56 腹はどこへいったの?

2006.10


 あんまり痩せた痩せたとばかり言っているのも嫌みにとられるかもしれないが、近頃の最大のトピックなのだから仕方がない。

 この1年間で、約12キロ痩せたのだから、いろいろな面での影響が現れている。

 健康面でいうと、血糖値が今のところ正常値に戻った。もともとそれほど高い値ではなかったので、これはまあ当然のことなのかもしれない。それから血圧が下がった。血圧の方は遺伝もあって、もう10年以上にもわたって降圧剤のご厄介になっているのだが、その降圧効果が顕著に表れるようになり、以前は薬を飲んでも上の血圧はだいたい140前後はあったのが、最近では120台になった。以前では考えられない数値である。またここ数年総コレステロール値も高かったのだが、これも正常値になった。先日の検査結果をみた主治医の先生が「痩せるということはこんなにいいことなんだねえ。」と感嘆したくらいである。

 健康面では、よいことずくめだが、経済的にはなかなか大変である。去年買ったばかりのスーツがまるでぶかぶかになってしまった。ズボンのサイズを改めて見て驚いた。何と90もあるのだ。現在では82のズボンでもやや緩いのだから、これはもうはけたものではない。冬物のズボンはたいていは88で、これもほぼ全滅である。ジャケットも、今までは迷うことなくLサイズを買っていたので、これもダブダブ。先日買ったジャケットなどはSサイズでちょうどよかった。それからまた今ではぼくの定番アイテムになっているスタンドカラーのシャツも軒並み首周りが緩くなってしまって、みっともない有様になってしまった。これらの買い換えで、この秋は相当の出費を余儀なくされた。しかし以前のように、85がはけなくなって、泣く泣く88を買うときのような悲哀感がないだけしあわせである。

 それから階段を上がるのが格段に楽になった。「身が軽い」というのはこういうことかというくらい、飛ぶように階段を上下している。といっては言い過ぎだが、少なくとも階段を上ることがあまり苦にならない。

 全体的にスリムになったので、ジャケットなどの着こなしがちょっとオシャレな感じになったようだ。しかし、首筋とか、頬のあたりとかが、何だか寂しくなって、爺くさくなった。先日も生徒が「先生、痩せすぎだよ。何だか弱々しい。」と言っていた。腹も出ていたほうが確かに立派だ。腹はどこへ行ったの? と思わず口ずさむ日々である。


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