Cinemaなおしゃれ・9

茶系色がひきたてる女性らしさ

ジュリエット・ビノシュ

Juliette-Binoche

 

 ルイ・マル監督は恋の求道者。彼の映画で恋をするのは、あなたの隣にいるような、あたりまえの男女です。

 『ダメージ』(92年)はロンドンが舞台。有能な代議士・スティーブン(ジェレミー・アイアンズ)が、息子の婚約者・アンナ(ジュリエット・ビノシュ)と恋に落ちます。

 ジュリエットは骨董商づとめ。黒い髪をショートカットにし、化粧気のないナチュラル・メイク。黒っぽい、衿のつまった服。まるで清潔な男子学生みたい。

 でも、その横顔。秀でた額、筋の通った鼻、高い頬骨。短い髪が横顔の輪郭をくっきりと際立たせて、彫刻を思わせます。

 映画の中でジュリエットが着る街着や仕事着は、ほとんどがベーシックなスーツ。スカートはタイト・ミニ。小柄なジュリエットには、ミニスカートがよく似合います。色は黒、茶色、紺色。地味なスタイルですが、上品で、一目で、質の良さがわかります。

 週末はパリへ小旅行。そこではゆったりとした、フレアーラインのコート・ドレスを着ています。    

 早朝、ジュリエットは、スティーブンに呼ばれて教会へ。素肌に茶色いコート・ドレス。ひるがえるコートの裾から、ベージュの裏地がちらと見えます。それを割って急ぐ素足。茶色いパンプス。かたい印象のジュリエットですが、この時は、柔らかい糸瓜衿のあたりから、女らしさが匂うようでした。

 


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