

白と黒の再戦	冴樹翼
～プロローグⅡ～『白と黒の再戦』白の男は黒の男と対等に戦える力を探していた。そんな力があるかもわからなかったが、とにかく探した。表向きはただの学生に過ぎないので、街を歩き回るだけだが。しかし「何も無いような街」にこそ、答えがあるような気がした。黒の男はなにかを待っていた。いや、黒の男ではなく『グランブルー』だ。なにかが本当に来るのかわからない。なにかが「なんなのか」もわからない。『グランブルー』は待ちつづける。「魔王を倒した伝説の剣…？」街のガラクタ屋にそれはあった。誰も目に留めない、昔話の中の古びた剣。白の男にはこの剣の「見えざる力」がわかった。しかし、「魔王を倒した伝説の剣」だけになかなか値段が高い。と、剣を睨み付ている白の男に誰かが近づいた。「それが欲しいのか？それならば、くれてやる。」白の男が振り返り、店主の女を見る。「もともと、貰い物だからな。」「…助かる。」白の男はそれを掴み、一言残して店を去った。そして、再び白の男と黒の男は対峙していた。「懲りない奴だな…」「あいにくと執念深いんでな。」白の男が何も無い右手を前に突き出す。そこから光が溢れでてきて、棒状になる。光が霞んで消えて、剣が残る。「行くぞ！！」背中を押すように光が溢れ、いっきに間を縮める。そして、右手の剣を振り下ろす。黒の男は泡なって消えた。「くそっ！またか！」泡が集まり人の形になる。「無駄な事を…。」泡が黒の男に戻る。「目障りだな…。消えてもらう！」黒の男の左手が赤と黒の剣になる。その腕を頭上まで上げて振り下ろす。白の男は左手に持った剣で防ぐ。弾かれた黒の男に畳み掛けるように左手の剣を横凪ぎにする。ザシュッ！！確かに手応えがあった。「まさか…その剣！？」「これならいける！！」黒の男は左手で防御しつつ、右手も剣に変えた。片腕だけで戦う白の男が押され始める。「くっ！このままでは…。」白の男はとっさに左手に力を込める。すると、「伝説の剣」が白く輝きだす。「これは…？」第二章『山河聖』部屋に明かりが差してくる。ゴソゴソ俺は枕の先にある眼鏡を手に取る。むくりと体を起こして、眼鏡をかける。そして、もう少しで鳴りだす目覚ましを止めた。「もう朝か…。」まだ眠い頭で洗面台に行く。眼鏡を外して顔を洗って歯を磨く。これで完全に目が覚めた。いつも通りの朝だ。部屋に戻って制服に着替える。鞄を持って居間に行き、用意してあった朝食を手早く食べて家を出た。「まだ、時間があるな…。」腕に付けた時計を見ながら言う。時間は七時を指している。八時にHRだからかなり余裕だ。ちなみに睦革高校までは五分とかからない距離だ。いつも通り学校と反対の道に行く。少し前まで、学校の周りを歩き回ってたのだが、だいたいの道を憶えてしまったので、こっちに来る事にしていた。「この道は憶えた…次の道だな。」大通り沿いはいろんなビルがたっている。眼鏡屋とか喫茶店とか不動産屋とか。そして、小道にはコンビニとか美容院があったりするのだが…。ガラクタ屋は初めて見た。しかも、今の時間帯で開いてる…。時間もあるし、ちょっと入ってみた。「む？いらっしゃ～あふぅ。」あくびの混じった女性の声が聞こえた。店内は割と綺麗に整理されていて、なかなか明るめな感じだった。「魔王を倒した伝説の剣…？」すぐ右側のガラスケースに面白い物が置いてあった。しかも、物凄く高値で。値段と同じ位、胡散臭いなと思った。「お、それに興味があるのか？」店の奥から声が聞こえた。「これは、いいものだぞ。」女性がこちらに歩きながら言う。「この剣は、時代を中世にまでさかのぼり…」「あ、もうそろそろ時間かな。」俺は時計を見た。七時半を指している。「あ…ちょっと！！」女性の声を背に店を出た。 …ふぅ、危なかった。ああゆう話は嫌に長い。下手したら遅刻してしまう。外向きには真面目を装っているので、それは避けたい。とか、考えてると時間がどんどん過ぎていく。時間は七時四十五分。少し小走りに学校へ向かった。息を整えてから、校舎に入る。そこからは無表情で歩いていく。程なくして教室にたどり着いた。「おぅ！新木クン！」中に入ると、昨日聞いた関西弁が挨拶してくる。「……。」無言で手を挙げて返す。自分の席に座り、鞄から教科書などをだす。あと五分でHRだな…。そのまま、窓の外に顔を向ける。外には山へ続く草原が広がっている。草原には花々が咲いていて、とても都会とは思えない。実はこの学校の裏の草原から山までは、『特別自然保護地域』に指定されている。だから、荒らされる事は無い。通称「癒し草原」＆「心洗山」その美しい自然は身も心も清めてくれるらしい。残念ながら、「心洗山」には行った事が無い。近くに見えて結構遠いのだ。そこまでして見に行く程、暇でもないし…。特にこれからは…。「わわ、先生がきてもーた。」関西弁がうろたえてる。カサカサと紙がすれる音が聞こえる。「ん？カードゲームか？もっと体を使え！体を！」急いで机の中にしまっているロバート。「スポーツはいいぞ！はっはっはっはっ！」担任は国語担当なんだが…。時間はいつも通りに過ぎていく。そして…昼。「よっしゃ！昼休みや！新木クン、行こか？」 …まだ弁当食べてない。「べ、弁当が…。」「別にここで食べんでもええやろ？さ、行こか。」問答無用の勢いで手を引っ張られる。「今日はみんなもいるんや。」「みんな？」やはり、と言うべきか。二人だけとは思えないしな。「そや。新木クンを合わせとこ思って来てもらってるんや。」と言う事は俺もこれからは「みんな」の一部になるのか…。「…はぁ。」大げさにため息をついた。「まぁ、緊張してるんは、みんなも同じや。」検討違いの慰めをしてくるロバート。無言で廊下を歩いていく。そして、鉄の扉の前。「準備は出来たか？行くで。」ガチャリ中庭は相変わらず、現実離れしていた。中には、五人程の生徒がいた。鉄の扉が開く音で全員がこちらを向いてる。「みんな！コイツが噂の新木クンや！」大声でみんなに言い聞かせる。「…どうも、初めまして。」言葉少なに挨拶する。「よろしくお願いしますよ。」中から一人、微笑んで握手を求めてきた。「僕の名前は遠山鉄。一応五期生です。」それに応じる。「よろしくお願いします。」「で、こちらが…。」隣にいる女子に手を向ける。「川上大地よ。よろしくね。」遠山が言うより早く喋る。なんか、前にも同じような事があった気がする。「僕も川上さんも同じ電子科学部なんだ。」「そうなんですか。」部活は興味が無かったので見てなかった。「で、僕が部長で川上さんが副部長…」とそこで、ロバートの制止の声。「部活の話は後にしてくれや。」辺りを見ると、一人目を瞑ってる男子がいた。（初めまして、霧島真です。）うわっ！！なんだ？（驚かせてスミマセン。心に直に話しかけてます。）は？なに？（目の前の髪を後ろで束ねてるのが僕です。）確かに、目を瞑ってる男子は、髪を束ねていた。見ていると、目を開けて微笑んだ。こちらは、少し頭を下げた。（よろしくお願いします。）これで、３人。五人の内、一人は山河さんだからあと一人。パチッ！「…ッ！」手が静電気に触れたみたいに痺れた。辺りを見ると、ベンチに足を組んで座ってる男子がいた。「久しぶりだな、文将。」「お前…まさか陽？」俺は驚いた。小学生の頃の親友が同じ学校で、しかも能力者とは。こいつの名前は佐伯陽。小学校の頃、よく一緒にいたのいだが、俺が私立の中学に行く事になって別れてしまったのだ。「文将にはまだ能力が無いんだよな？」「素質はあるみたいなんやけど…。」ロバートが感動（？）の再開を邪魔してきた。「ここにいるって事はそういう事だな。」陽も当たり前のようにうなずく。そういえば、まだ聞いてなかった。「ここってどんな場所なんです？」「新木クン、敬語は使わなくてもええで。」 …軽く流された。「人見知りな性格なんです。」「もう、友達やないか。」勝手に友達になってる…。「まだ、あなた達の事がわからないですから。」そう、知らない事が多すぎる。能力、中庭、集まっている意味。「能力が使えるようになったら全部話す、ってのはどうだ。」陽が提案してきた。「なら、それまでは敬語を使います。」「よし、これでいいだろ。」ロバートに振る。「まぁ、ええか。」よく考えると、「俺が能力を使えるようになるまでは何もわからない」ということだよな…。騙されてるな、俺。「そろそろ、弁当食べなあかんな。」ロバートは手に持った包みを解いていく。「おっ！今日はカレーや！良い事ありそうな感じや！」俺も弁当を食べ始めた。「昼休みももう終わりやな…。」弁当を食べ終わったら、そんな時間だった。中庭には四人しかいなかった。「さ、帰ろか。」「ええ、そうね。」「行こう。」「……。」鉄の扉を出てすぐに山河さんと別れ、階段を登ったところで陽と別れた。教室に入ると、人がそこそこいるのがわかった。「次は…英語！？苦手なんや…。」隣には落ち込むロバートがいた。確かハーフとか言ってたよな。「英語、苦手なんですか？」「ああ、全然わからん。」 …親に教わらなかったのか？「親は大の日本好きなんや。」思わず、口に出して言ってしまった。「わいが生まれた時には、日本語ペラペラだったんや。」なるほど…。ガラガラガラッそこで、教室に先生が入ってきた。「席につけー！！」入ってきたのはうちのクラスの担任だった。「今日はサルヤマはいないから自習だ！」クラスの大半は喜んでいる。ちなみに英語の先生の名前は軽山だ。「教科書をノートに写して授業の終わりに提出するように。」クラスの大半が文句を言っている。俺はもう写してあるのでこの時間は自由に過ごせる。いつもなら外の景色を眺めてるところだが、いろいろと考える事があるから目の前の壁を睨んでいた。そういえば、遠山さんが『電子科学部』の話をしていたな…。放課後には何もやる事がないから、少し見学してみよう。遠山さんや川上さんからなにか聞き出せるかもしれないしな。俺の事もなにかわかるといいんだが…。授業は問題なく終わり、放課後になった。「新木クン、一緒に帰らないか？」ロバートが軽そうな鞄を手に提げてこっちに来た。「いや、電子科学部に行ってみようと思ったんですが…。」電子科学部の名前がでた途端、ロバートが顔色を変えた。「マジか？正気か？」あきらかになにかを恐れてるように言った。「なにかあるんですか？」「…いや、別に何でも無い。それじゃ、わいは帰る。」そそくさと帰ってしまった。なんだろう？たしか電子科学部は… 五階にある『電子研究室』を部室として使っているはず。五階はここの一つ上の階だな。廊下を歩いていると見知った顔がいた。（あっ、新木さん。）「あぐっ！」突然、心に直に話かけられるのはまだ慣れてない。変な声を出したせいで周りが変な目でこっちを見てる。（ごめんなさい…、驚かせるつもりは無かったんですが…。）充分過ぎる程の不意打ち的攻撃だったと思うんだが。霧島君と肩を並べて廊下を歩く。（一緒に帰りませんか？）少し前に聞いたような台詞を言ってきた。「いや、これから『電子科学部』を見てこようと思ったんですが。」（ッ！！）霧島君の明らかな動揺が伝わってくる。「どうしたんですか？」（い、いや、別に何でも無いですよ…。）階段の前まで来た。「一緒に行きませんか？」（いえ、遠慮します。）ハッキリと即答された。「それでは、また。」（さようなら、気をつけて…。）別れの挨拶を交わして上と下に行く。階段を上りながら少し考える。「どうして、あんなに動揺してたんだろう…。」五階の廊下を歩き、程なく『電子科学部』と書かれたドアを見つけた。そっとドアノブに触れた。かちゃりカギはかかってない様だ。ギィ、ガチャンドアを開ける。中は薄暗く、奥に淡い光が見えている。部屋の中に入って、部屋の中を見回す。ここに足を踏み入れた事は間違いだった。「ようこそ…新木文将君。」奥の淡い光の中で布を被ったような格好をした人が言った。後ろ手にドアを閉める。と、部屋が明かるくなる。壁にはゲームのポスターらしきものが張り巡らされており、右側のガラス棚にはパソコンゲームの箱がズラリと並んでいて、左側のロッカーにはゲームのグッズっぽい物が見えている。そして部屋の奥には魔法使いの格好をした人がパソコンの前に座っていた。「いや～、一度この台詞言ってみたかったんだよね～。」魔法使いの格好をした…遠山さんが言った。「…間違えました。」外に出ようと後ろを向く。「あっ、待ってくださいよ。せめて話だけでも聞いてってもいいじゃないですか。」ここは、俺のいる場所じゃない。この部屋は間違い無く、別世界だ。外に出ようとドアに手を伸ばす。ガチャリドアが勝手に開いた。「わっ！！」「ひゃ！？」ドアを開けて中に入ろうとした川上さんとぶつかる。「…すみません。」先に謝る。「いえいえ、こちらこそ…。」川上さんは言いながら道を譲ろうとする。「『待て！ソイツを捕まえろ！！』」 …へ？遠山さんの怒鳴り声が聞こえた。「は、はい…いえ『了解！！』」 …はぇ？少し戸惑っていた川上さんがなにかを察して、ドアを閉めてカギをかける。「『隊長！任務完了しました！』」「『うむ、よくやった。』」芝居口調の二人の会話が続く。いつのまにか、後ろ手に掴まれて動けなくなっていた。「『今、そちらに連れて行きます！』」掴まれたまま、奥へ歩かされる。遠山さんの前まで来た。「『…少し、君に聞きたい事があるんだ。』」まだ、芝居口調は終らない。「なんなんですか？」こっちが怒りを含んだ声で言った。「へ？もしかして『戦狼』知らないの？」センロウ？聞いた事…いや、見たことならある。この部屋のガラス棚に『戦狼～古代の血筋～』と書かれた箱があった。「じゃあ、『魂』シリーズも知らないの！？」タマシイシリーズ？そういえば、この部屋の… 「そういう物には、今のところ興味無いです。」「ええぇ～～！？」「きょ、興味無いの？」二人共、目を丸くして驚いてる。「今……で……くな…。」遠山さんが川上さんになにか耳打ちしている。「……くん…こっちの……に……………。」それを聞いた川上さんは大きく頷いて、「今、『電子科学部』に入部したら、ノートパソコンを貸してあげるよ。」と、笑顔で話てきた。パソコン…欲しいとは思うんだが、入部はちょっと駄目だ。「そんなことよりも、あなた達が『能力』と呼んでいる力について教えて欲しいんですけど…」その言葉を聞いた遠山さんの眼鏡がキラリ、と光った気がした。「わかった。教えてあげよう。代わりに…」「入部しろってわけですか。」うんうん、と頷く二人。「わかりました、いいでしょう。その代わり、隠し事はやめて下さいよ。」「とんでもない。隠し事なんてしませんよ。」遠山さんは基本的には良い人なのだろう。これで、少しは疑問が解けそうだな。「その前に…これ！」後ろから、川上さんに抱きつかれた。わけではなく、川上さんはすぐ離れる。「何ですか？これは？」これ、とは肩につけられたマントのことだ。「この部屋では、このマントをつけるのが部の規則なの。」「そこの鏡を見たらどうです？結構似合ってますよ。」遠山さんの言う通り、等身大の鏡があった。 …うっかり鏡を見てしまった。学生服という普段着ない服の上から中世時代のマントがついている。とても不思議な格好だ。「そのマントは『魂』シリーズの『流川優先輩』がつけてるマントなんだよ。」また、『魂』シリーズという言葉がでてきた。「『魂』シリーズって何ですか？」またも、遠山さんの眼鏡が光った気がした。「よくぞ聞いてくれた！『魂』シリーズとは『魂の繋がり』というパソコンのゲームのことで今は１～３まででていて、４は現在開発中ということなんだけど今年中にはでると思う。んで、ゲームの内容は恋愛アドベンチャーって聞いたことある？まぁ、簡単に言えば小説の主人公になって自分で選択肢を選んで物語を進めていくってのが基本なんだけど、まぁその辺はゲーム自体をやれば、わかると思う。そうだ！君にパソコンを貸すって言ったけど、そのパソコンにインストールしておくよ。是非やってみてくれ！」「はぁ…。」長々と説明されて、ちょっと疲れた。「遠山先輩、ちょっと聞きたいことがあるんですけど…。」眼鏡をクイッとあげて「なんだい？新木君。」と、遠山先輩がカッコイイ先輩を装う。「『能力』のことなんですが…。」遠山先輩のオーラが消えた。「ああ、はい。なんでもどうぞ。」熱中すると、こんなにも性格が変わるのか…。「『中庭』ってどういう場所なんです？」初めに思いついた疑問…あんな場所、本来睦校には無いはずだ。「『能力』ですよ。校長先生の『能力』の一つ『空間創意』。」校長先生の『能力』？って事は校長先生も『能力者』！？「能力者以外にはわからない空間を作る『能力』なんです。」てことは行けた俺も能力者ってこと！？「僕はどうなんですか？」「…能力はあるんだけど自分では気づいてない、とか。」心当たりは…無い。「そんな事は無いと思うんですが…。」遠山先輩はう～んと唸る。「能力者になりかけているんじゃない？僕もそうだったし。」なりかけている？そんな事ってあるのか？「それじゃあ、遠山さんはいつから能力を使えるようになったんですか？」少しは参考になるかもしれない。「僕？え～と…そうだ！去年の六月頃にちょっとした事件があってね。」「どんな事件なんですか？」「…能力者同士の戦い。」能力者同士の戦い…か。その影響で能力者になることもあるのか。「その能力者ってのがロバートと山河さんなんだ。」あの二人が戦っていた！？「そう、それはある肌寒い梅雨のある日…」喋り方が昔語り口調になった…。僕はその日…文化祭の事で遅くまで残る事になって、作業が終って帰ろうとしたら、どこからか言い争っている声が聞こえたんだ。「また、わいの邪魔するんか？」「学校を壊して何が楽しいのよ。」ロバートは、その時少し荒れてて能力で窓やら壁やら壊してたんだ。それを見た山河さんが止めに入ったんだろう。「邪魔するんなら容赦せんで。」「あなたとは戦う事になるだろうと思っていたわ。」「ああ、わいもお前の事がずっときにいらんかったんや！！」そこで、初めて僕は能力というものを見たんだ。ロバートの腕が変化して、山河さんの周りに氷が集まり出す光景を…。最初は戦闘系のロバートの方が押してたんだけど、途中で山河さんが氷の特性を活かした戦略的な戦い方に変わって状況が一転した。ロバートの足が地面に凍り付いて動かなくなり、山河さんが手に氷を集めて剣を造り、突きのようにロバートを刺そうとした。「くっ！！」「あっ！？」そこで、山河さんの精神力が底を尽き、ロバートの体の前で溶けるように氷の剣がなくなり、足止めしていた氷も水になって、動けるようになったロバートが左手の銃を山河さんに向ける。「これで、終りや…。」その直後、カチッという情けない音がその部屋に響いた。「あかん、玉切れや…。」ロバートの精神力も当に尽きてたんだろう、ガクリと膝をつく。同じように山河さんも地面に座る。「はは、こんなに能力使ったの久しぶりや…。」「わたしもよ…。」二人とも、ぜぃぜぃと息を切らせている。「こんな清々しい気持ち初めてや…。」ロバートが先に立った。そして、山河さんに近づいて、「あんた、名前は？」と手を差し出す。「クラスメートの名前位、覚えなさいよ。」と言って、手を取る。そこに、さっきまでの敵意は無い。「山河聖よ。」「ロバート・ブラウン。能力者同士、仲良くしようや。」「…というわけです。」 …へ？終り？「続きは？」「僕がそれどころじゃなかったんです。」かなり、中途半端な終り方だ。「あ、もうこんな時間か！！」遠山さんが時計を見て驚く。時間は４時。「ああ～！『Ａ・Ｗ』が始まる！！」慌てて制服に着替える。俺もマントを取ろうとした。「ちょっと待ってください、話があります。」川上先輩が肩に手を置く。 …なにか、よくなさそうなんだけど。「わかりました。」「それじゃ、また明日！」話してる間に遠山先輩は帰る準備が整って、脱兎の如く駆け抜けて行った。「それで、部活の事だけど…。」なにかのプリントを渡される。プリントには、『入部届』と書いてある。「その入部届は今書いちゃって。」さらなる非現実に足を踏み入れてしまったようだ。～続く～ ○次回予告『佐伯陽』能力者達が集まっているのには理由がある。その理由とは？姿勢を低くして、次の瞬間もの凄い勢いでこちらに向かってくる。そして右腕のガトリングを乱射する。「文、『翼の聖騎士伝説』って知ってるか？」『翼の聖騎士』？なんだそれ。
～あ・と・が・き～これで２回目、冴樹翼です。いろいろあって、改名しました。長文書いてごめんなさい。（予定より約1.6倍）その他、指摘などがあったらご意見番にお願いします。まぅ、疲れた。次は挿絵に挑戦しようかな…。現時刻　９／２　４：２３（早朝）いや、関係無いけどね…。作中に出てきた『戦狼～古代の血筋～』＆『魂の繋がり』は実際には存在しません。ご注意下さい。いや、好評企画中と言っておきます。いつか、どこかで見かけるかもしれません。第2話になって、主人公『新木文将』の性格がだいぶ変わっていることにいまさら気がつく。さて時間が時間だし…。もうそろそろ… 寝よう…。まぅ。冴樹翼 Music　Fragment／水夏

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白と黒の再戦	冴樹翼
～プロローグⅡ～『白と黒の再戦』白の男は黒の男と対等に戦える力を探していた。そんな力があるかもわからなかったが、とにかく探した。表向きはただの学生に過ぎないので、街を歩き回るだけだが。しかし「何も無いような街」にこそ、答えがあるような気がした。黒の男はなにかを待っていた。いや、黒の男ではなく『グランブルー』だ。なにかが本当に来るのかわからない。なにかが「なんなのか」もわからない。『グランブルー』は待ちつづける。「魔王を倒した伝説の剣…？」街のガラクタ屋にそれはあった。誰も目に留めない、昔話の中の古びた剣。白の男にはこの剣の「見えざる力」がわかった。しかし、「魔王を倒した伝説の剣」だけになかなか値段が高い。と、剣を睨み付ている白の男に誰かが近づいた。「それが欲しいのか？それならば、くれてやる。」白の男が振り返り、店主の女を見る。「もともと、貰い物だからな。」「…助かる。」白の男はそれを掴み、一言残して店を去った。そして、再び白の男と黒の男は対峙していた。「懲りない奴だな…」「あいにくと執念深いんでな。」白の男が何も無い右手を前に突き出す。そこから光が溢れでてきて、棒状になる。光が霞んで消えて、剣が残る。「行くぞ！！」背中を押すように光が溢れ、いっきに間を縮める。そして、右手の剣を振り下ろす。黒の男は泡なって消えた。「くそっ！またか！」泡が集まり人の形になる。「無駄な事を…。」泡が黒の男に戻る。「目障りだな…。消えてもらう！」黒の男の左手が赤と黒の剣になる。その腕を頭上まで上げて振り下ろす。白の男は左手に持った剣で防ぐ。弾かれた黒の男に畳み掛けるように左手の剣を横凪ぎにする。ザシュッ！！確かに手応えがあった。「まさか…その剣！？」「これならいける！！」黒の男は左手で防御しつつ、右手も剣に変えた。片腕だけで戦う白の男が押され始める。「くっ！このままでは…。」白の男はとっさに左手に力を込める。すると、「伝説の剣」が白く輝きだす。「これは…？」第二章『山河聖』部屋に明かりが差してくる。ゴソゴソ俺は枕の先にある眼鏡を手に取る。むくりと体を起こして、眼鏡をかける。そして、もう少しで鳴りだす目覚ましを止めた。「もう朝か…。」まだ眠い頭で洗面台に行く。眼鏡を外して顔を洗って歯を磨く。これで完全に目が覚めた。いつも通りの朝だ。部屋に戻って制服に着替える。鞄を持って居間に行き、用意してあった朝食を手早く食べて家を出た。「まだ、時間があるな…。」腕に付けた時計を見ながら言う。時間は七時を指している。八時にHRだからかなり余裕だ。ちなみに睦革高校までは五分とかからない距離だ。いつも通り学校と反対の道に行く。少し前まで、学校の周りを歩き回ってたのだが、だいたいの道を憶えてしまったので、こっちに来る事にしていた。「この道は憶えた…次の道だな。」大通り沿いはいろんなビルがたっている。眼鏡屋とか喫茶店とか不動産屋とか。そして、小道にはコンビニとか美容院があったりするのだが…。ガラクタ屋は初めて見た。しかも、今の時間帯で開いてる…。時間もあるし、ちょっと入ってみた。「む？いらっしゃ～あふぅ。」あくびの混じった女性の声が聞こえた。店内は割と綺麗に整理されていて、なかなか明るめな感じだった。「魔王を倒した伝説の剣…？」すぐ右側のガラスケースに面白い物が置いてあった。しかも、物凄く高値で。値段と同じ位、胡散臭いなと思った。「お、それに興味があるのか？」店の奥から声が聞こえた。「これは、いいものだぞ。」女性がこちらに歩きながら言う。「この剣は、時代を中世にまでさかのぼり…」「あ、もうそろそろ時間かな。」俺は時計を見た。七時半を指している。「あ…ちょっと！！」女性の声を背に店を出た。 …ふぅ、危なかった。ああゆう話は嫌に長い。下手したら遅刻してしまう。外向きには真面目を装っているので、それは避けたい。とか、考えてると時間がどんどん過ぎていく。時間は七時四十五分。少し小走りに学校へ向かった。息を整えてから、校舎に入る。そこからは無表情で歩いていく。程なくして教室にたどり着いた。「おぅ！新木クン！」中に入ると、昨日聞いた関西弁が挨拶してくる。「……。」無言で手を挙げて返す。自分の席に座り、鞄から教科書などをだす。あと五分でHRだな…。そのまま、窓の外に顔を向ける。外には山へ続く草原が広がっている。草原には花々が咲いていて、とても都会とは思えない。実はこの学校の裏の草原から山までは、『特別自然保護地域』に指定されている。だから、荒らされる事は無い。通称「癒し草原」＆「心洗山」その美しい自然は身も心も清めてくれるらしい。残念ながら、「心洗山」には行った事が無い。近くに見えて結構遠いのだ。そこまでして見に行く程、暇でもないし…。特にこれからは…。「わわ、先生がきてもーた。」関西弁がうろたえてる。カサカサと紙がすれる音が聞こえる。「ん？カードゲームか？もっと体を使え！体を！」急いで机の中にしまっているロバート。「スポーツはいいぞ！はっはっはっはっ！」担任は国語担当なんだが…。時間はいつも通りに過ぎていく。そして…昼。「よっしゃ！昼休みや！新木クン、行こか？」 …まだ弁当食べてない。「べ、弁当が…。」「別にここで食べんでもええやろ？さ、行こか。」問答無用の勢いで手を引っ張られる。「今日はみんなもいるんや。」「みんな？」やはり、と言うべきか。二人だけとは思えないしな。「そや。新木クンを合わせとこ思って来てもらってるんや。」と言う事は俺もこれからは「みんな」の一部になるのか…。「…はぁ。」大げさにため息をついた。「まぁ、緊張してるんは、みんなも同じや。」検討違いの慰めをしてくるロバート。無言で廊下を歩いていく。そして、鉄の扉の前。「準備は出来たか？行くで。」ガチャリ中庭は相変わらず、現実離れしていた。中には、五人程の生徒がいた。鉄の扉が開く音で全員がこちらを向いてる。「みんな！コイツが噂の新木クンや！」大声でみんなに言い聞かせる。「…どうも、初めまして。」言葉少なに挨拶する。「よろしくお願いしますよ。」中から一人、微笑んで握手を求めてきた。「僕の名前は遠山鉄。一応五期生です。」それに応じる。「よろしくお願いします。」「で、こちらが…。」隣にいる女子に手を向ける。「川上大地よ。よろしくね。」遠山が言うより早く喋る。なんか、前にも同じような事があった気がする。「僕も川上さんも同じ電子科学部なんだ。」「そうなんですか。」部活は興味が無かったので見てなかった。「で、僕が部長で川上さんが副部長…」とそこで、ロバートの制止の声。「部活の話は後にしてくれや。」辺りを見ると、一人目を瞑ってる男子がいた。（初めまして、霧島真です。）うわっ！！なんだ？（驚かせてスミマセン。心に直に話しかけてます。）は？なに？（目の前の髪を後ろで束ねてるのが僕です。）確かに、目を瞑ってる男子は、髪を束ねていた。見ていると、目を開けて微笑んだ。こちらは、少し頭を下げた。（よろしくお願いします。）これで、３人。五人の内、一人は山河さんだからあと一人。パチッ！「…ッ！」手が静電気に触れたみたいに痺れた。辺りを見ると、ベンチに足を組んで座ってる男子がいた。「久しぶりだな、文将。」「お前…まさか陽？」俺は驚いた。小学生の頃の親友が同じ学校で、しかも能力者とは。こいつの名前は佐伯陽。小学校の頃、よく一緒にいたのいだが、俺が私立の中学に行く事になって別れてしまったのだ。「文将にはまだ能力が無いんだよな？」「素質はあるみたいなんやけど…。」ロバートが感動（？）の再開を邪魔してきた。「ここにいるって事はそういう事だな。」陽も当たり前のようにうなずく。そういえば、まだ聞いてなかった。「ここってどんな場所なんです？」「新木クン、敬語は使わなくてもええで。」 …軽く流された。「人見知りな性格なんです。」「もう、友達やないか。」勝手に友達になってる…。「まだ、あなた達の事がわからないですから。」そう、知らない事が多すぎる。能力、中庭、集まっている意味。「能力が使えるようになったら全部話す、ってのはどうだ。」陽が提案してきた。「なら、それまでは敬語を使います。」「よし、これでいいだろ。」ロバートに振る。「まぁ、ええか。」よく考えると、「俺が能力を使えるようになるまでは何もわからない」ということだよな…。騙されてるな、俺。「そろそろ、弁当食べなあかんな。」ロバートは手に持った包みを解いていく。「おっ！今日はカレーや！良い事ありそうな感じや！」俺も弁当を食べ始めた。「昼休みももう終わりやな…。」弁当を食べ終わったら、そんな時間だった。中庭には四人しかいなかった。「さ、帰ろか。」「ええ、そうね。」「行こう。」「……。」鉄の扉を出てすぐに山河さんと別れ、階段を登ったところで陽と別れた。教室に入ると、人がそこそこいるのがわかった。「次は…英語！？苦手なんや…。」隣には落ち込むロバートがいた。確かハーフとか言ってたよな。「英語、苦手なんですか？」「ああ、全然わからん。」 …親に教わらなかったのか？「親は大の日本好きなんや。」思わず、口に出して言ってしまった。「わいが生まれた時には、日本語ペラペラだったんや。」なるほど…。ガラガラガラッそこで、教室に先生が入ってきた。「席につけー！！」入ってきたのはうちのクラスの担任だった。「今日はサルヤマはいないから自習だ！」クラスの大半は喜んでいる。ちなみに英語の先生の名前は軽山だ。「教科書をノートに写して授業の終わりに提出するように。」クラスの大半が文句を言っている。俺はもう写してあるのでこの時間は自由に過ごせる。いつもなら外の景色を眺めてるところだが、いろいろと考える事があるから目の前の壁を睨んでいた。そういえば、遠山さんが『電子科学部』の話をしていたな…。放課後には何もやる事がないから、少し見学してみよう。遠山さんや川上さんからなにか聞き出せるかもしれないしな。俺の事もなにかわかるといいんだが…。授業は問題なく終わり、放課後になった。「新木クン、一緒に帰らないか？」ロバートが軽そうな鞄を手に提げてこっちに来た。「いや、電子科学部に行ってみようと思ったんですが…。」電子科学部の名前がでた途端、ロバートが顔色を変えた。「マジか？正気か？」あきらかになにかを恐れてるように言った。「なにかあるんですか？」「…いや、別に何でも無い。それじゃ、わいは帰る。」そそくさと帰ってしまった。なんだろう？たしか電子科学部は… 五階にある『電子研究室』を部室として使っているはず。五階はここの一つ上の階だな。廊下を歩いていると見知った顔がいた。（あっ、新木さん。）「あぐっ！」突然、心に直に話かけられるのはまだ慣れてない。変な声を出したせいで周りが変な目でこっちを見てる。（ごめんなさい…、驚かせるつもりは無かったんですが…。）充分過ぎる程の不意打ち的攻撃だったと思うんだが。霧島君と肩を並べて廊下を歩く。（一緒に帰りませんか？）少し前に聞いたような台詞を言ってきた。「いや、これから『電子科学部』を見てこようと思ったんですが。」（ッ！！）霧島君の明らかな動揺が伝わってくる。「どうしたんですか？」（い、いや、別に何でも無いですよ…。）階段の前まで来た。「一緒に行きませんか？」（いえ、遠慮します。）ハッキリと即答された。「それでは、また。」（さようなら、気をつけて…。）別れの挨拶を交わして上と下に行く。階段を上りながら少し考える。「どうして、あんなに動揺してたんだろう…。」五階の廊下を歩き、程なく『電子科学部』と書かれたドアを見つけた。そっとドアノブに触れた。かちゃりカギはかかってない様だ。ギィ、ガチャンドアを開ける。中は薄暗く、奥に淡い光が見えている。部屋の中に入って、部屋の中を見回す。ここに足を踏み入れた事は間違いだった。「ようこそ…新木文将君。」奥の淡い光の中で布を被ったような格好をした人が言った。後ろ手にドアを閉める。と、部屋が明かるくなる。壁にはゲームのポスターらしきものが張り巡らされており、右側のガラス棚にはパソコンゲームの箱がズラリと並んでいて、左側のロッカーにはゲームのグッズっぽい物が見えている。そして部屋の奥には魔法使いの格好をした人がパソコンの前に座っていた。「いや～、一度この台詞言ってみたかったんだよね～。」魔法使いの格好をした…遠山さんが言った。「…間違えました。」外に出ようと後ろを向く。「あっ、待ってくださいよ。せめて話だけでも聞いてってもいいじゃないですか。」ここは、俺のいる場所じゃない。この部屋は間違い無く、別世界だ。外に出ようとドアに手を伸ばす。ガチャリドアが勝手に開いた。「わっ！！」「ひゃ！？」ドアを開けて中に入ろうとした川上さんとぶつかる。「…すみません。」先に謝る。「いえいえ、こちらこそ…。」川上さんは言いながら道を譲ろうとする。「『待て！ソイツを捕まえろ！！』」 …へ？遠山さんの怒鳴り声が聞こえた。「は、はい…いえ『了解！！』」 …はぇ？少し戸惑っていた川上さんがなにかを察して、ドアを閉めてカギをかける。「『隊長！任務完了しました！』」「『うむ、よくやった。』」芝居口調の二人の会話が続く。いつのまにか、後ろ手に掴まれて動けなくなっていた。「『今、そちらに連れて行きます！』」掴まれたまま、奥へ歩かされる。遠山さんの前まで来た。「『…少し、君に聞きたい事があるんだ。』」まだ、芝居口調は終らない。「なんなんですか？」こっちが怒りを含んだ声で言った。「へ？もしかして『戦狼』知らないの？」センロウ？聞いた事…いや、見たことならある。この部屋のガラス棚に『戦狼～古代の血筋～』と書かれた箱があった。「じゃあ、『魂』シリーズも知らないの！？」タマシイシリーズ？そういえば、この部屋の… 「そういう物には、今のところ興味無いです。」「ええぇ～～！？」「きょ、興味無いの？」二人共、目を丸くして驚いてる。「今……で……くな…。」遠山さんが川上さんになにか耳打ちしている。「……くん…こっちの……に……………。」それを聞いた川上さんは大きく頷いて、「今、『電子科学部』に入部したら、ノートパソコンを貸してあげるよ。」と、笑顔で話てきた。パソコン…欲しいとは思うんだが、入部はちょっと駄目だ。「そんなことよりも、あなた達が『能力』と呼んでいる力について教えて欲しいんですけど…」その言葉を聞いた遠山さんの眼鏡がキラリ、と光った気がした。「わかった。教えてあげよう。代わりに…」「入部しろってわけですか。」うんうん、と頷く二人。「わかりました、いいでしょう。その代わり、隠し事はやめて下さいよ。」「とんでもない。隠し事なんてしませんよ。」遠山さんは基本的には良い人なのだろう。これで、少しは疑問が解けそうだな。「その前に…これ！」後ろから、川上さんに抱きつかれた。わけではなく、川上さんはすぐ離れる。「何ですか？これは？」これ、とは肩につけられたマントのことだ。「この部屋では、このマントをつけるのが部の規則なの。」「そこの鏡を見たらどうです？結構似合ってますよ。」遠山さんの言う通り、等身大の鏡があった。 …うっかり鏡を見てしまった。学生服という普段着ない服の上から中世時代のマントがついている。とても不思議な格好だ。「そのマントは『魂』シリーズの『流川優先輩』がつけてるマントなんだよ。」また、『魂』シリーズという言葉がでてきた。「『魂』シリーズって何ですか？」またも、遠山さんの眼鏡が光った気がした。「よくぞ聞いてくれた！『魂』シリーズとは『魂の繋がり』というパソコンのゲームのことで今は１～３まででていて、４は現在開発中ということなんだけど今年中にはでると思う。んで、ゲームの内容は恋愛アドベンチャーって聞いたことある？まぁ、簡単に言えば小説の主人公になって自分で選択肢を選んで物語を進めていくってのが基本なんだけど、まぁその辺はゲーム自体をやれば、わかると思う。そうだ！君にパソコンを貸すって言ったけど、そのパソコンにインストールしておくよ。是非やってみてくれ！」「はぁ…。」長々と説明されて、ちょっと疲れた。「遠山先輩、ちょっと聞きたいことがあるんですけど…。」眼鏡をクイッとあげて「なんだい？新木君。」と、遠山先輩がカッコイイ先輩を装う。「『能力』のことなんですが…。」遠山先輩のオーラが消えた。「ああ、はい。なんでもどうぞ。」熱中すると、こんなにも性格が変わるのか…。「『中庭』ってどういう場所なんです？」初めに思いついた疑問…あんな場所、本来睦校には無いはずだ。「『能力』ですよ。校長先生の『能力』の一つ『空間創意』。」校長先生の『能力』？って事は校長先生も『能力者』！？「能力者以外にはわからない空間を作る『能力』なんです。」てことは行けた俺も能力者ってこと！？「僕はどうなんですか？」「…能力はあるんだけど自分では気づいてない、とか。」心当たりは…無い。「そんな事は無いと思うんですが…。」遠山先輩はう～んと唸る。「能力者になりかけているんじゃない？僕もそうだったし。」なりかけている？そんな事ってあるのか？「それじゃあ、遠山さんはいつから能力を使えるようになったんですか？」少しは参考になるかもしれない。「僕？え～と…そうだ！去年の六月頃にちょっとした事件があってね。」「どんな事件なんですか？」「…能力者同士の戦い。」能力者同士の戦い…か。その影響で能力者になることもあるのか。「その能力者ってのがロバートと山河さんなんだ。」あの二人が戦っていた！？「そう、それはある肌寒い梅雨のある日…」喋り方が昔語り口調になった…。僕はその日…文化祭の事で遅くまで残る事になって、作業が終って帰ろうとしたら、どこからか言い争っている声が聞こえたんだ。「また、わいの邪魔するんか？」「学校を壊して何が楽しいのよ。」ロバートは、その時少し荒れてて能力で窓やら壁やら壊してたんだ。それを見た山河さんが止めに入ったんだろう。「邪魔するんなら容赦せんで。」「あなたとは戦う事になるだろうと思っていたわ。」「ああ、わいもお前の事がずっときにいらんかったんや！！」そこで、初めて僕は能力というものを見たんだ。ロバートの腕が変化して、山河さんの周りに氷が集まり出す光景を…。最初は戦闘系のロバートの方が押してたんだけど、途中で山河さんが氷の特性を活かした戦略的な戦い方に変わって状況が一転した。ロバートの足が地面に凍り付いて動かなくなり、山河さんが手に氷を集めて剣を造り、突きのようにロバートを刺そうとした。「くっ！！」「あっ！？」そこで、山河さんの精神力が底を尽き、ロバートの体の前で溶けるように氷の剣がなくなり、足止めしていた氷も水になって、動けるようになったロバートが左手の銃を山河さんに向ける。「これで、終りや…。」その直後、カチッという情けない音がその部屋に響いた。「あかん、玉切れや…。」ロバートの精神力も当に尽きてたんだろう、ガクリと膝をつく。同じように山河さんも地面に座る。「はは、こんなに能力使ったの久しぶりや…。」「わたしもよ…。」二人とも、ぜぃぜぃと息を切らせている。「こんな清々しい気持ち初めてや…。」ロバートが先に立った。そして、山河さんに近づいて、「あんた、名前は？」と手を差し出す。「クラスメートの名前位、覚えなさいよ。」と言って、手を取る。そこに、さっきまでの敵意は無い。「山河聖よ。」「ロバート・ブラウン。能力者同士、仲良くしようや。」「…というわけです。」 …へ？終り？「続きは？」「僕がそれどころじゃなかったんです。」かなり、中途半端な終り方だ。「あ、もうこんな時間か！！」遠山さんが時計を見て驚く。時間は４時。「ああ～！『Ａ・Ｗ』が始まる！！」慌てて制服に着替える。俺もマントを取ろうとした。「ちょっと待ってください、話があります。」川上先輩が肩に手を置く。 …なにか、よくなさそうなんだけど。「わかりました。」「それじゃ、また明日！」話してる間に遠山先輩は帰る準備が整って、脱兎の如く駆け抜けて行った。「それで、部活の事だけど…。」なにかのプリントを渡される。プリントには、『入部届』と書いてある。「その入部届は今書いちゃって。」さらなる非現実に足を踏み入れてしまったようだ。～続く～ ○次回予告『佐伯陽』能力者達が集まっているのには理由がある。その理由とは？姿勢を低くして、次の瞬間もの凄い勢いでこちらに向かってくる。そして右腕のガトリングを乱射する。「文、『翼の聖騎士伝説』って知ってるか？」『翼の聖騎士』？なんだそれ。
～あ・と・が・き～これで２回目、冴樹翼です。いろいろあって、改名しました。長文書いてごめんなさい。（予定より約1.6倍）その他、指摘などがあったらご意見番にお願いします。まぅ、疲れた。次は挿絵に挑戦しようかな…。現時刻　９／２　４：２３（早朝）いや、関係無いけどね…。作中に出てきた『戦狼～古代の血筋～』＆『魂の繋がり』は実際には存在しません。ご注意下さい。いや、好評企画中と言っておきます。いつか、どこかで見かけるかもしれません。第2話になって、主人公『新木文将』の性格がだいぶ変わっていることにいまさら気がつく。さて時間が時間だし…。もうそろそろ… 寝よう…。まぅ。冴樹翼 Music　Fragment／水夏

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