46 後で後悔するぞ

2006.7


 文化庁の「国語に関する世論調査」で、「怒り心頭に発する」を「怒り心頭に達する」と間違える人が73パーセントに及んでいるとか、「一番最後」「後で後悔する」などの重複した言い方が「気にならない」と答えた人が「気になる」と答えた人を上回ったとかいうことが、やかましくテレビで報道された。

 「怒り心頭」のほうは、そう言われればそうだなあとは思いつつ、質問されたら「達する」と答えなかったぞと胸をはれる自信はないし、まして「後で後悔する」が「気になった」ことなんてない。

 だいたい、重複したものの言い方はイケナイなんて誰が決めたのだ。同じことを繰り返して、強調することなど、言葉の使い方の基本ではないか。「そんなこと言って、後で後悔しても、おれは知らないぞ。」なんてセリフを、重複がイケナイからといって「そんなこと言って、後悔しても、おれは知らないぞ。」と直すことは必ずしも正しくない。セリフには、「調子」というものがあるからだ。「後で」が入っていた方が間がいいこともあれば、ない方がいいこともある。問題は、「重複」ということだけで片付けられないのだ。

 そういうこともあってかなくてか、今回の調査を受けて、こうした言葉の重複については今後認めていくかどうかを検討するそうである。余計なお世話だ。オマエタチが認めようと認めまいと、使うときは使うのだ。文化庁もよほど暇だとしかいいようがない。

 その同じテレビで、「つくばみらい市」の紹介をしていた。田んぼかなんかに、どうやって作ったのか知らないが、「つくばみらい」とできた文字をご丁寧にヘリコプターから写している。こっちのほうがよほど「気になる」。

 「つくばみらい市」という都市名が現実に存在することすらそのときまで知らなかった。調べてみれば、茨城県筑波郡伊奈町と谷和原村が合併してできた市だそうだ。こういう馬鹿げた地名の大破壊に対して、もちろん文化庁は何も言わないのだろう。しかし、「後で後悔する」と言ってもいいかどうかを議論するより、「つくばみらい市」などという市の名称が、いかに日本文化を破壊していくかについて真剣に議論するほうが先ではないのか。

 そういえばこの頃よく耳にする「伊豆の国市」ってどこ? と思ってしらべたら、何と、伊豆長岡町と韮山町と大仁町とが合併した市だった。これもヒドイ。ほんとうにこういうことをしていると、後で後悔するぞ。


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