8 晩秋の奈良

2005.11


 11月1日と2日は、ぼくの勤める学校は毎年休日である。3日が文化の日だから、うまくするとここは秋の三連休となる。カトリックでは、11月1日は「諸聖人の祝日」2日は「死者の日」ということになっていて、その「諸聖人の祝日」の一日前の10月31日は「ハロウィン」というお祭りである。「ハロウィン」は、最近ではカボチャのお化けみたいなモノがスーパーなどに飾られているが、クリスマスなどと違い、一向に盛り上がらない。

 そういうわけで、この秋の三連休は旅行には絶好のチャンスなのだが、生来のものぐさで、今まで特に出かけるということもなく過ごしてきた。しかし、今年は夫婦そろってどうにも退屈なので、どこかに行こうということになり、行く先をあれこれ考えた末、結局奈良へでも行ってみようかということになった。今までだと、行く先をあれこれ考えているうちにめんどくさくなってしまい、やめとこうとなるのだったが、これから先の「老後」を考えると、出不精の癖は直しておくことも必要と思われた。

 そういえばこの時期、「正倉院展」があるんだったと気が付いた。毎年必ずこの「正倉院展」を見に奈良へ行く人も知っている。それならちょっと覗いてみよう。混雑していてどうしようもなければ行かなきゃいい、という程度で、とにかく出かけたのだった。

 絶好の天気だった。「正倉院展」は、平日ということもあって、どうしようもないほどの混雑ではなく、頑張れば一番前で御物を眺めることもできた。古文書の類はめんどくさいから飛ばしてしまったが、豪華な碁盤とか、螺鈿の鏡とかは十分に見応えがあった。毎年来る人の気持ちも少しは分かった気がした。その日は、東大寺周辺と白豪寺と新薬師寺周辺を歩き終了。

 2日は、飛鳥を散策した。甘橿の丘にまず登ったが、ここは25年ぶりぐらいだったろうか。土地の老人が旅行者に「ここはいつきてもよろしいわ。」と語っていた。こうして毎日のようにこの丘にのぼって、飛鳥の地を眺めているのだろう。何と贅沢な日々なのだろうか。こういう人々がいる限り、飛鳥の土地は守られていくだろうと思いつつ、しかし、今の小中学生がこのような老人になっていく保障がどこにあるだろうかと心許ない気もした。

 至る所に柿が美しくみのる飛鳥の風景は、やはり何ものにも代え難いものと思えた。

 3日は、宇治の平等院あたりをぶらぶらして帰ってきた。今度の旅行も奈良かもしれない。

こちらにちょっとだけ写真があります。ごらんください。

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