21 演歌ベスト10

2006.2


 いよいよこのエッセイもネタ切れ気味なので、少し趣向を変えて「○○ベスト10」というシリーズを始めたい。といっても、これから毎回というわけではない。ときどき挟んでみようというわけである。

 それでいきなり演歌かよ、という向きもあろうが、いちばんお手軽なのが長年親しんできた演歌なのだから仕方がない。といっても、いざ挙げようとすると、なかなか難しい面がある。第一「演歌」というカテゴリーが極めて曖昧である。何をもって演歌とするのかは大問題だ。森進一の「襟裳岬」は演歌なのか、フォークなのか。マヒナスターズの「泣かないで」は、ロマン歌謡とかムード歌謡といった類のものだろうし……、てなわけで、ちょっと考えただけで、分類の迷路にさまよい込んで行ってしまう気配が濃厚である。ここはひとつ、細かいことはさておいて、いかにもこれが演歌ですといったもので、ぼくが愛してやまない歌を挙げるとしよう。

 それでは始めます。

 第1位。北島三郎「風雪ながれ旅」。これは去年の紅白のトリをとった歌で、あまりに有名だが、曲(船村徹)といい、歌詞(星野哲郎)といい、そして歌唱の北島三郎といい、どこをとっても文句のつけようのない名曲。歌のモデルが津軽三味線の高橋竹山であることはよく知られているが、この歌は初め、村田英雄に歌わせる予定で書かれたが、村田に断られたので急遽北島に歌わせたというエピソードがあるらしい。村田英雄では重すぎて、鋭角な悲哀は表現できなかったろう。ちなみに、この歌はぼくのカラオケの十八番で、これを歌うときのぼくは得意の絶頂である。北島三郎の次にうまいと自負しているのだから始末が悪い。

 第2位。ちあきなおみ「矢切の渡し」。今はもう歌わなくなってしまったちあきなおみの絶唱。もともとB面(も懐かしい言葉となった)の歌として作られ、長い間無視されてきたことが不思議なくらいの名曲だ。梅沢富美男主演のテレビドラマで、この歌が使われたことがきっかけでブレイクしたはずだ。その後、細川たかしが歌って、レコード大賞までとってしまったので、今では細川たかしの歌だと思っている人も多いようだが、ちあきなおみの歌唱に比べたら児戯に等しい。この歌は、語るべきもので歌い上げてはだめなのだ。細川にはそれが分かっていない。作曲は船村徹、作詞は石本美由起。

 おやおや、まだ2曲なのに字数が尽きてしまった。この後はまたいつか。


Home | Index | Back | Next