22 よくわからない

2006.2


 1本500円という破格に安いDVDを20本ほど買ったので、見るべきテレビドラマもない先日、その中から1本を見た。ハンフリー・ボガード主演の「三つ数えろ」。題名は知っていたが見たことはなかった。解説で水野晴郎は「ああ面白かったと言う鑑賞後の実感だ。」なんて書いてあったが、これがどうもさっぱりわからなくて困った。

 いろいろな人物が次々と登場するが、目まぐるしすぎて、その人間関係がつかめない。次々に出てくるガイジンの名前が覚えられない。悪いヤツらしいのが何人も出てくるのだが、どいつがどいつの仲間なのかもわからない。おまけに出てくる女優がみんなそろって美人で、その美人同士の顔の違いがよくわからない。そんな状況では、話の展開どころか、え、これは誰? え、これはさっきの書店の女店員じゃないの? なんて、いちいち頭の中で自問自答の連続で、とうとう「よくわからない」まま終わってしまった。

 いよいよワタシも焼きがまわったということかもしれないが、映画のほうにも責任の一端があるのではなかろうか。

 この頃の映画の特徴かもしれないが、登場人物がみんな同じような服を着ている。男はみんな背広を着ているので、役柄がはっきりしない。女はみな美人なので、誰が脇役なのかはっきりしない。これが、テレビのサスペンスだと、怪しい芸術家はたいていスタンドカラーのシャツを着ているし、ヤクザなら一目でそれとわかる俳優に、普通の人なら着ないスーツを着せるから、まかり間違ってもヤクザを堅気と取り違えることはない。(もっともそれを逆手にとって、実は刑事でしたというのもよくある手だ。)

 出てくる家の造りも、風景も何だか同じようで、どこがどこだか分からない。犯人のアジトなのか、探偵の家なのか、区別がつかない。これがサスペンスだと、ここは釧路空港ですとか、城ヶ崎海岸ですとか字幕で案内してくれる。

 そういうわけで、見終わって「ああわからなかった。」というのがぼくの「実感」であるが、やはりサスペンスの見過ぎだろうか。

 そういえば、先日も、あるサスペンスで、北原佐和子が出ると新聞のテレビ欄に出ていたので、ああそれなら彼女が犯人だよねと言って見ていたら、さんざん荻野目慶子に犯人らしさを振って、北原佐和子にはまるで影のない演技をさせておきながら、結局北原が犯人だった。こういうのも、「ああ面白かった。」とはならない。分かりやすすぎるのも問題である。


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