Cinemaなおしゃれ・12

おしゃれをキメるのは心の豊かさ

ローレン・バコール

Lauren-Bacall

 ヘレン・ローズはMGM専属の映画衣裳デザイナー。ビンセント・ミネリ監督の『バラの肌着』(57年)は、彼女の生き方がテーマです。

 バカンスで知り合ったデザイナーと新聞記者が結婚。働くカップルにつきものの騒動はあっても、やっぱりふたりは幸せ。という、からりとしたコメディー。デザイナーのマリラにローレン・バコール。新聞記者のマイクにグレゴリー・ペック。

 濃紺のタイト・スーツ。共布の帽子。ミンクのストール。毛皮と同色の長手袋。黒皮のケリー・バッグとハイヒール。ヘアスタイルは耳を出したゆるやかな内巻。大粒の真珠のイヤリングと、白いブローチ。

 また、七分袖でふんわりしたAラインの赤いコート(七分袖ってところがぜいたく)。衿はリボンでむすんでいます。インナーは、アンサンブルの半袖ワンピース。ワンピースの衿はボートネック。背中はV型に20センチほどくれています。これにも黒い手袋と帽子。

 ローレンは全体的に鋭角的だから、骨っぽい印象になりかねない。そこをあえて無地・スリム・シャープでせまったのは、彼女がそれに負けないユーモアと余裕を身につけていたから。豊かな人間性があるからこそ、個性を逆手にとったおしゃれがキマるのです。

 心が、経験が、年齢が醸し出す豊かさ。おしゃれには、この豊かさが必要です。もちろん、映画が心を豊かにしてくれるのはいうまでもありません。

 

 


イラストの画像をクリックすると、より大きな画像でお楽しみいただけます。

ただし、営利目的での無断転載・複製を禁じます。