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2002 「さそり型卯月(後編)」


十六日(火)

「友情ってなー放っといても腐るもんじゃねぇ」――火引弾


 決意も新たに四月後半が始まってみたけれど、特に改めて書くこともないのが日記というもの。

 でまあ、一巻がないので書庫に入れるような書き方が出来ないのだけれど、上の台詞は新声社ゲーメストコミックス『さくら頑張る!』二巻より。

 特に力を合わせてなにをするというわけじゃないんだけど、ただなんとなく一緒にいる。ダラダラしてる。

 そういう関係は、非常に落ち着いた人間関係の一形式。例えば友情とか、そういうものとして存在し得ると思う。

 かといってお互いになにもしていないわけじゃない。「その人がそうしてそこに存在している」という事実が、強力に誰かを支えたりする場合もある。「在る」というのは、なにもしていなくても、それだけで強い。などと思った。

 以上とりとめもなく。誰かへ。


十七日(水) バイト

「僕こと俺」――yu2


 アルバイトにて一日終了。

 健全は健全だと思うのだが、他のことがなにもないので日記に書くようなこともない。

 水曜日と言えば朝霧の巫女のアニメが始まるというが、アレはどんなもんなんだろうなあ。

 不安だ。


十八日(木) ゼミ

「まあ、ゆっくりやりましょう」――S先生


 初ゼミ。

 相変わらず緊張しっぱなし。まともなことは話せずに舞い上がって終了。

 いかん。まずこの、S先生の前に出ると「なんか格好いいこと言おうとして空回り」という流れを変えなければ。そのためには地道に本でも読んで引き出し増やしておかないとなあ。

 あと、積み重ねの知識はともかく最近の動向なら情報収集にかける時間の差で勝負になるかもしれない。新聞、ニュース、ネット情報のチェックでバックボーンを作るべきか。

 こうして強制的に教養が形作られていくのだなあ、学生って。などと実感。

 だってなにも相手が面白がるようなことが喋れないと恥ずかしいんだもんよ。


 まめ先輩の日記を見たら、ガッシュや弟子の最新刊が出ているようだ。買わないとだけれど、読む暇が……。


十九日(金) 研究計画書提出〆切 進路報告〆切

「そうだ、馳夫さんの小汚さは見事だと思います 」――浅見君


 いつもお世話になっている外国語教育センターへ茶菓子を持っていったら、またコーヒーを出して貰ってまた借りが増えた。全然精算されない。

 貸し借りって縁がある限り続いてしまうんだよなあ、と思いながら自分が持参した菓子を食べる。これって単にお茶に呼ばれた状態じゃないのか?

 敗北感を抱きつつ撤収。


 今日が多くの書類の〆切で提出は間に合ったのだが、それにしても三年間の研究計画を今立てろってのは無茶だよなあ、と思うことしきり。逆に言うと入学前の時点でなにをどう研究するか目処の立ってるような学生が、学校側としては欲しいのだろうなあとは思う。

 だから入試の時に研究計画出させるのだろうけど、ただ、それをやはり指導教官が添削して改訂したヤツを提出すべきだと思うのだが。

 講義開始一週間では入試の時のものとそうそう変わらないまま提出ということになる。

 なんかいびつだよなあ。


 などと考えるゼミ発表一週間前。


二十日(土) 

「君達、とりあえずそこに正座しなさい。

 よみのよさがわかるまで正座しなさい。

 よみの背中から漂う哀愁に涙がにじむまで正座しなさい」――yu2


 そういえばそろそろ免許の更新だった。行かねばなあ。

 とういか今日行くつもりだったのにすっかり忘れてしまった。

 免許の更新と言えば前回は視力検査の時に。


「右」

「……。」

「あの」

「本当に右ですか?」

「え? あ、じゃあ、左」

「はい結構です」


 という「警察官温情処理」があったので、眼鏡を作り直さないとならんかなあ、とも思う。あれから数年だから、視力落ちてるだろうし。

 って当然眼鏡も作ってないのですけどね。ええ。ダメジャーン。


二十一日(日) 若竹の会

「お金ください」――ジェイムズ=ハーカー(ゲーム中で。初対面の相手に)


 若竹卯月会。

 この春上京してきたマサキ君をメンバーに加え、柴三郎、鷹村さん、yu2に俺という布陣。うわ。統一感無し。

 新参加のマサキ君のキャラの名は「ジェイムズ=ハーカー」。ちょっと腕っ節に自信がある感じで、賭け試合などに出て稼いでいる。推測だが彼のことなので、「元賭け試合の選手という経歴を持った探偵」というキャラ作りのために、今敢えて格闘に挑んでいるのではあるまいか。

 あるいは単に趣味。

 さて。そんなジェイムズの参加している西区の賭け試合の会場を、異能者の素体探しのために襲撃するトワイライト=シュペリール兄弟。

 迎え撃ったり撃たなかったりするPC連。そしてパーティーに加わるジェイムズ。

 最終的に初登場のジェイムズが土央弓に撃たれて異能に覚醒するか? というところまで進めて終了。


 などとTRPGにもセニアンにも興味のない人には全くわからないセッションのあらすじを書き散らすのも、誰かがリプレイを途中で止めているので俺が日記にでも書いておかないと皆が話を忘れるからです。やっかいやっかい!

 責任転嫁? なにそれ美味い?


 さて若竹も終わったし、金曜の発表の準備ダー。


二十二日(月) あずまんが

「劉秋華君。四月二十日の日記ダブってます」――俺


 どうも声が合わない感じがして仕方がないあずまんが。

 俺的には、特におーさかの声はもっとこう、違う感じだったと思うのだが。うまく言えないがもっと違う感じで。

 しかし「じゃあ声優で言うと誰?」と聞かれると困るというか。今のおーさかの声が時にちょっと気持ち甲高く感じることがあるので、もうちょい低い声じゃないのかなあ、と思うことがある、程度。

 あ。あと明らかに違うのはにゃもだ。違う。にゃもは違う。

 どう違うとかこう違うとかは、いい。

 にゃもは違うんだ。


二十三日(火) 

「ザルデシュト2の11111HITを踏む」

「えー、ところで将来の夢はケーキ屋さんと答えることにしていた僕ですが」

「本気メイド本気小説」をリクエストしてやった」

「色々事情がありまして、進路を変更します」

「嗚呼、楽しみだなあ。」

「もう地蔵になる」――yu2とヲベロンの捏造日記会話。


 記念HITかあ。

 余所の記念HIT絡みのネタを煽るのは楽しいが、いざ自分の足許を見ると暗澹とした思いに陥る。

 リクエストって期待されてる、ってことをヒシヒシ感じるぶん、プレッシャだよねえ。

 そういえばうちもそろそろ六万HITが近いし、なにか企画を考えないといけないのだろうけれど。これプラスリクエストも来たとすると一体どうすればよいのだろう。

 とりあえず不良債権を地道に処理するのが一番、と理屈ではわかるが、今思い出したが俺、そういえば相互リンク先にもなんか文章送るとか豪語してたっけなあ。昔。

 ヤバイ。ヤバイ。負債ばかりが。


二十四日(水) バイト

「多津丘君はどうやってパソコンとか使えるようになったの?」――K先生。いや、理由はちょっと……。


 ナツメハルオの『サプリメン』がわりとお気に入りなのですが。しかしマガジンスペシャルというのはどうなんだ俺。あと最近ではオベロンの推していた『かかし長屋』が読みたくて仕方ないって並べるな半村良を。

 しかしこの上記のナツメ先生のサイト、いったいどこにメインコンテンツがあるのかまるで不明です。てゆーか公式サイトここじゃないんじゃないのか? 不明。不明。

 誰か情報お持ちの方教えてプリーズください。


二十五日(木) ゼミ

「パソコンでないと遊べないゲームが好きだったんで死ぬ気で覚えました」――って言ってるジャン俺。


 もちろん「同級生」ですよ? 田中美沙最高!

 という掴みで皆をヒかせてからなにを語ろうというのだ。なにを語っても意味を持ちはしない。

 よって本日の日記はこれまで。田中美沙最高!


 決してゼミでめっさ凹んだので沈降しているわけではありません。


 あ。明日の発表の準備しないと……。


二十六日(金) ゼミ バイト 様々書類〆切

「多津丘君がこの本になにが書いてあるか調べました、ってのは良くわかったかな」――Tさん


 ぎゃあああああああ。

 「調べ発表」だよ俺! この年になって「この本にはどんなことが書いてあるか調べましたー」だって!

 しーんーだー。

 死。


 一番下っ端で当然のように一番手になって新学期最初の発表なんだからまあこんなもんだよねと。

 言って自分を慰める余裕すらなし。

 時間があればなあと言うなら時間を作れ俺。以上。


二十七日(土) マサキ宅訪問

「寒い。寒い」――オベロン


 発表の傷癒えず。てゆーか傷持つなそんなことで。

 まあ、やさぐれていた私を救う天使のような上京者マサキ君が「我が家に訪問することを許す許す許するするするすすすすす……」と言ってくれたので遊びに行きました。川崎へ。

 川崎といっても広いので良くわかりませんが、まあ概ね横浜線でいいんだろ? というアバウト加減。出がけにいきなり学校に行く用事が出来て俺だけ遅れて合流。そんなマサキ君宅訪問。

 今日の訪問メンバーは俺、yu2オベロン。オベロン君は集合場所に景気づけのためにビール飲みながら現れた俺に対し「あり得ネエ。あり得ネエ」と連発する失礼さを発揮。プチ殺しリスト更新です。

 しかも本人はマサキ邸でなんだか強い酒を飲んだら「寒い。寒い」と連発しながら寝たり、トイレへ行って吐いたり。世の中に文句を付けてはうんちくを語ったり。

 あ。こいつ最近やなことあったな。

 と思うに十分な素敵スタイルでした。あと俺が合流前にビール飲んでたのも発表で痛い目に遭ったからです。

 参加者の五割が心に傷を負ったお宅訪問。マサキ君の命はまさに風前の灯火でしたが、yu2がわりと冷静だったことと、「絶体絶命都市」が思いの外面白くて俺が悪さをする余裕がなかったことから、なんとか無事済んだ模様。

 ありがとう。ありがとうマサキ君。うるさくしてごめんなさい。あとまた遊びに寄らしてね。迷惑でも行く。


「さて。そんなわけでお宅訪問無事終了したわけですが」

「終電過ぎてるね」

「いや。あり得ないでしょう。あり得ないでしょうそれ」

「良い感じのお宅だったよね」

「片付いてた」

「いや逃避してないで。僕らどうするんですか。これから」

「うるさいなあ川崎市民。お前この辺詳しいんだからアイディア出せよ!」

「そうだね」

「じゃあ川崎まで歩いて、映画館でオールしましょう」

「出た。サブカル」

「サブカル」

「置いていきます」

『待ってー』


 川崎のゲーセンで閉店間際にカプヌケ2をちょっとやったら、かなり上手いギース使いの人がPグル相手の戦い方がわからずオロオロしていた。戦っていて面白かった。

 その後映画に難癖をつけて飲み屋へ。和民で始発まで粘って帰宅。俺だけの感想かも知れないが、非常に有意義に朝までダラダラ出来た。特に本気メイド本気小説について突っ込んだときに、二人の頭の中の物語装置のようなものが覗けたのが収穫。

 「ゴールデンウィーク中にはサイト更新するから奢ってー」と言ってみたらホントに奢られた。「言質を取りましたよ。貸しを作りましたよ」とニヤニヤするオベロンを前に冷静を装いつつ、内心冷や汗。本当に日記を更新するか、或いはなにか書かざるを得なくなってしまった。

 どうしよう。


二十八日(日) 

「ええとね。違反がありましたんで。ここでは更新できません」――警察


 あ。

 よく考えたら昨日奢らせたのは二人とも年下じゃネェか! シット! 俺、死ね!

 そして今日こそ免許更新にゴー。高尾警察署到着ー。

 サクッと更新して帰ろう! 懸念の視力検査も死ぬ気で見てたら意外なほどあっさり終了。記憶ではもう一段階難しいのをやらされる気がしていたのだが、なんだ。拍子抜け。

 しかしアクシデント! なんか無事故無違反の人以外は、府中の自動車なんとか所まで行かないとダメだったらしい! 結局視力検査だけやって今日はお終い!

 って、俺誕生日明日なんだけど大丈夫なんだろうか。と急に青ざめたが、誕生日が祝日とかだと、その翌日まで大丈夫だか、そういう規定があるそうで。あ。ウロだから信用するなよ。日記読んでる人は鵜呑みにせずちゃんと調べること。

 とにかく、30日にもう一回だけ、最後のチャンスが与えられた。アブネー。

 教訓。免許更新はお早めに。あと違反するな。メンドイから。


二十九日(月) 誕生日

「♪はーっぴばーすでーつーゆー……(※最後まで歌う)」――母上&妹子


 27歳ですよ。

 27歳。

 27歳まで学生やってるとは、思ってなかったなあ。小学生の時とか。

 27なんて絶対結婚して子供いると思ってただろうなあ。小学生の俺、スマン。

 中学生の俺。いいからそのままラグビーだけやってろ。ファンロードとか読むな。そこで間違ったんだ。色々。

 高校生の俺。もう趣味を変えるのは無理。諦めろ。

 大学生の俺。せめて就職を……。

 修士の俺。論文に力を入れすぎるからそんなことに。


 ウワー。こうして思い返すと、人生って当たり前のように連続してるなあ。あの時の俺がいて、あの時ああだったから今こうなってると、手に取るようにわかる。

 ってことは、今こういう俺がいることも運命だな。そう考えるともうどうしようもない。

 そんな悟りすましたフリの誕生日。


三十日(火) 免許更新

「気がついてなかったんだから違うんだって! 習慣、いやホラ未必の故意!

 それも違う故意じゃない! うっかりだよ! わざとだよ!」――俺


「ただいまー」

「お帰りー。お兄ちゃん免許更新してきちったー」

「あ。ホントだー。お兄ちゃんさあ」

「ん?」

「誕生日昨日だから、免許失効してたのに、どうやって府中まで行ったの?」


 ……。


「歩いっ、で、電車」

「おかあさーん。法律破りがいるー」


 ちゃ。

 ちゃうねん。


 今日ほど彼女の気持ちがわかった日はない。


 四月が終わる。連休の中、新学期はじめの月が終わる。

 この連休が終わるまでに日記を更新できるのか俺。


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