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#04 オフビート・デイズ | くりこま 悠 |
#04:オフビート・デイズ エピソード1 「え?神田君が休み?」 「ああ。今朝メールが来て、どうも夏風邪くさいって…」 情報研究部副部長「立石 透」は、神田が休みであることを、部長の「城之崎 涼子」へと 伝えた。その後では、やけに凹んでいる「高坂 真樹」の姿が見える。 「高坂。いくら訳の分からない問題が出てきたからって、そんなに落ち込むことはないと 思うぞ。大体、お前は専門(学校)へ行くんだろ?別に赤点さえ取らなければ 大丈夫だとは思うし…」 「違うの。そうじゃなくてね…」 透に慰められた真樹は、問題文を透に見せた。 「ここで符合間違えちゃって、ここさえ合っていれば満点だったっぽいのに…」 問題用紙いっぱいにびっしりと書き尽くされた計算式を見て、透は唖然とした。 「高坂。お前、それだけの頭を持っているのに、専門へ行くの?」 「私、本番に弱いタイプだから…」 『じゃあ定期試験は本番じゃないんですか?』という問いかけが、透の頭を巡る。 透は恐らく追試は免れないであろうテスト問題を、小さく小さく折り畳んだ。 「ああ〜。私ってバカだ〜…」 高坂は1人で悩み続けている。 「真樹ちゃんがバカだったら、私は何なの?」 涼子もまた、追試を免れそうにない問題用紙を、教科書の間に挟む。 「俺に聞くな」 涼子の問に、透は冷たく一言言い放つ。 渡り廊下から、真っ青な空が見渡せた。入道雲が顔を見せ始め、暑い季節がやってくる。 「“まっさら”な季節だね」 「まっさら?ああ…」 透は某音楽ゲームの収録曲を思い出し、頷いた。 「そっかー。どうも見ないと思ったら、休みだったのかー」 涼子はそう呟き、更に一言。 「お見舞い。何を持ってったら喜ぶかな?」 「俺さ。夏休みって、ガキの頃からパラダイスだと思ってたんだけどね。 現実は厳しいって。うんうん。ほら、俺部活があるし…」 横浜市南区某所。「神田 隆介」自宅。 家庭の事情により一人暮らしを余儀なくされている隆介が病気で寝込んだ際には、 電話は外界との接触を取るための唯一の手段となる。 バイト先に「今日は休む」という電話を掛けて、同僚と話し込むこと20分。 「というわけだから、今日俺休むわ。店長にヨロシク言っておいて。 じゃーな」 隆介は電話を切って、ふと時計を見上げた。 12時半。昼飯時である。 だからといって、動ける体でもなく… 「カップラーメンじゃ、かえって体壊しそうな勢いだよな…」 そこら辺に転がっているカップ麺を拾い上げ、じっと見つめる。 (そういえば、どっかのサイトで、お湯以外でカップラーメンを作って食うとかいう、 馬鹿な企画をしてたっけ…) 「んなことしたら、死ぬよな。この状況下じゃ…」 「それじゃ、私が“おじや”作ってあげよっか?」 「ああ。助かるよ… …!?」 涼子の問いかけに隆介は応え、唖然とした。 声を失った隆介の視線には、制服の上にエプロンを付けた情報研究部部長の姿がある。 「…き、城之崎。どうしたんだ?」 ジャーの中にある固くなった白米を探っている涼子を見ながら、隆介はようやく 口を開いた。 「ん?お見舞いだけど、それが何か?」 けろっとした表情で、涼子は鍋に米を入れ始めた。 「だからって一人暮らしの男子高生の家に勝手に押し入って… …もしかして俺、貞操の危機?」 べこっという、鈍い音が部屋に響いた。 「お生憎様。私が出来るのは、せいぜいラブなコメの紛い物ぐらい。 そこの棚に入っているようなゲームのようなことは、ちょっと無理かな…」 涼子の視線の先には、様々なパソコン用ソフトウェアの外箱が見え隠れしている 棚がある。一見するとOSとかワープロソフトとか、真面目なソフトの箱で溢れかえって いる様だが、よくみると Kano某や こみっく某 等の、アレなソフトなんかも、ホントに さり気なく入っている。 一応、彼の名誉のために言っておくが、彼は既に18歳なので問題はない。念のため。 情報研究部の部長たるもの、観察眼に優れていなければならない…らしい。 「お前、一体何処までこの部屋の事を知り尽くしてるんだ?」 「そうだね。あのポスターの裏に紙製の隠しポケットがこさえてあって、 その中にヘソクリを隠してあるぐらいしか…」 涼子のさり気ない返事を聞いて、隆介の背筋がゾッとした。 「…さ、寒気が…」 「ほらほら。布団に入って、ゆっくり寝なさい」 涼子はそう言って、隆介に布団を掛ける。 「いや、そういう意味じゃなくて…」 「ちゃんと寝ないと駄目。原稿が落ちちゃったらどうするつもりなの?」 有無を言わさず、隆介を寝かせるつもりらしい。 「すまないねぇ。こんな時に、アイツが居てくれたら…」 「お父、それは言わない約束でしょ?…って、アイツって誰?」 よく分からない世界である。 「さ、おじやおじや…」 涼子は思い出したかのように呟くと、台所へと駆けていった。 「持つべき物は友…だね」 隆介はよく分からないことを呟いて、目頭を押さえた。 十分後、隆介にお椀が手渡された。 「…何コレ?」 涼子はキョトンとした表情で、冷蔵庫の中に入っている物を総動員して作ったような物を 指さしながら、隆介の問いに答える。 「O JIYA」 ヒンドゥー語で「I Love You..」という意味である(本編とは何の関係もないが)。 (…とりあえず、この福神漬けとキムチが同居しちゃってるのはマズイよなぁ。 あらゆる意味で…) 隆介はスプーンをお粥のすぐ上まで持ってくると、手を震わせながら考え事を始めた。 (考えても見ろ。こんな同級生の女の子が家に来て、わざわざ料理を作ってくれるなんて エロゲー…もといギャルゲーでしか有り得ないようなシチュエーションだぞ。 彼女の好意を無にして良いのか? …しかし、これを食うと、絶対体調が悪化するに決まってる。 畜生、俺はどうすれば良いんだ!?) 時々、表面が泡立つ。一体、何を入れたんだろう… 「神田君、大丈夫?」 涼子はそう言って、隆介の手からスプーンをひったくった。 「ほら。私が食べさせてあげるわよ」 「ま、待て、城之崎…」 ちょうどニンニクとラッキョウが、まるで双子のように同居しているおじやを目の前に持ってこられた隆介は、少しずつ後ずさりを始めた。 「…食べないと、体に良くないよ?」 (食べた方が体に良くないと思います) 隆介は声にならない悲鳴を上げた。 「悪かった。これからは原稿を〆切前に出す!原稿終わるまで遊びに行かない!! だから許してくれ…」 桃屋の花ラッキョウとニンニクが混ざったような臭いが、隆介の鼻先で炸裂する。 「何言ってるの?ほら、食べなきゃ元気にならないぞ♪」 翌日。 「あれ?神田、もういいのか?」 「ああ。いいんだ…」 隆介はゲッソリとやつれた顔で、机に突っ伏していた。 「お前、顔色良くないぞ…」 透が心配そうに声を掛けるが、隆介は何かに取り憑かれたようにブツブツとうわごとを 繰り返している。 「どうかしたの?」 透は近くを通りかかった涼子に、事情を聞いてみた。 「いや、別に。昨日は神田君の家に行って、お粥を作ってあげただけだよ。ねーっ」 「あ、そう。分かった」 透は瞬時に理解した。そして、隆介に心から同情した。 彼はなおも「あんなバズーカマズイ物を食わされるよりは、死んだ方がマシだ」と 呟いている。 透は中空を見つめて、ポツリと一言。 「そういえば城之崎って、家庭科が5段階で2だったんだよね…」 ちなみに彼が完全復活したのは、夏休みに入ってからだった。 UNHAPPY GIRL #04:オフビート・デイズ エピソード2 夏休みである。 情研部では、この時期になると文化祭のパンフレットを作るという、地獄のような作業が 待っている。 「というわけで、色々と大変なわけよ…」 涼子が溜息を吐きながら、色々と愚痴る。 「それは分かるんだけど、どうしてココに居るのかなぁ?」 イラスト部部長「諸町 冴子」は、顔を引きつらせながらそんなことを尋ねる。 弘暗寺駅改札前。 ここでたむろしているのは、これから合宿へ向かおうとしているイラスト部と 情研部の面々である。 「なぁに、気にしないで。ただ単に一緒に合宿行って、一緒に銭湯行って、一緒に御飯 食べて、一緒に花火でもしようっていうだけだから」 「よけい悪い!!」 涼子が屈託のない笑顔でさらりと言うと、冴子は思わず涼子の胸ぐらを掴んだ。 高校では普段通りの光景だが、さすがに公共の場では、周りからの視線が痛い。 「ほらほら。冴子、エキサイトしすぎ」 涼子が笑顔で冴子をなだめると、冴子は涼子を離して溜息を吐いた。 色々あったが中略しよう。 午後8時30分を回った頃あたりであろうか。 情研部の面々を襲おうとしている、不穏な影があった。 業界用語:太郎ちゃん 通称:油虫 正式名称:MS-06S〔CA〕 シャア専用チャバネゴキブリII改という奴である。 最初の被害者は、情研部「瀬名 真弓」。電波系委員長である。 「…はぁ。こういうのもいいですねぇ」 「まぁね。こうしてリフレッシュでもしてないと、やってられないからねぇ…」 風鈴がチリンと鳴った。 正しい夏の過ごし方である。 「あ、あのー、先輩。トイレはどちらでしょう?」 真弓は透に尋ねた。 「武山―、トイレって何処?」 「うるせー!!廊下の突き当たりを左だ!!」 イラスト部雑用係こと、「武山 宗一」の目が血走っている。 彼の机の上には、描きかけのイラスト1枚と、数冊の夏休みの課題が置かれていた。 「武山君、休んでばかりいるんだもん…」 「ほら。男の子は体を丈夫にしないとダメだぞ☆」 涼子と冴子が、武山の机に積まれている課題を見て、口々に言う。 「あのさぁ。その十中八九がアンタらの責任だって分かってる?」 前回も前々回も前々々回も、彼が負傷した現場には冴子がいた。 第1話で首を絞められ、第2話で冴子達の攻撃と緞帳のダブルパンチ。第3話では 涼子と冴子に殴られ、蹴られ… 不幸な星に生まれてきた男、武山 宗一。 彼に安息の日は訪れるのだろうか。いや、訪れない(反語)。 でだ。話が大幅に反れたが、真弓はトイレから出ると、ふと不思議な感覚が彼女を 支配した。何しろ、非常に不気味な気配のする建物だ。毎年必ず、霊感があると自称する何人かが「ここはヤバイ」と言い出す、途轍もなく奇妙な空間。 確実に気配を感じるのだが、それが何であるか、真弓には分からなかった。 「…だ、誰か…居るの?」 静寂が支配する空間で、悪魔は突然、真弓の肩に舞い降りた。 次の瞬間、真弓は引きつった顔で、大声を上げた。 「どうかしたのか?」 情研部「竹内 雄太」が、廊下へと飛び出した。 「うわ〜ん。でたー。れんぽーのくろいあくまー!!」 「は?」 「だーかーらー、ご、ご…」 「ご…。御飯ですよ」 「ちーがーうー」 「ゴンタ君の1日」 「だーかーらー」 「ゴキブリだろ?」 見かねた「岡村 誠二」が、話に割って入ってきた。 「う、うん」 「だろうな。肩に引っ付いてるよ」 「…!?」 その叫び声は、半径500m以内の家屋を振動させるほどだったらしい。 「うう。ひっくひっく…」 「大丈夫?」 ゴキブリに引っ付かれた事がよっぽどショックだったらしい。 広間で泣き出した真弓を、真樹が宥める。 「そうそう。ここってよくゴキブリが出るのよね…」 「最初に言えよ」 冴子の一言に、透はツッコミを入れるが、 「勝手に付いてきたのは、アンタ達でしょ」 という正論で返されてしまった。 ちなみにゴキブリは、殺虫剤と100円ライターのコンボ技「ゴキバースト」によって、 庭で燃え尽きた。 ここまで来ると哀れに思えるが、情研部の前に現れてしまったこと自体が間違い なんだろう。うん。 そんなこんなで数十分後、今度は電気が切れるという事態が発生した。 その場にいた全員が驚いたのは、言うまでもない。 「うわっ!電気切れた!?」 「嘘、停電?」 「廊下の灯りは点いてるから、蛍光灯が切れたんだろ?」 「ちょ、ちょっと待って。暗くて、全然分からない」 「うわ!そこに転がってるの誰だよ」 「きゃっ。ちょっと、変なところ触らないでよ」 以上、会話の一例である。 暫くすると、冴子はライターを点け、ロウソクに火を移した。 先程のゴキバーストといい、何故ライターを持っているかは、この際触れてはなるまい。 「コレを持っててくれない?私、ちょっと蛍光灯を取ってくる」 冴子は慣れた感じで、裏の倉庫へと走っていった。 「もしかして、この合宿で蛍光灯が切れるのって…」 「ああ。いつもの事だけど」 「…何故?」 「知らない」 暫くして、冴子は蛍光灯を担いで戻ってきた。 「真樹ちゃん。ちょっと蛍光灯の近くまで、ロウソクを持ってきてくれない?」 「うん」 真樹は冴子に言われるままに、ロウソクを持って蛍光灯の下まで来た。 …と、その時。 「へっくしゅん」 真樹のくしゃみによって、ロウソクから火が消えた。 暗くて見えないが、皆からの視線が痛い。 「あ、ゴメン。すぐに点けるね」 真樹は、直ぐにロウソクに火を点けた。 順調に付け替えは終わり、誰もが安息の時を迎えようとした。 「さて、電源入れますか!」 宗一はそう言って、部屋の電気をONにした。 「!?」 気が付けば、壁を這う無数のゴキブリ。 全員がパニックになったのは言うまでもない(当然、真樹のせいである)。 真夏の合宿は、悪夢である。 それは運動部だけでなく、文化部にも当てはまることなのである。 UNHAPPY GIRL #04:オフビート・デイズ エピソード3 注文の品は もう来ない もう もう もう来ない 愛しい彼女も もう来ない もう もう 2度と来ない …sex MACHINEGUNS「ファミレスボンバー」より。 「今日、正午辺りから一時的に停電にするから」 ある日のこと、部活に来たら、顧問にそう言われた。 「何でですか?」 その涼子の言葉の奥には、もうパンフレット作りは終わったから良いけど、こんな炎天下の中、死ぬような思いで学校まで来たのに、何ですか?私達の苦労は水の泡って訳ですか?ハッ。そんな私達の姿を見て笑ってるなんて、おめでてーな。 よーし。お姉ちゃん、先生のツケで近所のファミレスでステーキ頼んじゃうぞーという、 ニュアンスが、隠し味の如く含まれていた。 「ああ。ちょっと電気系統のチェックをな…」 顧問は冷ややかに、目を合わせないで言った。 停電となってしまうと、強制的に部活は出来なくなってしまう。 DTMもCGも雑誌も団扇作りも、全てパソコンが絡むからである。 「どうしよっか?」 「1、帰る。2、古本屋によりつつ帰る。3、伊勢佐木に寄りつつ帰る。4、上大岡に…」 真樹の問いに、隆介が色々と案を出し始めた。 「5、カラオケに行ってみる。6、隆介の部屋に押し掛けてみる。7、城之崎の家に…」 負けじと、透も幾つか案を出してみる。 「よし。皆、ファミレス行くよ!」 涼子は、見えない脚立を担ぐそぶりをしつつ、そう言った。 「城之崎、ドラマの影響受けすぎ…」 隆介は、さりげなくそう呟いた。 「大体、俺、弁当持って来ちゃったし…」 「私、金欠だし…」 透と真樹が、そんな事を訴えだした。 「気に入らないねぇ」 「何がだよ!!」 全員で一斉にツッコミを入れる。 「アンタ達、会社のために社員が」 「は〜い。そろそろヤバイのでストップストップ」 隆介は的確なタイミングで、涼子の口を塞いだ。 「それじゃあ、私はキノコスパゲティ」 真樹はメニューと財布を慎重に見比べながら、そう言った。 「ってか、安ッ!380円かよ!!」 「だから、私、金欠だってば…」 「そーか。それじゃ・・・俺はこの地中海風リゾットでも頼むかな」 透は、自分の腹の容量を計算し、そう答える。 「それじゃ、私は… あ。この石焼きビビンバ美味しそう・・・」 「・・・ドリンクバーでいいや」 残る2人も、何とか注文は決まったようである。 透は手元のスイッチを押して、店員を呼んだ。 簡単に注文内容を告げる。 「ご注文を繰り返します。キノコスパゲティをお1つ。地中海風リゾットがお1つ。 石焼ビビンバがお1つ。ドリンクバーが4つ。以上でよろしいでしょうか?」 「はい」 店員は、「ドリンクバーはセルフサービスになっています」云々告げると、「ごゆっくりどうぞ」とお辞儀をして、その場を去った。 「さてと。それじゃ、何か取ってくるか」 透はそう言って、席を立つ。 「あ、私オレンジジュースでお願い」 「オッケー」 「んじゃ俺も取ってくるけど、城之崎はどうする?」 「えーと、ウーロン茶」 「あいよ」 透と隆介は席を立つと、ドリンクバーのコーナーへと歩き出していった。 そんな2人を見送りながら、涼子が唐突に話を切り出す。 「そーいえば、透と付き合い始めてから、もうすぐ半年ぐらいじゃない?」 「あー。そうだね」 「どう?何か進展ある?」 「別に。まだまだ友達の発展形だしねぇ」 「あー、もー、甘すぎる!!」 涼子はテーブルを叩いた。 「でも、私たちは、これで幸せだし・・・ねぇ」 「全くだ」 いつの間にか帰ってきていた透が、オレンジジュースとアイスココアを手に、そう告げた。「大体、そーゆー自分はどうなんだよ。彼氏は出来たのか?」 透が、だいぶ痛いところを突いてくる。 「い、いいでしょ。私のことは!」 今日の涼子は、やけにヒステリックである。 「神田って朴念仁だからな。きちんと言わないと、全然相手にしてもらえな・・・」 「ちょ、ちょっと。神田君は関係な・・・」 とその時、ふと涼子の前を、隆介の右手が横切った。 「ん。ウーロン茶」 「あ、ありがと」 流石は神田“朴念仁”隆介。今のやり取りを、全く気にしていない。 彼は一生、朴念仁として平和に生き抜きましたってな勢いですらある。 それでも、誰も困らないであろう。せいぜい困るのは、涼子ぐらいなものだ。 「だから違うってば!!」 「誰に向かって喋ってるんだ?城之崎」 「いや、気にしないで」 涼子はそう言って、ウーロン茶を飲み始めた。 「キノコスパゲッティです」 「地中海風リゾットです」 「石焼ビビンバです」 立て続けに、注文の品がやってきた。 「それじゃ、戴こうかな」 涼子がスプーンを手に取り、中身をかき回し始める。 同様に、真樹はフォークを回し始め、透もリゾットにスプーンをつけた。 設問:次のうち、1人だけ違う反応をした人間がいます。次のA〜Cの中から答えなさい。 ただし、真樹のパスタは380円。透のリゾットは480円。涼子のビビンバは600円と する。 A:高坂 真樹 B:立石 透 C:城之崎 涼子 答:A 「・・・」 「・・・」 「あ、おいしい」 真樹はそう呟いた。 「あのさ。何とも微妙な味なんだけど。このリゾット・・・」 「そんなこと言ったら、こっちのビビンバも・・・」 「なんだかんだ言って、結局高坂の一人勝ちか」 遠巻きの隆介が呟く。 「っていうか、何で真樹だけ・・・」 「んー。やっぱり、道で空き缶を拾ったのが利いたのかな」 なるほど。今日は珍しくラックのパラメーターが上昇していたのである。 奇跡的に安いメニューの中から、美味いものを見出したのであろう。 それに対し、透と涼子は・・・ 「とりあえず、神田だけが無傷なのが気に入らん」 「そーだそーだ」 「って、俺かよ!?」 「まぁ何だ。飲め!!」 いつの間に取りに行っていたのか、隆介のコップに、妙に泡が浮かんでいるアイスココアが注がれていた。 「俺特製、ココアソーダしぐりん風味だ」 「意味分かんねーよ!!」 隆介は絶叫した。 ふられちまった ファミレスボンバー ファミレスボンバー 怒りバクハツ ファミレスボンバー ファミレスボンバー 爆弾しかけ ファミレスボンバー ファミレスボンバー 皆殺しだぜ ファミレスボンバー ボンバー …sex MACHINEGUNS「ファミレスボンバー」より。 ようするに、時雨氏と嘘ぴょーん氏にはゴメンナサイと。 ※ この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件・ファミレスとは一切関係ありません(笑) UNHAPPY GIRL #04:オフビート・デイズ エピソード3+α 「今日、正午辺りから一時的に停電にするから」 ある日のこと、部活に来たら、顧問にそう言われた。 「何でですか?」 その冴子の言葉の奥には、別に電気なんて必要ないから良いけど、こんな炎天下の中、死ぬような思いで学校まで来たのに、何ですか?私達の苦労は水の泡って訳ですか?ハッ。そんな私達の姿を見て笑ってるなんて、おめでてーな。 よーし。お姉ちゃん、先生のツケで近所のファミレスでハンバーグ頼んじゃうぞーという、 ニュアンスが、隠し味の如く含まれていた。 「ああ。ちょっと電気系統のチェックをな…」 顧問は冷ややかに、目を合わせないで言った。 停電となった所で、別にイラスト部は困らない。 せいぜい、CDラジカセが使えなくて終わるぐらいだろう。 しかし、こーゆー時にはサボりたいというのは、人として当然であろう。 「どうしよっか?」 「1、帰る。2、古本屋によりつつ帰る。3、伊勢佐木に寄りつつ帰る。4、上大岡に…」 冴子の問いに、宗一が色々と案を出し始めた。 「よし。皆、ファミレス行こう!」 「・・・なんて、きっと情研部の連中も思ってるんじゃない?」 宗一はそう言って、イラストボードに筆を走らせる。 「そういうことなら、牛丼でも食いにいかないか?」 「!?」 ふと後ろを振り向くと、如何にも「漢ならネギダクだろ」と言いたげな、パソ研部の面々が 突っ立っていた。 「あら。パソ研部ってまだ居たの?」 「言うなぁ!!」 パソ研部金井が、そう言って食って掛かってきた。 「どうせ俺達3人、揃いも揃って作者に忘れられていたさ!!」 と金井が。 「私だって、まだ目立ち足りない!!」 と松下が。 「てゆうか、俺たちのこと、この数話で完全に忘れられてるんだろうな」 と中西が言った。 「正直、今回はオムニバスだからっていうから、滅茶苦茶期待してたのに〜」 「そーだそーだ。俺たちも出番を・・・」 「ふざけるなぁ!!」 突然、部屋の入り口のほうから、そんな声が聞こえてきた。 声の主は、生徒会長「沢口 武」と、副会長「桜井 千鶴」である。 「わいらなんてなぁ。第1話目にも2話目にも出ていて、あれだけ悪役に徹するという 伏線まで張って待っているのに、一向に話が進まないんやで!!」 「そうですよ。いつになったら、私と生徒会長の(中略)が始まるんですか!?」 それぞれ、滅茶苦茶な理論を展開している。 「こうなったら、我々も断固として戦うしかないだろう!!」 何と。 「レギュラー化を賭けて、刺し違えても登場シーンを増やしてもらう以外に、我々に 生き残る道はない!!」 何でやねん。 「・・・頭痛い。もう帰る」 「俺も」 冴子と宗一は、そう言って教室から出て行った。 要するに、ネタがなくてゴメンナサイと。 |
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□ ■□後書き□■□ ・・・というわけで、一挙4話掲載です(マテ 今回は、俺が悪かったの一言に尽きます。 出す予定のキャラが、結局出せなかったのに始まり、実話を一部改変して話を作る (ファミレスの所在地は、全く別ですが)、「O JIYA」なんて知ってる人じゃないと分からないヒンドゥー語を使う、一話4ページのつもりだったのに、挿絵1ページ後書き1ページを 詰め込んで、4話めを無理矢理2ページに短縮する等等・・・ ・・・あらゆる意味でゴメンナサイよと。 作者的都合で、次回は書けるかどうか分かりません。 これ、9月ですよ。 次号は11月頃に出るんでしょうが、その頃私は、受験のために走り回っている可能性があるんです。 予定としては、10月15日から出願、11月10日に自己推薦、14日に発表。 十中八九、自己推薦は落ちると思われるので、その後はひたすら勉強詰めの毎日。 うんうん、受験生頑張れ!! 話が複線ドリフトを失敗したかのような勢いで脱線しましたが、気にしない気にしない。 今気にしないといけないのは、明日の漢字コンクールと、英語の実力テストの方です。 私が忙しい理由っていうのが他にもありまして、 1:文化祭向けCGアニメーションが、完成率10%未満である。 2:ソフトアイ・コンというイベントに何か出さないと、メディ部における、私の存在価値自体 が疑われてしまう。 3:冬には冬で、クリスマスCGコンテストなんていうコンクールがあったりする。 4:ていうか、あと半年とちょっとしたら卒業だよ。 11月に1本挟んで、翌年1月で最終回っていうのが筋ですな。 これが実現すると、入部以来、全てのSTANに文章を載せ続けているという、よく分からない記録が樹立されそうです。 うー、あと2本。期待しないで待ってて下さい(汗) ちなみに、挿し絵先行で話を作ろうとも思いましたが、時間的に無理でした。 .HaL氏、ゴメンナサイ… 2002/9/2 ンジョバ=くりこ丸 |
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