを切るのだが、スズメはまるで空に舞う紙切れのようにしか写っていなかった。

 一時は半分本気で生態写真家になろうと考えたこともあったが、結局その夢もいつしか消えた。けれども鳥の写真を見るたびに、いつかこういう写真が撮れたらいいなあとずっと思っていた。日本野鳥の会のカレンダーを毎年買っているが、その毎月の写真を捨てられなくて、切り取ってはファイルしていたら、いつの間にかB4のクリアファイルが5冊にもなった。けれどもそれらの写真は依然として、ぼくにとっては夢のまた夢でしかなかった。それというのも、鳥を撮るための望遠レンズがやたら高価だったからだ。何事も、お金こそが最大のネックである。

 しかしここへ来て、俄然事情が変わった。デジタルカメラのおかげで、200ミリの望遠レンズでも350ミリ相当の倍率となり、そこそこの鳥の写真が撮れることが分かってきたところへ、300ミリのズームレンズが今まででは考えられないほどの安い値段で手に入るようになった。今まで、数十万円から、へたをすれば100万円を越える値段だったものが、10万円を切る値段になったのだ。決して安い買い物ではないが、小学生以来の夢の実現のためなら、高いとはいえないだろう。そういうわけで、その300ミリレンズをとうとう手に入れたのだ。

 以来、狂ったように撮りまくっているが、50枚に1枚ぐらいは自分でも満足のいくものが撮れるようになった。植物の写真は今までに相当撮っているが、鳥の撮影は何といってもスリルと意外性があって面白い。それを、ホームページにアップしたり、プリントして「図鑑」を作ったりしていると、もう文句なく楽しい。


Home | Index | Back | Next