

白と黒の過去	冴樹翼
～プロローグⅢ～『白と黒の過去』『伝説の剣』が白く輝いている。「なぜ『フリューゲル』が貴様の手に！？」黒の男が後ろに飛び退く。「フリューゲル？」白の男の動きが止まる。「なんだ、その剣の事も忘れたのか？」「この剣がなんなんだ？」白の男が左手に持った剣を見る。『伝説の剣』はさらに輝きを増している。「お前が造った剣、『フリューゲル』だ。」「オレが造った？そんなわけないだろう。」黒の男がためいきをつく。「本当に何も憶えてないのか…。」黒の男の手が元に戻る。「いいだろう、俺の知ってる事を教えてやる。」「オレの事を知ってるのか？」白の男が足を踏み出す。「俺はお前にヴィジョンを破壊されたんだからな。」当然のように言う。「正確にはお前ではないが、意識が同じものだからお前同然だ。」「おれの意識？」「そうだ。お前はその姿本来の意識ではないのだろう？ならその姿本来の意識に割り込んでるということだろう。」「まあ、そうなんだがな。」「お前の意識は昔から受け継がれているものだ。強い能力を持つ者を破壊するという意識が。」黒の男が白の男を睨む。「その意識に俺のヴィジョンが破壊されんだ。それで精神だけの存在となった。」「オレは…」「最強の『月の欠片』、『ウィングロード』だ。」「オレが『ウィングロード』…？」その言葉に反応する様に『フリューゲル』の輝きがさらに増す。「その『翼の力』が証拠だ。」一瞬、白の男の背中に翼の形をした光が見えた。「俺がお前と会った時は『翼の聖騎士』と呼ばれていた。」「ウイング・ウィングロード…。」白の男が思い出したように呟いた。瞬間、『フリューゲル』が眩しいほどに輝いた。「どうだ？思い出したか？」「完全にではないが、お前の事を少しだけな！」『フリューゲル』を右手に持ち変えて、『グランブルー』に向ける。「『グランブルー』！貴様の持つ能力は個人で持つには大きすぎる！！」白の男が叫ぶ。「お前も同じようなものだ！『ウィングロード』！！」黒の男も叫ぶ。「「行くぞ！！」」声が重なる。『ウィングロード』と『グランブルー』の双方が力を開放する。第三章『佐伯陽』部屋に明かりが差してくる。ピピピピピピピピ… バサッ！バンバンバンカチリ！布団を跳ね除けて辺りを適当に叩いて目覚ましを止める。「フゥ、驚いた。」目覚ましで起きるのは久しぶりだな…。夜遅くまでパソコンやってたせいかな…。枕元にある眼鏡を取り、感覚だけで洗面台まで行く。眼鏡を置いて顔を洗って歯を磨く。まだ頭がぼんやりしている。「く、こんな時は…。」ココアだ、ココアに限る。眼鏡をかけて台所に行く。ぼんやりした頭では作れないが、我が家には便利な物がある。ココアメーカー（\3800）のスイッチを押して簡単に出来あがる。ココアメーカーの下に置いてあったコップを手に取る。ゴクリ「あぁ…」じわじわと頭が冴えてくる。ゴクゴク… 「よし、ＯＫ。」これで完全に目が覚めた。部屋に戻って着替えてから、鞄を持って居間に行く。「おはよう、文将。」母さんがご飯を食べている。「おはよう…。」テーブルの上に置いてあったトーストを手に取って居間を出る。「いってきます。」「いってらっしゃ～い」家を出る。時間は七時十五分。まだ平気だ。トーストを頬張りながら昨日行ったガラクタ屋に行く。見ると、ガラクタ屋のシャッターは閉まっていた。シャッターに紙が貼ってあった。《眠いので閉占》 ……… 滅茶苦茶な事が書いてある。しかも字が間違っている。時間は七時二十分。ゆっくりと学校に向かおう。それでも教室には人がいなかった。窓側の自分の席に座り、ぼんやりと外を眺める。外は相変わらずの景色で、花の咲く草原が広がっている。変わってたら怖いけどな…。周囲に音は無く、とても静かだ。「現実なのに、現実ではない空間…。」ふと思いついたことを呟いてみた。その呟きをかき消すように教室の戸が開く。戸を開けた誰かはそのまま教室の中央辺りの席に座った。そっちを見てないので、だいだいの位置しかわからない。まぁ、声をかけてこない所から、俺には関係ない人だろう。だんだん人が集まって来て、教室が騒がしくなる。俺は外を眺めたままの姿勢で動いてない。時間は七時五十五分。予鈴が鳴りだした。独り静かに外を眺め続ける。「そのまま授業始めるぞ！」気づいたら担任が来ていた。しかもHRが終ってる…。かなりぼんやりしていたようだ。ガッガガッガッガッ「教科書８７ページ！『あの夏の思い出』５行目…」 …さて、昼休みだ。今日は朝から静かに時間が過ぎている気がする。まぁ、いつも通りだけど。弁当の包みを開ける。タッタッタッタッと、廊下を走ってくる足音が聞こえた。タッタッタ足音はこの教室の前で止まった。まぁ関係ないだろう、とご飯を一口食べる。「新木君っ！」ほら、関係ない…？今、俺が呼ばれた気がする。「大変だ！ロバートが！」ロバート？ああ、なるほど。ロバートがいなかったから静かだったんだ…。「ちょっと新木君、来てくれ！」なんですか？と視線を向ける。そこには息を切らせた遠山先輩がいた。「ロバートが…」「彼なら休みですよ。」風邪でもひいたのかな？と思ってたところで… 「違う！体育館にいるんだ！」体育館？なんだってあんな所に…。「とにかく、来てくれ！」と強引に腕を引っ張られる。「ちょ、ちょっと待ってください！」「待てない！行くよ！」さっきまでの疲れはどこへやら、駆け出していく先輩。それに引っ張られる俺。「まだ食事が…」「そんなの後でいいから！」ガンガン進む先輩。弁当はあきらめて先輩に従うしかないのか…。「どこに行くんですか？」先輩の後ろを走りながら言う。「体育館だよ。」体育館？「ロバート君が関係してるんですか？」たしか体育館にいるって言ってたよな。「そうなんだ。ロバートが今戦ってるんだ。」ロバートが戦っている…？「どうしてロバート君が戦ってるんですか？」「新木君、君も能力がどんなものか見ただろう。」たしかロバートは腕が剣と銃に変化するものだったな…。お世辞にも世界平和に役立つものじゃないだろう。「能力とは本来有るべきものじゃない。イレギュラーなものなんだ。」たしかにこのあいだまで一度も見た事なかったしな。「その『能力者達」を消す為に作られた存在が僕らの敵なんだ。」能力者達を消す存在…。「僕らも一応、人なんだから死にたくはない。能力を持っているだけで殺されるなんて嫌だからね。」そんな奴とロバートが戦ってる…。「だから皆で集まって敵から身を守ってるんだ。」ロバートは大丈夫なのか…？「ロバート…。」「彼なら大丈夫だよ。戦闘型だから生命力も強い方だ。」話をしてる内に体育館に着いた。重い鉄の扉を左右に開く。そこには人型の機械とロバートが戦っていた。「この…やろう！！」右腕の剣を振るうロバート。ガキン、と音がして機械の腕の装甲が削れる。機械が後退して距離を離す。「ちっ！」機械が喋った。「くらいや！」ロバートが左手の銃を機械に向けて撃つ。機械は右方向に平行移動しながら避ける。「…ロックオン！」機械の左肩に付けられた箱から無数の鉄の塊が飛び出す。その鉄の塊がロバートに降り注ぐ。「邪魔や！」ロバートは全ての鉄の塊を剣の一振りで払い落とす。「そこだぁ！」剣を振って出来た隙に機械が右肩の筒をロバートに向けている。「危ない！ロバート君！！」先輩が叫ぶ。それと同時に筒から凄い勢いで弾が出る。ロバートは避けることも出来ないまま、直撃した。「ロバート！！」「ロバート君！！」わずかにズレたが俺と先輩は同時に叫んだ。その場から吹き飛び、壁に叩きつけられるロバート。あっと言う間の出来事にまったくついていけない。たぶん、体育館に着いてから１分とたってないはずだ。「ロバート！！」ロバートに駆け寄ろうとした時、機械がこちらに向いた。「貴様等も能力者だな！！」姿勢を低くして、次の瞬間もの凄い勢いでこちらに向いてくる。そして右腕のガトリングを乱射する。「文っ！危ない！！」ガトリングの弾が横から来た電気に弾かれる。「大丈夫か！？」走ってきたのは陽だった。「俺は大丈夫だが、ロバートが…。」「ちっ、ロバートがやられた…か。」陽はキッと機械を睨みつけた。「テメェ、よくも！！」陽の背中が弾けて、機械との間を縮める。その瞬間、手がバチッと弾けた。「今のはライトニング・チェイスだ。」先輩が説明してくれる。「電気の＋同士を発生させて弾けた勢いで加速する。」陽と機械の差がゼロになる。陽の右手は剣の形をした電気を握っている。機械の左腕もビーム状のブレードがある。その二つが交差し、両方弾けて少し距離が開く。機械が姿勢を低くして、陽に突進する。ひらり、とその突進をかわす陽。機械の行く先には、俺とロバートがいた。「こいつらを先に！」左肩の箱から鉄の塊がこちらに飛んで来る！「大丈夫だ。」先輩は当然の様に言う。「あれがこっちに来る…！」と、鉄の塊は俺の１ｍ程手前でなにかに弾かれて別方向に飛んでいく。「へ？」弾かれた鉄の塊は霧状になって霧散する。「今のが僕の能力の一部だよ。」先輩が自慢げに言う。「ちっ！」機械は、クルリと陽に向き直る「うぉぉぉおおお！！！」陽に向かってガトリングを撃ちながら鉄の塊を撃ち出して近寄る。そのまま、左腕のブレードで斬りかかった。陽の周りで弾や鉄の塊は全て弾かれる。斬りかかってきたブレードを、電気の剣で払う。機械の身体が電気で弾けて後ろに飛んでいく。「なっ！？」陽が身を屈める。「本気で行くぜ！」陽の背中が弾けて、機械を追う。右腕にこれまでとは比べものにならない量の電気が集束する。「ロバートの分まで苦しめ！！」右腕を後ろに伸ばす。「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ！！！」後ろに伸ばした腕を勢いよく機械に向ける。「ライトニング・プラズマァ！！！！」大質量の電流が機械を襲う。「ッ！！！！！」機械の装甲が霧散して、機械だった人が倒れる。そいつは、同じ位の年齢の青年だった。先輩はそいつへ、俺と陽はロバートへ駆け寄る。「大丈夫か！？」ロバートに声をかける。「あれ…？新木クン…？」俺が来たことに気づいてなかったようだ。「大丈夫か？」もう一度声をかける。「もちろんや…。わいはタフなんが取り柄なんやから…。」ヘヘヘ、と頼りなく笑う。「格好悪いとこ見られてしもたな…。」と目を閉じる。「ちいと眠らしてくれや…。疲れた…。」壁に持たれ掛かったまま寝始めた。見た所、外傷は特に無いようだ。始めは驚いたが、とりあえず今回は一段落ついたのかな？「こいつを保健室に運ぶぞ。」陽がロバートを指しながら言う。「『こいつ』はひどいと思うよ。」苦笑しつつロバートの腕を手に取る。陽が足を持って、持ち上げる。「先輩はどうするんですか？」さっきからあの男を調べてる先輩がこっちを向く。「僕は…」そのとき、昼休みの終わりの鐘がなった。「授業が始まるから教室に戻るよ。」笑顔で言った。そういえば、昼休み中だったっけ。「俺達も行くぞ、文！」「ああ…」なにか忘れてるような…？体育館を出、保健室を目指す。運がいい事に保健室は４階、つまり一年の階にある。「文、『翼の聖騎士伝説』って知ってるか？」『翼の聖騎士』？なんだそれ。「なんの話？それ。」「いや、神話の一つなんだが…」神話、ねぇ…。「聞いたことないな。」頭をフル回転させても、それらしき話は思い浮かばない。「遥か昔、世界を滅ぼそうとする魔王がいた時代…」なんかよくわからないんだけど…。「その魔王がこの地にいたらしい。」はぁ！？この地って、睦革に？「魔王はこの地を拠点に、自分の能力で怪物を生み出して世界中にばら撒いていた…」怪物…って本当にいたのか？「人々はその怪物に手も足もでなかった…」そりゃあ、そうだろうけど。「しかし、とある騎士団は違った。」騎士団？今じゃ考えられない…って魔王の時点で考えられないか。「その騎士団は世界規模の大きな騎士団で、世界各地で怪物を撃破していた。」「その騎士団のなかに一人、群を抜いて強い騎士がいた。」なるほど、それが… 「それが、翼の聖騎士と呼ばれた男だ。その翼の聖騎士は次々と怪物を倒していき、ついには魔王をも倒した。」「それをまとめた話が『翼の聖騎士伝説』ってわけか。」「そういう事だ。」 …それで？「その神話がどうしたんだ？」「文ならなにか知ってるかなって思っただけさ。」俺がそんな話、知ってるわけが… 「着いたぞ。」「あ？ああ。」保健室に入る。とりあえず、誰もいないのでロバートをベットに寝かす。「さ、行くか。」そうだ、授業に遅れる。「それじゃ！」「じゃあな！」陽と別れて教室に入る。カツカツカツ「…遅れました。」一応謝ってから、机に戻る。そこで気づく。 …そうか、忘れてたことってこれか。机の上には広げられたままの弁当箱。まだ食べてなかったんだった。終わりを告げる鐘が鳴り、弁当を広げる。ほとんど飲み込むように食べる。所要時間3分半…まずまずの記録かな。弁当をしまって、外を眺める。変わってない景色を見て、少し安心した今日は…いや、最近は忙しい日々を送っている。能力…電子科学部…敵。今までの人生はガラリと変わってしまった。前のような静かな生活にはもう戻れないのだろうか？ガラガラッ「ドモ、遅れましたぁ。」ふふ、あいつがいるかぎり無理だろうな。少しでも関係を持ってしまった。その関係からは…逃れられないだろう。～続く～ ○次回予告『新木文将』都会の街に潜む魔の手。謎の中華料理店に迫る！「社会見学？聞いてないけど…」記憶中に社会見学という言葉は…ある。しかも今日だ。ロバートが顔を上げた。「うまいっ！！」「そういえば、僕らはどこに行くんですか？」「そりゃ、もちろん『紅堂』や！」
～あ・と・が・き～ども、冴樹翼でっす。「お久しぶり」か「はじめまして」。今回はよくわからない仕上がりになってしまいました。まぁ、読めるものにはなってると思います。誤字、脱字はどうかご勘弁を…。今回の主軸である戦闘シーンですが、はっきり言ってスピード感が全然ない。迫力もない。勢いもない。読んで悲しくなりました。（涙）感想がほしいです…。悪い所を書いてもらえればもっといいものが書けると思うので。読んだ人ならわかると思いますが、次回、とうとう新木クンの能力発揮です。そろそろネタが無くなって面倒になってきた主人公も活躍しないとね。どんな能力かは、お楽しみ。ここで暴露する訳にはいきませぬ。てかここで暴露する小説家はいないだろう。（笑）それではまた次の機会に会えることを。冴樹翼挿絵担当ピアニシモの一言適当に書きました･･･ごめんなさい。 Music　月夜／歌月十夜

<< Back \| Top \| Next >>



白と黒の過去	冴樹翼
～プロローグⅢ～『白と黒の過去』『伝説の剣』が白く輝いている。「なぜ『フリューゲル』が貴様の手に！？」黒の男が後ろに飛び退く。「フリューゲル？」白の男の動きが止まる。「なんだ、その剣の事も忘れたのか？」「この剣がなんなんだ？」白の男が左手に持った剣を見る。『伝説の剣』はさらに輝きを増している。「お前が造った剣、『フリューゲル』だ。」「オレが造った？そんなわけないだろう。」黒の男がためいきをつく。「本当に何も憶えてないのか…。」黒の男の手が元に戻る。「いいだろう、俺の知ってる事を教えてやる。」「オレの事を知ってるのか？」白の男が足を踏み出す。「俺はお前にヴィジョンを破壊されたんだからな。」当然のように言う。「正確にはお前ではないが、意識が同じものだからお前同然だ。」「おれの意識？」「そうだ。お前はその姿本来の意識ではないのだろう？ならその姿本来の意識に割り込んでるということだろう。」「まあ、そうなんだがな。」「お前の意識は昔から受け継がれているものだ。強い能力を持つ者を破壊するという意識が。」黒の男が白の男を睨む。「その意識に俺のヴィジョンが破壊されんだ。それで精神だけの存在となった。」「オレは…」「最強の『月の欠片』、『ウィングロード』だ。」「オレが『ウィングロード』…？」その言葉に反応する様に『フリューゲル』の輝きがさらに増す。「その『翼の力』が証拠だ。」一瞬、白の男の背中に翼の形をした光が見えた。「俺がお前と会った時は『翼の聖騎士』と呼ばれていた。」「ウイング・ウィングロード…。」白の男が思い出したように呟いた。瞬間、『フリューゲル』が眩しいほどに輝いた。「どうだ？思い出したか？」「完全にではないが、お前の事を少しだけな！」『フリューゲル』を右手に持ち変えて、『グランブルー』に向ける。「『グランブルー』！貴様の持つ能力は個人で持つには大きすぎる！！」白の男が叫ぶ。「お前も同じようなものだ！『ウィングロード』！！」黒の男も叫ぶ。「「行くぞ！！」」声が重なる。『ウィングロード』と『グランブルー』の双方が力を開放する。第三章『佐伯陽』部屋に明かりが差してくる。ピピピピピピピピ… バサッ！バンバンバンカチリ！布団を跳ね除けて辺りを適当に叩いて目覚ましを止める。「フゥ、驚いた。」目覚ましで起きるのは久しぶりだな…。夜遅くまでパソコンやってたせいかな…。枕元にある眼鏡を取り、感覚だけで洗面台まで行く。眼鏡を置いて顔を洗って歯を磨く。まだ頭がぼんやりしている。「く、こんな時は…。」ココアだ、ココアに限る。眼鏡をかけて台所に行く。ぼんやりした頭では作れないが、我が家には便利な物がある。ココアメーカー（\3800）のスイッチを押して簡単に出来あがる。ココアメーカーの下に置いてあったコップを手に取る。ゴクリ「あぁ…」じわじわと頭が冴えてくる。ゴクゴク… 「よし、ＯＫ。」これで完全に目が覚めた。部屋に戻って着替えてから、鞄を持って居間に行く。「おはよう、文将。」母さんがご飯を食べている。「おはよう…。」テーブルの上に置いてあったトーストを手に取って居間を出る。「いってきます。」「いってらっしゃ～い」家を出る。時間は七時十五分。まだ平気だ。トーストを頬張りながら昨日行ったガラクタ屋に行く。見ると、ガラクタ屋のシャッターは閉まっていた。シャッターに紙が貼ってあった。《眠いので閉占》 ……… 滅茶苦茶な事が書いてある。しかも字が間違っている。時間は七時二十分。ゆっくりと学校に向かおう。それでも教室には人がいなかった。窓側の自分の席に座り、ぼんやりと外を眺める。外は相変わらずの景色で、花の咲く草原が広がっている。変わってたら怖いけどな…。周囲に音は無く、とても静かだ。「現実なのに、現実ではない空間…。」ふと思いついたことを呟いてみた。その呟きをかき消すように教室の戸が開く。戸を開けた誰かはそのまま教室の中央辺りの席に座った。そっちを見てないので、だいだいの位置しかわからない。まぁ、声をかけてこない所から、俺には関係ない人だろう。だんだん人が集まって来て、教室が騒がしくなる。俺は外を眺めたままの姿勢で動いてない。時間は七時五十五分。予鈴が鳴りだした。独り静かに外を眺め続ける。「そのまま授業始めるぞ！」気づいたら担任が来ていた。しかもHRが終ってる…。かなりぼんやりしていたようだ。ガッガガッガッガッ「教科書８７ページ！『あの夏の思い出』５行目…」 …さて、昼休みだ。今日は朝から静かに時間が過ぎている気がする。まぁ、いつも通りだけど。弁当の包みを開ける。タッタッタッタッと、廊下を走ってくる足音が聞こえた。タッタッタ足音はこの教室の前で止まった。まぁ関係ないだろう、とご飯を一口食べる。「新木君っ！」ほら、関係ない…？今、俺が呼ばれた気がする。「大変だ！ロバートが！」ロバート？ああ、なるほど。ロバートがいなかったから静かだったんだ…。「ちょっと新木君、来てくれ！」なんですか？と視線を向ける。そこには息を切らせた遠山先輩がいた。「ロバートが…」「彼なら休みですよ。」風邪でもひいたのかな？と思ってたところで… 「違う！体育館にいるんだ！」体育館？なんだってあんな所に…。「とにかく、来てくれ！」と強引に腕を引っ張られる。「ちょ、ちょっと待ってください！」「待てない！行くよ！」さっきまでの疲れはどこへやら、駆け出していく先輩。それに引っ張られる俺。「まだ食事が…」「そんなの後でいいから！」ガンガン進む先輩。弁当はあきらめて先輩に従うしかないのか…。「どこに行くんですか？」先輩の後ろを走りながら言う。「体育館だよ。」体育館？「ロバート君が関係してるんですか？」たしか体育館にいるって言ってたよな。「そうなんだ。ロバートが今戦ってるんだ。」ロバートが戦っている…？「どうしてロバート君が戦ってるんですか？」「新木君、君も能力がどんなものか見ただろう。」たしかロバートは腕が剣と銃に変化するものだったな…。お世辞にも世界平和に役立つものじゃないだろう。「能力とは本来有るべきものじゃない。イレギュラーなものなんだ。」たしかにこのあいだまで一度も見た事なかったしな。「その『能力者達」を消す為に作られた存在が僕らの敵なんだ。」能力者達を消す存在…。「僕らも一応、人なんだから死にたくはない。能力を持っているだけで殺されるなんて嫌だからね。」そんな奴とロバートが戦ってる…。「だから皆で集まって敵から身を守ってるんだ。」ロバートは大丈夫なのか…？「ロバート…。」「彼なら大丈夫だよ。戦闘型だから生命力も強い方だ。」話をしてる内に体育館に着いた。重い鉄の扉を左右に開く。そこには人型の機械とロバートが戦っていた。「この…やろう！！」右腕の剣を振るうロバート。ガキン、と音がして機械の腕の装甲が削れる。機械が後退して距離を離す。「ちっ！」機械が喋った。「くらいや！」ロバートが左手の銃を機械に向けて撃つ。機械は右方向に平行移動しながら避ける。「…ロックオン！」機械の左肩に付けられた箱から無数の鉄の塊が飛び出す。その鉄の塊がロバートに降り注ぐ。「邪魔や！」ロバートは全ての鉄の塊を剣の一振りで払い落とす。「そこだぁ！」剣を振って出来た隙に機械が右肩の筒をロバートに向けている。「危ない！ロバート君！！」先輩が叫ぶ。それと同時に筒から凄い勢いで弾が出る。ロバートは避けることも出来ないまま、直撃した。「ロバート！！」「ロバート君！！」わずかにズレたが俺と先輩は同時に叫んだ。その場から吹き飛び、壁に叩きつけられるロバート。あっと言う間の出来事にまったくついていけない。たぶん、体育館に着いてから１分とたってないはずだ。「ロバート！！」ロバートに駆け寄ろうとした時、機械がこちらに向いた。「貴様等も能力者だな！！」姿勢を低くして、次の瞬間もの凄い勢いでこちらに向いてくる。そして右腕のガトリングを乱射する。「文っ！危ない！！」ガトリングの弾が横から来た電気に弾かれる。「大丈夫か！？」走ってきたのは陽だった。「俺は大丈夫だが、ロバートが…。」「ちっ、ロバートがやられた…か。」陽はキッと機械を睨みつけた。「テメェ、よくも！！」陽の背中が弾けて、機械との間を縮める。その瞬間、手がバチッと弾けた。「今のはライトニング・チェイスだ。」先輩が説明してくれる。「電気の＋同士を発生させて弾けた勢いで加速する。」陽と機械の差がゼロになる。陽の右手は剣の形をした電気を握っている。機械の左腕もビーム状のブレードがある。その二つが交差し、両方弾けて少し距離が開く。機械が姿勢を低くして、陽に突進する。ひらり、とその突進をかわす陽。機械の行く先には、俺とロバートがいた。「こいつらを先に！」左肩の箱から鉄の塊がこちらに飛んで来る！「大丈夫だ。」先輩は当然の様に言う。「あれがこっちに来る…！」と、鉄の塊は俺の１ｍ程手前でなにかに弾かれて別方向に飛んでいく。「へ？」弾かれた鉄の塊は霧状になって霧散する。「今のが僕の能力の一部だよ。」先輩が自慢げに言う。「ちっ！」機械は、クルリと陽に向き直る「うぉぉぉおおお！！！」陽に向かってガトリングを撃ちながら鉄の塊を撃ち出して近寄る。そのまま、左腕のブレードで斬りかかった。陽の周りで弾や鉄の塊は全て弾かれる。斬りかかってきたブレードを、電気の剣で払う。機械の身体が電気で弾けて後ろに飛んでいく。「なっ！？」陽が身を屈める。「本気で行くぜ！」陽の背中が弾けて、機械を追う。右腕にこれまでとは比べものにならない量の電気が集束する。「ロバートの分まで苦しめ！！」右腕を後ろに伸ばす。「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ！！！」後ろに伸ばした腕を勢いよく機械に向ける。「ライトニング・プラズマァ！！！！」大質量の電流が機械を襲う。「ッ！！！！！」機械の装甲が霧散して、機械だった人が倒れる。そいつは、同じ位の年齢の青年だった。先輩はそいつへ、俺と陽はロバートへ駆け寄る。「大丈夫か！？」ロバートに声をかける。「あれ…？新木クン…？」俺が来たことに気づいてなかったようだ。「大丈夫か？」もう一度声をかける。「もちろんや…。わいはタフなんが取り柄なんやから…。」ヘヘヘ、と頼りなく笑う。「格好悪いとこ見られてしもたな…。」と目を閉じる。「ちいと眠らしてくれや…。疲れた…。」壁に持たれ掛かったまま寝始めた。見た所、外傷は特に無いようだ。始めは驚いたが、とりあえず今回は一段落ついたのかな？「こいつを保健室に運ぶぞ。」陽がロバートを指しながら言う。「『こいつ』はひどいと思うよ。」苦笑しつつロバートの腕を手に取る。陽が足を持って、持ち上げる。「先輩はどうするんですか？」さっきからあの男を調べてる先輩がこっちを向く。「僕は…」そのとき、昼休みの終わりの鐘がなった。「授業が始まるから教室に戻るよ。」笑顔で言った。そういえば、昼休み中だったっけ。「俺達も行くぞ、文！」「ああ…」なにか忘れてるような…？体育館を出、保健室を目指す。運がいい事に保健室は４階、つまり一年の階にある。「文、『翼の聖騎士伝説』って知ってるか？」『翼の聖騎士』？なんだそれ。「なんの話？それ。」「いや、神話の一つなんだが…」神話、ねぇ…。「聞いたことないな。」頭をフル回転させても、それらしき話は思い浮かばない。「遥か昔、世界を滅ぼそうとする魔王がいた時代…」なんかよくわからないんだけど…。「その魔王がこの地にいたらしい。」はぁ！？この地って、睦革に？「魔王はこの地を拠点に、自分の能力で怪物を生み出して世界中にばら撒いていた…」怪物…って本当にいたのか？「人々はその怪物に手も足もでなかった…」そりゃあ、そうだろうけど。「しかし、とある騎士団は違った。」騎士団？今じゃ考えられない…って魔王の時点で考えられないか。「その騎士団は世界規模の大きな騎士団で、世界各地で怪物を撃破していた。」「その騎士団のなかに一人、群を抜いて強い騎士がいた。」なるほど、それが… 「それが、翼の聖騎士と呼ばれた男だ。その翼の聖騎士は次々と怪物を倒していき、ついには魔王をも倒した。」「それをまとめた話が『翼の聖騎士伝説』ってわけか。」「そういう事だ。」 …それで？「その神話がどうしたんだ？」「文ならなにか知ってるかなって思っただけさ。」俺がそんな話、知ってるわけが… 「着いたぞ。」「あ？ああ。」保健室に入る。とりあえず、誰もいないのでロバートをベットに寝かす。「さ、行くか。」そうだ、授業に遅れる。「それじゃ！」「じゃあな！」陽と別れて教室に入る。カツカツカツ「…遅れました。」一応謝ってから、机に戻る。そこで気づく。 …そうか、忘れてたことってこれか。机の上には広げられたままの弁当箱。まだ食べてなかったんだった。終わりを告げる鐘が鳴り、弁当を広げる。ほとんど飲み込むように食べる。所要時間3分半…まずまずの記録かな。弁当をしまって、外を眺める。変わってない景色を見て、少し安心した今日は…いや、最近は忙しい日々を送っている。能力…電子科学部…敵。今までの人生はガラリと変わってしまった。前のような静かな生活にはもう戻れないのだろうか？ガラガラッ「ドモ、遅れましたぁ。」ふふ、あいつがいるかぎり無理だろうな。少しでも関係を持ってしまった。その関係からは…逃れられないだろう。～続く～ ○次回予告『新木文将』都会の街に潜む魔の手。謎の中華料理店に迫る！「社会見学？聞いてないけど…」記憶中に社会見学という言葉は…ある。しかも今日だ。ロバートが顔を上げた。「うまいっ！！」「そういえば、僕らはどこに行くんですか？」「そりゃ、もちろん『紅堂』や！」
～あ・と・が・き～ども、冴樹翼でっす。「お久しぶり」か「はじめまして」。今回はよくわからない仕上がりになってしまいました。まぁ、読めるものにはなってると思います。誤字、脱字はどうかご勘弁を…。今回の主軸である戦闘シーンですが、はっきり言ってスピード感が全然ない。迫力もない。勢いもない。読んで悲しくなりました。（涙）感想がほしいです…。悪い所を書いてもらえればもっといいものが書けると思うので。読んだ人ならわかると思いますが、次回、とうとう新木クンの能力発揮です。そろそろネタが無くなって面倒になってきた主人公も活躍しないとね。どんな能力かは、お楽しみ。ここで暴露する訳にはいきませぬ。てかここで暴露する小説家はいないだろう。（笑）それではまた次の機会に会えることを。冴樹翼挿絵担当ピアニシモの一言適当に書きました･･･ごめんなさい。 Music　月夜／歌月十夜

<< Back \| Top \| Next >>