白と黒の戦い 冴樹翼

〜プロローグ�機繊愬鬚塙�の戦い』

白の男と黒の男が対峙していた。
白の男は全身から殺気を放っていて、
黒の男はただ見つめ返しているだけだった。
「『グランブルー』！貴様を倒す！！」
白の男が叫んだ｡
「俺は『グランブルー』ではない。『グランブルー』は俺の精神の中に存在しているだけだ。」
黒の男が静かに言った。
「その『グランブルー』を倒すと言っているんだ！！」
白の男が再び叫ぶ。
直後、白の男の背中から光がでてきた。
その光に押されるように白の男はもの凄い速さで黒の男に近づく。
黒の男はそれを見つめるだけだ。
あと少しで接触する距離まで近づいたとき、
白の男の背中の光が少し右手に集まり、棒のような形になる。
その棒状の光が消え、手に剣が残る。
その剣を黒の男めがけて振り下ろす。
黒の男はなにもしなかった。
触れる寸前で黒の男は黒い泡になって消えた。
「くっ、やはり『グランブルー』の力かっ！」
白の男が勢いあまってよろける。
黒い泡が浮き上がって人の形を作る。
泡から黒の男が現われる。
「その程度で『グランブルー』を倒すと言っているのか？」
黒の男が嘲笑う様に言った。
「負けるかぁ！！」
白の男がもう一度剣を振り下ろす。
黒の男が黒い泡となって消えた。
「無駄だ。」
黒い泡が黒の男になる。
「終わりにしてやる。」
黒の男が手を前に突き出す。
その手が赤黒く光る。
世界が一瞬黒く染まった。
その瞬間白の男が力が抜けたように倒れた。
黒の男が白の男を見下ろしている。
「どうした？向かってこないのか？」
黒の男が手を上に向ける。
「俺にはここで暇を潰す時間は無い。」
黒の男の手から黒い泡がでてくる。
「待て！『グランブルー』！」
白の男が倒れたまま動けずに叫ぶ。
黒の男が黒い泡に包まれる。
そして、何も無かった様に消え失せた。
「くそっ！！」
動けるようになった白の男が立ち上がって叫んだ。
そして手を握り締めて言った。
「次こそは必ず･･･！！」

まだまだ戦いは始まったばかりだ。






第一章『ロバート・ブラウン』

いつもの様に先生の授業に集中する。
黒板には数式がびっしり並んでいる。
先生が数式の説明をする。
ノートに書き写す。
その繰り返し。
ここは睦革高校一年D組。
数学の授業中だ。
周りは当然の様に喋ってばかりいる。
バン！と机を叩く音がした。
「おい！静かにしないか！」
先生の声で静かになる。
すべてがいつもと同じだった。
授業が終わって周りが騒ぎ出す。
俺はいつもの様に窓の外を見る。
窓側の席なので教室が視界から消える。
だから、いつも窓の外を見ている。
しばらくして、鐘が鳴る。
先生が来て授業が始まる。
今度は黒板がさっきとは別の数式で埋まる。
化学の授業だった。
また、授業に集中する。
そして、周りがうるさくなる。
化学の先生は喋っている生徒を無視するから怒鳴らない。
だから、授業中うるさい。
でも、別に授業に支障は無い。
やがて化学の授業も終わる。
化学の先生はキリの良いところで終わらせるから、終了の鐘までかなり時間が残っている。
その時間もやはり窓の外を見て過ごす。
いつもと同じはずだった。
「なぁ、新木クン。」
突然クラスメートに呼ばれた。
「何ですか？」
振り返りもせずに言う。
「新木クンに聞きたい事があるんやけど…。」
なにか聞きにくそうな言い方だな…。
「ちょっと昼休み空いてるか？」
昼休み…いつも窓の外を見ている。
「今じゃ駄目なんでしょうか？」
昼休みにする理由が解らない。
「ちょっと周りの目があるやん。」
何を聞きたいのだろうか？
「そう思うなら、昼休みでいいですよ。」
別にどうでも良かった。
面倒な事は言うとおりにすればいい。
「じゃあ中庭に来てくれるか？」
…中庭？この学校に中庭なんてあったのか。
学校の事なんてほとんど知らなかった。
「わかりました。中庭ですね。」
どこにあるのかわからなかったが。
「じゃ、昼休みな〜〜！！」
元気よく駆けていく音がした。
さて、どうやって中庭まで行こうか。
なにか地図の様な物があれば…。
そこで終了の鐘が鳴った。
まだ休み時間が残っているので時間はある。
今のうちに中庭を探しに行くことにした。
睦革高校は比較的新しい高校なので旧館なんて建物はない。
校舎は一つだけだが、広いのだ。
たしか校舎は円柱の形をしていて5階建てだったな…。
そのうち、２階は体育館で、４階は一年の教室などだから、
残るは１階か３階か５階か…。
まず、１階を調べてこよう。
休み時間の間、１階を歩き回った。
歩き回るといっても円柱型の校舎だから一周回るだけだ。
しかも外側には教室は無いので非常にわかりやすい。
そして始まりの鐘が鳴る頃には戻ってきていた。
１階には職員室と購買と運動部の部室などがあった。
少なくとも、中庭と呼べる場所はなかった。
考えてるうちに授業が始まる。
ジャージを着た先生が黒板の前に立っている。
「お〜し！出席とるぞ！！」
先生はこのクラスの担任だ。
「新木！」
いきなり呼ばれる。
厄介なことに俺の出席番号は１番だった。
「…はい。」
静かに答える。
「井村！」
次々と呼ばれてく。
「ロバート！」
ん？ロバート…外人か？そんな奴クラスにいたのか。
「ん？なんや？」
ついさっき聞いたばかりの関西弁が答える。
そこで思い出す。
『中庭』はどこだろう…？
残るは３階か５階…。最上階に中庭があると思えない。
たしか、３階はニ年生の教室がある階だったか…。
次の休み時間は昼休みだから、どっちの階に行くか決めておこう。

１、確率の高い３階に行くことにする。
２、ないと分かっていても５階に行く。

もちろんこの選択肢は上だろう。
ということで３階に行くことにした。
「ということで、ここでの佐藤の心の中では…」
授業が進んでいた。
しかも国語。
「さ、書いたか？消すぞ！」
考え事をしていたのでもちろん書いてない。
クラスに親しい友人などいないので、今書かなければ非常にまずい。
俺は最終手段を使った。
最終手段とは、
『黒板を暗記してノートに書き写す』
というものだ。
中学の頃の先生の冗談話だったが、実際にやってみると非常に短時間で
効率的に書け、テストの時もふと黒板を思い出して助かったという事も
あった。
この時もギリギリだったが、間に合った。
だが、かなり精神力を使うので「最終手段」なのだ。
俺の場合、使った後にめまいがする。
悪い時は吐き気さえする。
良い子はまねをするべきではないと思う。
そして昼休み。
弁当を早く食べて３階に行った。
思った通り、二年生の教室が全体の半分を占めていた。
ほとんど４階と同じ構造なのだが、なにか違和感を感じる。
階段から左に廊下を進んでみる。
D組…C組…B組…A組…図書室…鉄の扉…コンピュータ室
機械制御室…F組…E組…D組。
どこも変わったところは無いな。
…ん？待てよ。『鉄の扉』！？
俺はすぐに鉄の扉の前に戻る。
別に鍵は掛かってないようだった。
思い切って扉に手をかける。
バチン！！
なにかが弾ける音と同時に手が痺れた。
静電気みたいだったが微妙に違う気がした。
改めて扉に手をかける。
今度は大丈夫だったので勢い良く開ける。
ガッ！バン！！
勢い良すぎて扉が壁に当たる。
床全体に芝生が敷き詰めてあった。
その真中に噴水があり、横のベンチに二人の生徒が座っていた。
「お！来た来た！」
一人の生徒がこっちを見て声をあげる。
「少し遅い…。」
もう一人が静かに言う。
「すいません、場所がわからなくて。」
とりあえず謝る。
さっきの関西弁が手招きしている。
「そんな事よりここ座りや。」
俺は扉を閉めてベンチに座る。
「それで聞きたい事って何ですか？」
いきなり核心を突く質問をした。
「そういえば、自己紹介がまだや。」
軽く流されてしまった。
「わいの事は知ってると思うけど同じクラスのロバート・ブラウンや。
　名前の通りハーフなんや！」
胸を張って自慢げに言う。
「んで、こっちが…」
「ニ年D組の山河　聖よ。」
ロバートが言う前に簡潔に済ませる聖。
よく見れば校章に６と書いてある。
俺の校章は７。第７期の生徒だからだ。
でも、ロバートの校章に６と書いてあるのは何故だろう。
その視線にきがついた聖が言う。
「…留年したのよ。」
なるほど。
ロバートの顔がほんの少し赤くなっていた。
「でも、よく『ここ』がわかったわね。」
聖が俺を見つめて言う。
「ロバートの言う通り『能力者』なの？」
はぁ？『能力者』？何の事だ？
「能力者って…」
「そうやろ、新木クン。君もわいらと同じ『能力』を持ってるんやろ？」
そう言ってロバートは両腕を前に突き出した。
普通の腕だが肘から先が少し歪む。
そして次第に形を変えていく。
右腕は本来の２倍の長さの剣に、左腕は銃みたいな形になった。
…理解できなかった。
腕が変化した…。凄いものを見てしまった。
「どや、これがわいの『能力・ミリタリーモデル』！」
名前まであるのか。
その名の通り、右腕の剣はアーミーナイフのような形をしていた。
体が震えるような感覚がした。体の中まで冷えたようだった。
ふと横を見ると氷があった。
「これがあたしの『能力・氷冷』。空気を冷やして氷にする『能力』」
辺りを見渡すとそこら中に氷が浮いていた。
通りで冷えるわけだ。
「んで、新木クンの能力は？」
え…俺の『能力』？
「あなたにもあるんでしょ。『ここ』に来てるんだから。」
『ここ』に来てるんだから？って言われても…。

『…中庭？この学校に中庭なんてあったのか』
『ほとんど４階と同じ構造なのだが、なにか違和感を感じる』

『ここ』が校舎には存在しない場所で、
能力者しか来ることが出来ないとすれば…。
しかし、俺は『能力』なんてものは持ってない。
「すいません、僕には『能力』が無いんですが…」
下手な嘘よりは、事実を言った方が良い。
「ああ、そうなんか。」
以外にあっさりとした答えが返ってくる。
「でも、素質はあるみたいよ。」
とてつもなく凄い事を言われた気がする。
「そうやな。『ここ』に来れたわけやし。」
二人の間で話は進む。
「素質があるんやったら開花するまで待つ事になるな。」
開花？俺にも『能力』があるのか？
「長い付き合いになりそうね。」
「改めてヨロシクな。」
もう戻れなくなっていた。
「え…あ…いや…その…」
「心配すんなや。わいが言うんや、間違いない。」
元に戻った手で肩をバシバシ叩かれる。
「あんたが言うから心配なんじゃない。」
横から冷たい声が聞こえる。
「そんな言い方無いやろ…。」
大げさにため息をつく。
気づけばもうすぐ始まりの鐘が鳴る時間だ。
「やばっ！急がな！！」
ロバートはあせって俺の手を掴んで駆け出した。
「ほな、行くで。またな〜！」
そのまま中庭を出る。
床が柔らかい芝生から硬いタイルに変わった。
現実に戻ってきた、という感じがした。
「急げ、急げ〜！」
非現実的な存在に引っ張られていたが。
４階にあがり、廊下を走り抜ける。
D組と書かれたプレートの貼ってある扉をくぐった。
と同時に始まりの鐘が鳴る。
「はぁはぁ、間に合ったぁ。」
二人とも肩で息をしている。
教室を見ると誰も居なかった。
あるのは机の上の体操着だけだった。
「うわぁ〜！完全に遅れた〜〜！」
ロバートは大急ぎで着替え始める。
遅れて俺も服を脱いだ。
俺は体育は嫌いだ。
というより体を動かす事が嫌いだった。
程なくして着替えが終わる。
そして、ロバートと共に駆け出した。
グランドにつく頃には５分が過ぎていた。
「ロバート！！…新木！遅れた罰だ！十分間玉拾い！！」
今日の体育はテニスだった。
放課後…
「なぁ、新木クン。」
ロバートが鞄を持ってこっちに来る。
「明日の昼も中庭にな。」
それだけ言うと、走り去っていった。
いつもの日常は壊れ、非現実が始まっていた…。


〜続く〜

○ 次回予告『山河聖』
非現実に引き込まれた俺はさまざまな能力者達と出会う事になる。

「お前…まさか陽？」
俺は驚いた。
小学生の頃の親友が同じ学校で、しかも能力者とは。

ここに足を踏み入れた事は間違いだった。
「ようこそ…新木文将君。」

「あなたとは戦う事になるだろうと思っていたわ。」
「ああ、わいもお前の事がずっときにいらんかったんや！！」
〜あ・と・が・き〜


初めまして、冴木です。
まず始めにごめんなさい。
設定とかは出来ているんですが本文が行き当たりばったりなんで
大変読みにくい文章になっています。
ほかにも、いろいろなものに影響されてるので
見苦しい表現とかも含まれてると思います。
すべてが初めてなもので…。
初めてついでに、これを読んだ感想を書いていただければ幸いです。
他にも、駄目な部分、誤字脱字、物語への質問、キャラクター案
とかも書いていただければ、後の後書きにてお答えします。
でも、プロローグは秘密ですのでよろしくお願いします。

話は変わりますけど次回予告とか書いてありますが、
次号に載るとは限りません。
僕には時間があまりないもので…。
でも！いつかは書きます！その時はまた読んでください。
そういえば、かってに続きとか書いちゃって良かったのかな…（無許可
でもこの物語はかなり長くなる事を予想しています。
今回にはありませんでしたが、戦闘シーンももちろんあります。
これからも頑張って書きますよ！！
冴木翼

Music　鳥の詩／AIR
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