2002 「弥生から卯月へ旅行鷹村ヤスもいるでよ」
二十九日(金) 出発 京都
「じゃあ、あのつまみ出されたハマコーはどこへ行ってるんだ?」――まめ先輩
youngさんと旅程を相談したりしていたら、結局IRCにかまけて徹夜。アレ?
まあ、そのまま電車に乗って、電車の中でかなり寝たので結果オーライ。今日は名古屋で13:00集合だけれど、それまでは電車の中で暇暇だったので丁度良いというか寝た。寝倒した。
途中電話でヤス、鷹村ペアと連絡を取ってみると、長野方面から中央本線周りでやってくる彼等とだいたい同じ時刻に名古屋に着くらしい。合流があんまりずれないようで一安心。
名古屋着。前日のyoung時刻表検索のおかげで例年よりかなり早く着いたので、金山できしめんを食べたり素がき屋へ寄ったりしたあと名古屋駅の待ち合わせ場所へ。
着いてみると二人はもう来ていて、youngさんと名古屋駅上の展望台で景色とか楽しんでいるとのこと。あんまり面識ないはずだけどちゃんと合流できたのか。携帯って偉大だ。
「というか俺を差し置いて展望台?」
「じゃあ、名古屋城に行きましょうか」
「そーしよー」
「おう」
野郎……。
それはともかく、youngツーアズ開始ー。
まずは名古屋城。実は生まれて初めてなのでどのへんがゴモラに壊されたのか良くわかりません。
しかし桜が綺麗だった。どうでもいいが城のある町はそれだけでもかなり得をしていると思う。その上桜があるなんて理不尽だ。
名古屋城では戦災前の写真展などを見たり、定番の江戸時代とかの資料を見たり。中は完全に鉄筋の博物館になっていたけれどこれはこれで。色々と見るところがあって面白い。
そして天守閣からの眺めがやはり綺麗だった。高いところから見下ろす桜は素敵だ。
帰りは雨が降ってきてしまったが、城内のお店できしめんを食べたあと、強行軍で駅まで戻る。
その後地下鉄に乗ってどこだかへ行って……。いかん良く覚えてないな。たぶん大須へ行ったんじゃなかったかな。そこでまめ先輩と合流したような記憶がある。
そう。京都在住まめ先輩。「味噌カツが食いたい」という理由で参戦。いいのかそれ。
で、大須で色々と食べたり見たり食べたり見たり。あとやっぱり矢場豚は旨い。旨いけど接客が凄い悪いと思った! たぶんもう行かないと言うか行きたくないけどでも旨い……。
ここでどんなフラグが揃ったのか面白イベントが発生。題して「全然オタクじゃないヤスをオタゲーオンリーのオタショップに連れ込んでみよう」ゲーム。
ルールは簡単。見た目店頭からすでに大判アニメ塗り半裸or全裸ゲーキャラのポスターが貼りまくられた大型のPCゲームショップにヤスを連れ込みます。
入り口そしてエスカレータ脇に延々と続くポスターを見てみるみる口数の少なくなるヤス。エロゲオンリーの売り場に迷い込み、どんどん顔色の悪くなるヤス。
「いや。てゆーかさ」以外の台詞を吐かなくなり、すでにBGMに「毒の音(ワルキューレの冒険)」が鳴り響いております。体力ゲージが凄い勢いで減っていくヤス。
そんなヤスを見ていたらかなり面白かったのだが、本当に動きが鈍くなってきたので一応外へ出た。
その後はリハビリのために「あずまんが大王」を買わせたり、薄い毒で中和を試みたのだがまめ先輩だけは「うちで『オルフィーナ』読めばいいだろう。旧版の」などと。
せせ、先輩! 旧版はダメです! 旧版は。ヤス君には刺激が強すぎます!
黙りがちなヤスを差し置いて沖縄食べ物ショップから地下街。傘を買って雨にも負けない我等名古屋食い倒れ軍youngツアーズ。今度は山本屋でミソ煮込みをたらふく、たらふく食しました。
このへんでさすがに皆お腹はいっぱいになったらしく、加速度的に動きが鈍って来ます。
いや御免ウソ。俺だけ。ヤスはもっと前から動き鈍ってたし、鷹村さんは普通。まめ先輩とyoungさんはむしろ食ったらエンジンかかってきた。つーかこの二人のテンションは似ている……。
そんな変なテンションでボークスを見たり。見たって買えないでしょうが。そんな嵩張るモノ。うっかり買いそうな話はしていたが、どうなんだそれは。
ってゆーか買ってた。あの人。
その後ヤスが、三洋堂書店にて今後の命運を決定することになる『あずまんが大王』一巻を購入。さらば。さらばヤス。
と、無駄に楽しく過ごしていると時間です。我等は京都のまめ邸に泊まるために名古屋駅から電車。youngさんはいつもの通り、名古屋駅に向かう途中の地下鉄の乗り換えの時に「じゃ、また!」とサクッと帰宅。
名残惜しみません。さすが漢。
名古屋駅からは電車に乗ってダラダラと京都入り。さすがに眠くなっていたのか良く覚えていない。着いて、飯はもうイイや、てなもんで就寝。
するはずもなく。
三十日(土) 京都
「やり合ってるんだ」――まめ先輩
今日はだから、まめ先輩ちをスタート地点として神戸をね。
お洒落な町神戸を練り歩く予定だったはずなのですよ! 本来!
それが何ですか! 仮に昨晩漫画を。まめ邸の漫画を読みに読みに読んでいたら寝られなかったかの如く。
皆起きるのが遅すぎます。つーか寝てました! あと漫画読み過ぎ。つーか漫画ありすぎ。あと寝てました!
とにかく昼頃、モソモソと起き出して皆で準備。電車に乗って神戸へレッツラゴー!
でも行きの電車はわりと立ったまま寝ていた。あとわりと遠かった。神戸。
それはともかく着きましたよどこだか。三宮? 知らん。異人館のあるところ。
昼飯を何処で食うかを議論しながらガンガン坂を上っていたら案の定飯屋がなくなったのでなんか観光客向けの店で食事して。俺は蕎麦飯。味は普通。完。神戸名物? これ?
まあともかく、坂です。坂の町。そして異人館。異人館はヤスがとても来たいと言ったのか? ともかくヤスです。異人館。
異人館の写真を撮り、風見鶏の館に入り、写真を撮り、主人ぶってはご満悦のヤス。素敵。ヤス。
俺は異人館は普通に感慨を持つという最低の観光客的な見方をしたあと、むしろ帰り際の阪神・淡路大震災展で多くの感銘を受けてしばらく出てこられなかったりした。ホントに建物が全部潰れてたんだなあ、などと普通に思った。
山を下りて駅の方へ戻り、さて灘は行きたいが時間が半端。かといってお洒落な町へ繰り出す時間もなし、ということで駅の回りをブラブラ回る。これが神戸かぁ。ほぇー。などとお上りさん気分。
だったのに。
変な嗅覚については猟犬並のまめ先輩が。トラブルハンターというかトラブルメークしては自分で叩き潰すというか、そんなまめ先輩が。不思議なスポットを見つけてしまいました。
そのビルは、そう。
とても奇妙なビルだったのです。
・其の一
「てゆーかアニメイトとかが入ってるだけだけどな」
「だからぁーっ! なんで神戸まで来てこんな福家書店の化け物みたいなところに入らなきゃならんのですか!」
「じゃあ出るか」
「いや入りますけどね。てゆーかそうか! 同業他社の偵察ですね!? 仕事に生かそうと!」
「いや全然。こんな品揃え。参考にする気も」
「左様で……」
・其の二
「へぇ。同じビルの中にアニメ系の書店とかがたくさん入ってるんですね」
「そうだな」
「成る程ね。同系列でまとまることによって……」
「やり合ってるわけだな」
「やり合ってるって!? いやホラ客を集めるとかセンタースポット化を狙うとか」
「バッカお前、同業他店舗なんてあっても邪魔くさいだけだろ。そんなの。やり合ってるに決まってるだろうが」
「うわあ。夢がねえええええ」
・其の三
「おい」
「うわあTRPGとかけっこうおいてあっていいいなあとてもほしくな」
「オイ。この店な。奥にデュエルスペースのあるこの店」
「……ハイ」
「明らかに違うよな。奥と入り口で」
「……。」
「臭いが」
「あの、聞こえますよ」
「珍妙な臭いがするよな。オイ」
「あの、聞こえますから、あの……」
あのひと傍若無人すぎ。
てゆーかわかってたけどね! わかってたんだけどね!
まあ、面白スポットでした。ヤスも昨日ほどはダメージ受けなかったようで良かった。
午後も遅くなってからは灘へ寄って試飲を試飲を試飲を試飲を。おかげでわりとヘロヘロヘロヘロ。
一杯気分のご機嫌で夕方灘を出て、大阪に寄ろうかなどと相談しつつも、阪急への乗り換えだかで降りて紀伊国屋で本を買った他は特にどこも行かず京都へ帰る。
戻るともう夜。大関へラーメンを食べにゴー。帰りにいつものなんか怪しいアイテムがたくさんある中古ゲームなど屋を物色。
だからバーチャルボーイは買わないって言ってるジャン! もう!
まめ邸へ戻るとすっかり夜も遅く。しかしここからさらに、近所の神社へ夜桜を見に出かける。
少し寒かったが、そんなことはものともせずに集まってダベっている地元の人が大勢居た。
これは地域コミュニティである。地域コミュニティというのは言うまでもなく、その地域独自のものであって、本来の自分の生活には全く関係のない物である。
そういうものの中へ一人で入っていく、旅行者の楽しさ、異邦人の楽しさを得ることは良くあったが、今回のように異邦と異邦の橋渡しをするまめ先輩のような媒介者だけでなく、ヤスや鷹村さんといった「普段の自分のコミュニティの成員」と共に異邦入りというのはなかなかない体験だった。
そういう意味でこの二日間の旅行は非常に意義が深かったと思う。
などと小難しいことを考えながら帰宅。ほぼ徹夜でファミゲー。
だから俺にファミコンやらせちゃダメだって! と、とと、と、トマラネエ。トマラネエ……。
三十一日(日) 大阪
「うらー! 〆葉ー! 元気だったかー!」――アルス
きっ、起床……。
いやもー実はこの日の出立前後とかほとんど記憶にない。スゲエ眠かった。あとファミコンの音楽がずーっと頭の中流れてた。8ビット。
さて。今日で旅行の終わる鷹村、ヤスと別れて、俺はここから仕切り直しで自分の旅行再会です。いざ、大阪ー。
とりあえず阪急電車で爆睡。
大阪ではネットゲーの方の仲間と会うのです。具体的にはまず陰陽師の人ですね。
というわけで合流。イェーイ。初めて会うけど昨日梅田駅を通ったことと、あと向こうが現地に詳しかったから楽勝さ! 俺? 俺はウロウロしてただけ。
その後順次番長、アルスなどとも合流。番長はいつも通り身長二メートルで口から火を吐いていたのですぐに見つかった。さすがに梅田の混雑の中にいても目立つなあ。
アルスはアルスで普通に立っているだけでもナチュラルに破壊のオーラを撒き散らしているのでこれもすぐにわかる。別に悪気もバイオレンス気もなく、ただライオンが腕を振り下ろせばアリが潰れるという感じか。諸行無常。
この日記はフィクションです。
さて、まずは梅田でお好み焼きと餃子を食べる。酒が入ったので早くもテンションアップの我等。アルスの腕が小刻みに振るえて犠牲者を捜し始めている。危険だ。
そのまま九頭竜慧悟氏をお迎えすべく大阪城まで行くため、最寄り駅まで歩く。わりと歩く。かなり歩く。
歩く途中でゼー六へ寄ろうとして失敗したり、適塾へ行ってみて閉まってたり。ダーメジャーン。
でもお酒が入ってるのでヘッチャラです。ローカルの変なお弁当を売りすぎるコンビになどを横目に歩いて電車に乗って大阪城のとこの駅(名前さえ覚えてない)到着おぃぇー。
待ち合わせ場所で九つの頭のそれぞれから煙草を吸って周囲の注目を一点に集めていた九頭竜慧悟氏(第一声は「どうも」)を加えた一行は大阪城まで歩きます。花見をする人達がわんさ、屋台もあったりの賑やかな休日の風景。それほど混雑してはいなかったけれどたぶん広いからだろう。人はかなり出てました。
大阪城は生まれて初めて行ったのだけれど、駅からかなり遠い。歩く。歩く。途中ビールを飲みながら歩く。歩く。
あと坂もある。登る。登る。これは攻めたら難儀だろうなあ、と思うことしきり。頂上までたどり着いたところで電池が切れたのでたこ焼きなど食べつつ、中は見学せずに反対側へ降りて神社で一休み。
もうかなり夕方の近い時刻だったので、ぐるっと回って駅の方へ戻り、そのまま鶴橋へゴー。焼肉ダー。
といっても焼肉屋さんまではこれまたかなーり歩いた。歩く風景がなんとも。鶴橋のガード下というかアーケードの中を、夕方故かほとんどシャッターの閉まっている通りを黙々と進むのはかなり不思議な雰囲気だった。深夜より別の意味で怖かったかもしれない。赤い夕陽が差し込むガード内。
そこを出てからは普通のゴミゴミした感じの住宅街を抜けていって、焼肉屋到着ー。
わたしはここで生まれて初めてユッケというものを食べました。大変に美味しかった。
他にも生まれた初めて食べた物がたくさんありました。どれも大変美味しかった。
あまりに美味しかったプラスビールを飲み過ぎたので色々と良く覚えておりません。とにかく、非常なるおいしさであったことと、非常なる量を食べたことと、アルスが真っ赤っかで超ご機嫌だったことは良く覚えております。
その後、いい気分でプラプラと夕陽も沈んだ大阪を歩き、陰陽師の人の自宅へ。
あとはダラダラと過ごし、新たなメンバー、最近女子高生と話す機会が多いであろう自堕楽氏(※女子高生と話しているから自堕落なわけではありません。自堕「楽」。自ら堕落して楽しんでいます。つまり高等遊民)を神戸から無理矢理招聘してさらに飲み飲み。てゆーかホントに来るのが偉いよなあ。
アルスは気心の知れた自堕楽氏が来るとさらにテンションアップ。大阪勢のノリノリのやりとりをは見ているだけで楽しく、大変楽しい時間を過ごせた。
が。
終電になるので全員タクシーに放り込んで帰した。
君ら明日のことも考えるヨロシ。あと九頭竜さん、面倒押しつけてスンマセンでした。
その後陰陽師の人に対し「銭湯に入りたい」と主張し、往復二時間ほどかけて銭湯へ。みっくすじゅーちゅも飲んでご満悦。帰宅後もなんか寝るのが勿体なかったりで寝られず。ダラダラと話したり(この期に及んで)ネットゲーをやったりしているうちに、うとうとっとしてみたり。
こうして大阪の夜は過ぎていった。って、たぶんこれ初めてか? 俺、大阪で泊まるのって。
卯月一日(月) 石川
「栄えある第一回目に訪れた街は……。
わあい! 福井県の県庁所在地であるところの福井市です!
うわ〜、またなんて地味で冴えないチョイスなのかしら……。福井て(福井の人ごめんなさい)」――千歳みどり
起床ー。というか寝なかったー。
陰陽師の人がかなりの早朝から出社というのと、俺もかなり早い電車に乗って今日は石川まで行く予定なので、二人とも寝ないでダラダラした末に朝早くに出発。
大変世話になったというのに地下鉄から降り際に「では、また!」と言っただけで別れる。不義理全開。
大阪から新快速に乗って米原へ。そこから北上して福井へ。ここまでの旅程は正直、良く覚えていない。
だって寝てたから。
イヤー。せっかくの旅行中という理由で夜まで騒いで、どうせ一日八時間くらい電車には乗ってるんだから車内で睡眠、という伊東家の裏技。かなり得した気になる!
でも目覚め最悪! 常に腰が痛いし喉は渇くし着く駅着く駅寝起きなので判断力落ちてるし!
ダメです。この旅行はたぶんダメです……。
ともあれ、福井着。ここで乗り換えまで結構時間があったので、探索開始ー。
というか『千歳みどりの日本海ぶらり一人旅』探訪と、言えるのかぁ? これ一応。
一応、フェニックス通りまでは行って、写真も撮ってみた。
……。
い、以上! 終了ー。
なんの収穫もなく駅まで帰るとき、なんかすっごい「これぞ北陸美人!」て感じの女子高生を見たので急に目が覚めた。というか福井、ゴメン。正直それまで半分寝てた。
だからこの旅はダメなんですって! 電車で寝るのは!
その後、北陸本線で西金沢到着まで正しく爆睡。記憶が。記憶が。
さて。
前回の旅行記で述べましたように、実は当初の石川県にやってくる目的だった『痕』探訪につきましては、七尾市を訪れたことで一応の決着が自分なりにはついております。
その石川へ何故また来たのか。
単に気に入ったから。
以上。
というわけで西金沢からまたもや鶴来へー。
年に一回は来ているのでいい加減お馴染みの鶴来です。今回もお宿は石川県立白山青年自然の家様ー。多謝!
午後到着して、とりあえず市役所でスタンプラリーのシートを貰って、それを片手に「かきや」のたこ焼きなど食べながら青年の家へ向かういつものルート。
途中「こいしや」へ寄ってみたが、ない。
建物ごと、ない。
近所の人に聞いてみると、どうやら閉店ではなく改装らしい。なんにせよ今回はこいしやのラーメンは断念せざるを得ないようで、かなりがっかり。旨かったよなあ。ここのラーメン。
青年の家に荷物を置いて、オリエンテーションで時間割などを確認したあと、夕食までの間に近場だけでもスタンプを押してしまおうということでそのへんを回る。ついでにお馴染みの水門へ。
ちょっと色々な場所へ寄りすぎたのか、上まで登ったときには夕方遅くになってしまっていた。日が落ちかけると帰りの道がほとんど見えないという事実に冷や汗。しかもようやく山を降りきると夕食の時間に遅れそうだったので走って帰ったり。この水門来るときは時間取ってこないと大変だなあ。
しかし今回は春先でそれほど藪が茂ってなかったので行き帰りは楽でした、と。
帰って夕食をとってからは平和な時間を満喫しつつ鶴来町史などをダラダラと書き写したりしていたのだが、今回一緒に泊まっているグループがどうも青年団というか青少年育成サークル、或いはジュニアリーダー養成講座らしい。
興味があったので色々とメンバーに話を聞いたりしているうちに、明日の活動に入れて貰えることになった。嬉しい、のだが。鶴来の観光は出来なくなったかなあ。
しかしまあ、滅多にない機会だ。勉強させて貰おう。
夜、学習室のPCを借りてネット接続。出先からメールチェックをしようと思ったら何故か接続できず。やはり公共施設のPCはファイヤーウォールが強いのだろうか。詳細不明。とりあえず諦めて就寝。
二日(火) 富山
「え、甲斐ですー。ンフフフフ……」――甲斐君。「古畑みたいに自己紹介して」のリクエストに対して。
起床。この施設はラジオ体操があるのだが、宿泊者が希望しない場合はパスできるらしい。今回もなかった。
掃除、朝食。そしていよいよ体育館で行われている地域サークルの活動に参加。
指導者の人がいない、ということはないのだろうが、とりあえずこの日の活動は子供達だけで行われていた。小学生から中学生らしく、たぶん高校生はいなかった、と思う。
この十数人の地域リーダー達が、まあもの凄い。俺もジュニアリーダーとかをやっていたのだけれど、当時と比べると雲泥。子供会等で初めて会ったメンバーを、スムースにコミュニケートさせるべき手段を徹底的に叩き込まれた鉄の心の前線部隊、そんな感じ。
「では三人組になってください」とかそんな怠いことは言わない。
パン(手拍子)!
パンパン!
パンパンパン!
「ハイ!」
と。
これは「かけ声をかける前に打った手拍子の人数に別れる」というゲーム。チーム分けがもうゲームになっている! 初対面であまり馴染みのないメンバーでも、強制的に勝負ごとに絡め取って「強制的に仲良くさせる」。強制的にという言い方が悪ければ、いつの間にかでも良い。
そういう技術が随所に仕込まれたミニゲームを、これがまた死ぬほどのバリエーションで持っている。とりあえず俺が見てる前で参加者全員が一回は仕切りになってミニゲームを三十回くらいやったのだが、一つとして同じものがなかった。
この時、仕切りをやる人間を前に呼ぶときに前のミニゲームを仕切った人が「メイド好きのyu2君でーす」みたいな、どうでも良いような簡単な紹介を一言行うのだが、これが実は非常に印象に残る。初対面の人間が「どんな人か」というとっかかりがあって、その人が自己紹介をして、自己紹介にも工夫が凝らしてあって。
その上でミニゲームをして。これは嫌でも仲間意識が高まるし、誰がどんな人間かが自然に頭に入ってくる。
子供は放っておいても異年齢集団で遊んで仲良くものなのだろうが、それには時間がかかるし、なにより今の子供はちょっと引っ込み思案だったり、外遊び、大勢遊びに慣れていない子も多いのでなかなか上手くいかないかもしれない。
それを、徹底的に技術的に後押しする。「効率的で有効なコミュニケーションの形成」という目的のために錬成された地域リーダー達。
ほとんど戦慄したね。これは、地域教育力の希望の光と呼んでも大げさではないのではなかろうか。
レクのあと、解散までにメンバーとちょっと話をさせてもらったが、彼等がまた話がうまい! かなり年齢差がある俺を相手にも、失礼でない程度にポンポン話しかけてくる。ある程度ノリツッコミも入るし、内輪ネタにならない程度に「こいつもオタクなんですよー」みたいなくすぐりも入る。
ハッキリ言って俺の方が喋りが下手だなあと思った。いや、TRPGのGMとかもやっているし、喋り自体が噛んでるとかダメだとかそういうことはないと思うのだけれど、「異年齢の知らない人相手に気さくに話しかける」という見地から見ると、俺はダメダメだなあと痛感。特に年下の人達を相手に、適当にと言うのはとても難しかった。
「大学生さんなんですか」
「いや。大学院生」
「オー」
「あったまいー!」
「いや。普通……」
「でも勉強とか得意なんでしょ?」
「いや。あまり……」
『……。』
榊さんか俺は! 色々と研鑽が足りないと思いましたことよ!
昼前に彼等を送り出し、スタンプラリーの続きをこなしつつ「若竹」でお好みを食べて、市役所でスタンプラリーの景品(ラッキーなことに一番小さいサイズより少し大きめの獅子頭だった)を貰って、思い残すことなく鶴来出立。
今日の目的のもう一つは鶴来町立図書館に立ち寄ることなので、例年より早めに鶴来を出て、西金沢に向かう途中の道法寺駅で北鉄を降り、早速道に迷ったので通りすがりのお婆さんに案内して貰いながら15分ほど歩くと、平らに広がる田地の向こうに総合文化会館「クレイン」が見えた。
町立図書館はかつては鶴来駅の付近にあったのだが、最近このクレインに引っ越したという。その他にも様々な文化施設が揃っているこのクレイン、とにかく大きい。とりあえず図書館だけしか行かなかったけれど、全体ではかなりの規模だった。
図書館では色々と趣味の本を散見していたらアッと言う間に時間が来てしまった。毎度旅先で本を読むというのは損してるのか得してるのか微妙だなあ。と思う。
夕刻、富山に到着。また叔父さんと寿司を食いに行ったり、ダラダラしたり、酒を飲んだり、ダラダラしたり。
ダラダラしながら四月以降の生活についての激励を受けたりした。まあ、ここまで来たら半端はできんわなあ。
三日(水) 山梨
「ありがとうございますダイの大冒険32巻入りましたー!」――ブックオフ甲府店員
起床。叔父さんの家の近くは市場なので、その近くの広い道をしばし散策など。
朝食後、駅まで送って貰って、そこから長い旅が始まった。今日は山梨に宿泊予定なのでまずは北陸本線で直江津へ。直江津から長野へ入って、今度は中央本線で山梨へ向かうという。
長かった! あと腰が痛かった! あと腹減った! 食う時間ないんだもんなあ……。
てなわけで午後に甲府到着。って簡単に言ってるけど八時間くらい電車だったけどね!
甲府ではネットゲーでお世話になっているラピスアイズさんにお会いした。土産に信玄餅を持っていくというバカな人間を親切に家に招いてくれたのであつかましくも着いていき、漫画を見たりダラダラしたり、まるで地元のツレの家に遊びに行ったのと同じように過ごす。初対面なのに。
そしてわざわざ「歓迎多津丘(正気か)」のためにやってきてくださったラピっさんのご友人A君。ハッキリ言ってある日突然知らない人間と対面させられて、ダベりにつきあわされるという試練を越えた貴方は偉大です。
てゆーかダメじゃん俺。
そして時間が来たので普通にお別れ。あと土産に持っていった信玄餅も食べさせて貰ったり。
ダメじゃん俺。
しかし信玄公祭りの話を聞いたり、美味しんぼ山梨編についての感想を聞けたり、大変有意義であった。でも、ネットゲーの話だけは勘弁な! ラピっさん、A君、どうもでしたー。
さて。ダメな足を引きずりつつ、今晩お世話になるK君の家へ到着。毎度風来坊に有り難い歓迎をしていただき、今回も限界まで酒を飲んだので倒れるように就寝。
甲州ワインはただでさえ美味しいが、地元の人が「ぶどう酒」と呼びながら湯飲みで飲んでるとさらに美味しく見えるのは何故だろう。
四日(木) 帰宅
「ま。いいんだけどね」――ひとみ悟空
起床。近くの小学校まで軽く走って、体操だけして帰ってきたら朝食。
うへー。このくらいの運動ではまったくアルコールが抜けていません。参った。
朝食をとりながら今日のスケジュールを確認。近くのワイナリーに連れて行って貰って土産のワインを買って、神社に行って、その後善光寺へ。
甲斐善光寺。生まれて初めての訪問。
普段は混むのだろうけれど、平日なので駐車場も空いていた。規模はそれほど大きくはないが、町中にしては結構広い。そして境内というか敷地内に普通に民家があるのが非常に面白かった。
立派な参門があって、これをくぐると参道があるのだが、その右手に何故か民家があった。
あそこに住むのはどんな気分がするのだろう。とても気になる。
それはともかく、進んでいって参詣。
いやー。これは久々に目の覚めるような体験だった。特に鳴き竜と戒壇巡りは、生きてるうちに一度は体験することをお勧めします。都民だったら山梨は日帰りできるし。是非是非。
善光寺で時間をとりすぎたのかもう午後遅くになってしまっていたが、次の目的地ほったらかしの温泉へ。
ここで温泉に入りながら夕暮れの富士山を見ていると時間の経つもの忘れた。日が沈む直前から日没までの富士山をずーっと見る。温泉に入りながら。
貴重な体験というか、単にボーっとした。なんか格好良く描写できるとテキストサイトっぽくて良いのだろうけれど、ヤメヤメ。インプットオンリー。アウトプットしません。
その後、すっかり日も暮れた山上の温泉でおでんを食いながらK君とポツポツお互いの今後のことなどを話したりして、まさに休息終了充電完了。
甲府盆地を囲む夜の山並みを駆け下りていく車から、町の光の輝きが見える。
あの光の中へ戻っていく。その先には駅があり、線路の先には普段の暮らしが待っている。
この四月から新しい生活が始まる。平均から見れば恐ろしく不安定で、先の全く見えない暮らしではあるけれど、それもまた自分の日常であることに変わりはない。
色々な場所でお世話になった人達へ進路を報告することで、不安な日常へ進む覚悟を持つことが出来た。それを今回の旅行の収穫としよう。誰かが見てくれているから先へ進む勇気が出る。それは依存ということなのかもしれないが、その分俺もいつか誰かの役に立つことで、なんとかチャラに出来たらと思う。
そして電車は八王子へ向かう……。
『――お知らせします。中央本線事故発生により、当電車は大月駅で停車します。
なお、復旧の見込みは立っておりません』
……。
「――あ、ひとみ悟空? 俺俺。多津丘。うん。旅行中なんだけど。
うん。大月でね。電車が止まって。うん。帰れるかわからないというかはい。ええ。
じゃあ高尾まで。うん。ヨロシク!」
私たちは人と人との間で生かされてますっていうかマジゴメン! 一方的に頼りすぎ!
ダメじゃん俺! このオチでいいのか旅行記!