たけしのコラム 本

 中国茶 風雅の裏側

 中国では政治とお茶が密接につながってきた歴史を知ることができます。皇帝への「貢茶」が、中国茶の発展に寄与したものの、それが農民への負荷になり、国を傾ける一因になった点。チョコレートにしても、ゴムにしても工芸作物は政治や歴史の転換の一因として登場しています。

 一般人には手に入らない、希少価値のスーパーブランドになっている茶の本物を飲んだことのある茶商のコメント。
「値段の割りに美味しくなかったな。いかにも老木から(中略)エピソードや値段が始めにあり気のお茶ですからね」「自己催眠をかけて飲むお茶です。(後略)」

 これを受けて筆者は
お茶は五感と理性の両方で味わう嗜好品なのだ。
と書いてます。

 私も、単なるカロリー源や栄養源といった物質的価値だけでなく、リラックスや気分の高揚といった精神的な満足をも味わうという観点から、筆者に同意したいと思います。またそうした思いを馳せることによって、見えない部分を知り、本物を見つける眼を養っていくことが、結果としてよいものを残していくことにつながるのではないでしょうか。

 一方でそうすると、
(前略)膨大な広告費をかけて発信されているのは飲料自体の旨さよりも、「時代の気分」である。(中略)消費者は・・・(中略)・・・イメージを飲んでいる。
 このようなイメージを売っている清涼飲料水メーカーも、イメージで時代を飲むという行為からすれば意味があるのでしょうか。そうではなく、私は自己で判断しているかどうかがポイントであると思います。

 さて、最後に台湾の有機栽培茶のブランドの話が出てきます。野生樹の茶葉からつくった茶を製茶している方の言葉
「(前略)ブランドの名前だけでお茶を購入する人ではなく、心と体の健康のことを考える方に、おわけしたいのです」

 私たちのお茶は全国的にはノーブランドです。でもブランド化させないと産地は生き残れないという話も聞きます。そんな中でのブランドの方向性を考える上で、淡々と事実や聞いた話しを書いている本書は参考になりました。

(2004.2.13)
 中国茶風雅の裏側
スーパーブランドのからくり
平野久美子著

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