Cinemaなおしゃれ・8

大胆な着こなしで魅力の使い分けを

グレース・ケリー

Grace-Kerry

 サスペンス映画の巨匠、アルフレッド・ヒッチコック監督は、「客間では淑女、寝室では炎」という、ちょっと見にはクールなブロンドの美女がお好き。この理想をかなえたのは、グレース・ケリーでした。

 1954年の『裏窓』。脚を骨折した写真家のジェフ(ジェームス・スチュアート)が、車椅子で養生中に裏のアパートの殺人事件に気がつきます。動けない彼の代わりに、事件に乗り出す恋人のリザがグレース。上流階級出身の、売れっ子ファッションモデルという役柄です。

 仕事帰り。グレースは衿が高くて上品な若草色のスーツで、ジェフのアパートを訪れます。夜会巻きにセットしたブロンドの髪、ベール付きの帽子、白い手袋。ところが上着を脱いだ途端、むき出しの背中と腕が飛び出します。氷の女王の白い肌。

 衣装担当のイデス・ヘッドは、アカデミー衣装賞を何と8回も受賞。映画界最高のこのデザイナーは、グレースに首の後で止めただけの、ホールダー・ブラウスを着せたのです。 

 グレースの荷物は、小さな黒皮のオーバーナイトケース。ぽんと開けると、桃色のシルクサテンのお泊り道具が一式。びっくりしているジェフの前で、ネグリジェに着がえて髪をほどき「お気に召して?」。

 魅力の使い分けができてこそ大人の女性。グレースは、ことにそれが鮮やかでした。

 


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