30 ユズコショウ

2006.4


 あれはいったい何かなあと思いながら、何年も、あるいは何十年もたってしまうということがある。思い立ったが吉日で、そのとき調べればすぐに分かることなのに、調べようと思ったことだけを憶えていて、さて何を調べるんだったけ、といった具合に、調べようと思った対象を忘れてしまうこともある。そのうち、調べようとしたことも忘れ、そして何年も何十年もたつ。そういうことの中で、幸いにも、あれはいったい何なのかなあと再び思うことがあったりして、こんどはめでたく調べて、ああそうだったのかと初めて納得したりする。人生とは、まことに面白いものである。

 「はなまるマーケット」を見ていたら、天才天野の簡単クッキングとかで、キャイーンの天野が料理を教えていた。ドレッシングを作るのに、油に「ユズコショウ」を入れてどうのこうのとやっている。何だかえらく簡単でうまそうなので、家内に、これ作ってみたら? というと、「ユズコショウなんてどこで売ってるのかなあ。」と言うから、「どこかで見たよ。ヨーカードーにあるんじゃないの。」なんて適当なことを言った。

 後日、家内はやっぱりヨーカードーにはなかったけど、こんなものならあったと差し出したものをみたら、ユズの粉末だった。「じゃあ、それとコショウをまぜればいいや。」と言いながら、どうもテレビでみた「ユズコショウ」はワサビみたいなペースト状をしていたのが気になっていた。水を入れて混ぜればいいか、などと思いつつ、どうも「ユズコショウ」とはそもそも何ものなのかが気になった。もちろん今まで口にしたことはない。ただ名前を聞いたことがあるだけだ。

 いちおう調べてみようと、インターネットで検索した。すると、山ほどのヒット。いきなり楽天の通販サイトだ。商品説明を読んで、仰天した。何と、「ユズコショウ」には、「コショウ」は入っていないのである。ぼくも家内も、「ユズコショウ」というのは、「ユズ」と「コショウ」を混ぜたものだとばかり思っていた。ところが実際の「ユズコショウ」というものは、青唐辛子とユズの皮を混ぜて練ったものだったのだ。九州ではごく一般的な調味料で、ワサビのかわりに刺身につけて食べたりもするなんて書いてある。

 まさに、目から鱗。数日後、家内が京急デパートにあったといって、本物の「ユズコショウ」を買ってきた。さっそく刺身につけてみたら、旨かった。ちょっとくせになりそうである。


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