Cinemaなおしゃれ・10

ムーディなプレタポルテだけでも

ジャンヌ・モロー

Jeanne-Moreau

 『死刑台のエレベーター』(57)は、ルイ・マルが25歳の時に監督しました。大人の香あふれる、紫の宝石のようなフランス映画です。

 退役軍人(モーリス・ロネ)と、有閑マダム(ジャンヌ・モロー)の不倫の恋は、マダムの夫殺しへと向かいます。夫を殺した恋人を、カフェで待っているジャンヌ。しかし恋人は、電気を消されたエレベーターに閉じこめられ、外へ出られません。事情を知らぬジャンヌは、彼を探して、夜の町を歩き続けます。

 この時のジャンヌは、ワンピースに上着を重ねたスーツ。無駄のない、シックなデザインです。ポイントは、胸元と襟の光る素材。ワンピースの丈は膝下で、スカートはタイト。ハイヒールを履いています。

 このスタイルが動きにくいことは、女性ならば知っています。なのに一晩中、威厳をそこなわずに歩いている。きっと服も靴もオーダーメイドで、身に合っているのでしょう。

 丁寧にセットされたブロンドの髪。翌日は、夜会巻き。両日とも額を見せ、きりりとしています。身だしなみは、暮らしをうつすとか。ジャンヌの衣装は3着で、どれも高級品ばかり。だれが見ても、有閑マダムそのもの。

 当時、ジャンヌ・モローは30代のなかば。肌にしっとり脂肪がのり、貫禄たっぷり。女ざかりの美しさでした。

 

 


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