2002 「調査旅行」
十七日(日) 若竹の会 調査旅行出発
「主人を遮るなんて、とんでもない」――NPCメイドに対する厳しい言葉
今日は若竹。メンバーは俺、柴三郎、鷹村さん、ヲベロン、yu2。
前々から暖めていた、「凄い召喚中を呼び出す力をもった只のオタク」という設定を生かして頑張ろうと思ったが、なんかあんまりウケなかった。一発ネタに頼っちゃダメということだろうか。残念。
ライトノベルだとこういう敵に対しては厳しいツッコミがあったりするのが定番なのだが、パーティーリーダーが柴三郎だったこともあり、終始淡々進行。テコ入れのために登場させた「ダメオタクに仕えるメイド」も、専門家からダメ出しがあってアッと言う間に撃沈。
メイド道、深い。よく勉強していない要素をイメージ優先で使ってしまった典型的な失敗には反省。
若竹後は忙しく、旅行の準備をして夜行に飛び乗る。明日の夕方には倉敷に集合。
その前にどこに寄ろうか。実はまだ良く決めていないのでした。
十八日(月) 調査旅行初日
「はい高松。行ってらっしゃい」――駅員の人
夜行で寝て、その後も寝て、なんとなく大阪神戸は通り過ぎてしまった。
戻るのもなんだし、今日のメインは倉敷で夕方にネットゲーの方の知り合いと会うことなのでー。
頭がハッキリしてきた頃乗っていた電車の終着、岡山までまず到着。
ここまで来れば倉敷まではヒョイだし。いっそ現地まで行って荷物を降ろしてしまおうかと思ったのだが、やはり高松でうどんが食べたいじゃあありませんか。
そんなわけで往復切符を買って高松へゴー。
昼過ぎ頃に到着。なんだかずいぶん駅の感じが変わっている。
高松にはこれまでも何度か来ているのだが、その時とは違うところが出口になっている。完全に駅のイメージが変わった。しかも出口が南だったのが東になってるし。前の駅舎は壊したのかなと思っていたら。
ああっ!?
高松駅なのに(失敬)出口のすぐ側にコンビニがあるっ!?
信じられない。前はコンビニまで歩いて五分近くかかったような覚えがあるのに。見えるほど近くにっ!?
しかもなんかちょっととぼけた感じの鬼の象とかもあるし。違う。高松は違う。
精神的ダメージを受けながら(なんでだよ)兵庫町へ。とにかくうどんを食べる。
セルフで食べる。さぬき一番で食べる。ちょっとそのへんをブラブラ。またさぬき一番で食べる。おなじ店カヨ。だって旨いんだもの。
五時には倉敷で待ち合わせなので、三時頃には高松を出なければならない。あと一時間……。
琴電そごう、は、もうないんだった。ともかくそっちのデパートは諦めて、ネットゲーの方の知り合い(ユウさん多謝)が教えてくれた学生御用達のうどん屋へ行こうと思ったのだが……。
遠っ!
途中まで歩いたところで力尽きる。つーか駅に戻れなくなりそうだったので。断念。
今度はもうちょっと計画を立ててから来よう、というかいくらなんでももうちょっと時間の取れるときに来よう。
ま。うどんが食べられたので良し。では倉敷へー。
倉敷ではちょっと迷ったもののホテルを見つけてチェックインし、荷物を置くと折り返して待ち合わせ場所になっている駅へ戻る。まだ調査班が誰も来ていなかったけれど、作業開始が明日からだから夜頃来るのかも知れない。
さて。改めて倉敷駅改札で待ち合わせ。駅ビルの本屋を覗いたり、駅の北っかわのなんか偉くデカイ公園を見たりしていると待ち人来る。
本日のゲストは、ラヴですな人とサラダの国でトマトな人。いやむしろ俺の方がゲストだけど。
とりあえず倉敷まで来て最初に連れて行って貰ったところは、ネットカフェ! 何故ってネットゲーやらなきゃならないからね! 倉敷でも! サイテイダ!
その後はゲーセン! バーチャロンフォース見にね! サイテイダ!
こんなダメ依頼を快く聞いてくれる二人はとてもいい人だと思った。初対面なのに駅から2キロくらい離れた場所まで連れて行かされてもへいちゃらデスよ。しかもそこまで歩いた上で駅の方に戻るしね!
で、飲み屋でダラダラと。オフ会ですか。まったくオフ会というイメージでないというか単に飲んだだけというイメージ。「倉敷ネットゲーの愚痴を言う会」と看板を掛けた方が正しかった。
愚痴の他の合い言葉は電撃文庫の『ミッシング』。あと友達が辻斬り。詳しい内容は伏せ伏せ。
あとは倉敷のことをダラダラと聞き続ける俺。倉敷出身のセンチのヒロインなんざいねっつの。でもすっかり習い性なので舞台設定(嫌な言葉)を確認しておかないとスッキリしないのでした。
なんかずいぶん飲み食いしたあと、泊まるホテルの横でさらに話し込んだ。かなり遅くまで。
倉敷にしては寒いという気候だし、ハッキリ言うとお二人は帰る電車がもうなかったと思うのだが、とにかくむやみに喋っていた記憶アリ。つーか喫茶店にでも入るべきだったけどサテン開いてないやあんな時間。
初対面の人間に深夜まで表でダベりにつき合わされても怒らなかったお二人は勲章とかを貰うべきだと思った。ありがとう倉敷ネットゲーの愚痴を言う会。通称倉ゲー。
どうやって帰るかもわからない二人を見送り、俺だけ宿で就寝!
明日から仕事だというのに絶対に間違った過ごし方の初日終了。
十九日(火)
「ハッピー。学生さんの邪魔しちゃダメでしょ」――もうちょっと強く言ってください。
旅先は緊張感もあってか身体が軽い。昨日夜まで飲んでたわりに六時起床。
宿舎の周りをぶらぶら散歩などしたりして目が覚めるのを待つが、今日も寒い、寒い。
倉敷ってこんなに寒かったのかと思うほどの気候。太陽も出たり引っ込んだりで雲行きは怪しい。
朝食の食堂で集合し軽くうち合わせ。その後一年ぶりの調査の場所へ。
オフィスで先方に挨拶し、昨年以来の活動を報告。先方もこの一年の間に新たな資料を見つけておいてくださり、幸先良くスタート。
何処で何をしたかというのは知らない人が聞いても全然面白くない事柄なので記述は避けるが、とにかく倉の中を調査するというのは寒い! 寒い! 日が当たらないので非常に寒い。
持ち込んだ白熱電灯の近くで暖をとる様はまるで虫のような私たち。これだけ寒いと手洗いに行く回数も増えるのだが……。
『がしっ』
(出たぁああああーっ!?)
「あらあらハッピー、ダメですよ」
そう。この倉のある古い屋敷には、恐るべきデモニックアニマルが住み着いている。
ケルベロス、ヘルハウンド。歴史の中で様々な名前で呼ばれる、毛が生えて吠える生物。
ヤツの名は……。
I-NU。
コリーじゃないかなー、とは思うんだけど、良くワカラン。躾がいいのかまったく吠えない。故に俺のレーダーにかからない。
無言でとことこ近寄り、気がつくと前足二本で人間の片足をロックする。「甘えてるんだねー」などと調査班で好評だが。
違うね。
アレは要するにベアハッグだ。アキレス腱なり膝裏の靱帯なりを狙っているに決まっている。
目を合わせれば「よう。ちょっとでもおかしな動きをしてみな? お前の関節をズタズタにしてやるぜ?」と言っているのが聞こえてきそうだ。オソルベシI-NU。
などという被害妄想にかられながら夕方作業終了。寒いし暗いしでこれ以降は仕事になりません。
撤収後皆で夕食に出るまで一時間ほど時間があるので、ダッシュでネットカフェに行ってネットゲーの様子を見て胃を痛くしてダッシュで帰還。揉めてたんだこの頃。
その後皆でせっかく旅先ということもあって飲み屋に繰り出し楽しい飲み会の中。
俺一人だけネトゲの揉め事から来る嫌な酒を飲んで凹み不審がられ。
帰って寝る。
二十日(水)
「子供はバイキングを好む」――食キングの人。って俺は子供か。
ホテルの朝食なんてバカにしていたけれど、バイキングにちゃんと白米や味噌汁があるのでそんなに悪くない。
いろんなものをザクザク食べる楽しみもあってって子供か俺は。しかし学割が利くので食事含めたかなり素敵な環境で、前回倉敷来たときに泊まったビジネスホテルより安い。世の中って調べた人の勝ちだなあと思ったり。見つけてきてくれたN坂さんに大感謝。
さて本日もデモニックアニマルの待ち伏せと攻囲と殲滅を受けながら暗く冷たい倉の中を這いずり回る一日。
でも大変貴重な資料の類に囲まれて幸せ。日暮れ時に寒くて手が動かないけどへっちゃらです。
へっちゃらじゃないのはネットゲーですね。今日も作業終了から夕食までの短い時間にダッシュで漫画喫茶へ行っては凹んで帰ってくる。でもダッシュ。だんだん惨めになってきた旅行中のネトゲ。
今日は初日に皆で行った居酒屋に先生方と共に繰り出し、飲み食い飲み食い。
飲み食い飲み食い。
明らかにストレスから来る大食いですか。
飲み食い。
二十一日(木)
「ハッピー! サヨナラしなさい!」――お手伝いさん余計なことを『がしっ』あああああああああ
何故だ。
全然体調が悪くならない。奇跡の倉敷効果? あんなに飲み食いしてるのに。不思議。
今日はとても珍しい経験をしたのだけれど、余程詳しく書かないと伝わらない上に書くと長くなって多分面白くないので割愛。無理して簡単に言うと作業中に頭の上から段ボールが落ちてきてニアミス。完。
デモニックアニマルの攻撃も最終日と言うことかかなり厳しかった。後一日長かったら殺られていただろう。
基本的に作業は今日で終了だったのだけれど、思っていた以上に成果が出たようでまずは良かった。
予定していた調査場所を全て回ったあとでも、精力的なリーダーが今回の資料収集中に見つけた資料から次の調査地を割り出していたり。脱帽。というか俺がやはり学生気分なのだろう。
調査旅行は貪欲に。一つ覚えた。
そして明日が撤収日なのだがその前に一カ所寄る段取りをつけて解散。
この日も漫画喫茶の帰りに凹み。
さて。毎度の飲みから帰ってきて、今日が倉敷最後の夜だというので。
もう日付変更間際ですが、ふらっと散歩に出ました。
小雨の降るあまり良くないコンディションの中、駅の方へ行ってみたり神社の方へ行ってみたり。
倉敷の駅近くにある神社は小高い丘の上に建っていて、あたりが見下ろせる。夜は夜景が綺麗だ。
そんな夜の神社の敷地で、トレーニングのためだろうか。ジャージ上下のような格好をしてシャドーボクシング風の運動を繰り返している人がいた。
ビール片手にボーっとそれを見ていたら。
日付が倉敷滞在最後の日に変わっていた。
とりあえずネットゲーを辞めようと。そう思って帰った。
夜の倉敷はとても静かだった。
辻斬りも出ないような、闇。
そういえばラヴですの人達のお友達は辻斬りが趣味だとか(※間違って覚えています)言ってたけどどーでもいーが自分の全く与り知らぬところで「辻斬り」という評判を立てられるのはどうか。いや、俺もやってるけど。
その点を問いただすべくラヴですの人に電話をかけたが今日は飲み会とかで合流失敗。残念!
さらばラヴですの人の友達! とりあえず俺の中では、君、辻斬り決定!
二十二日(金) 調査旅行終了
「多津丘君はまだ明日の試験があるでしょう」――K松先生それを言いますか
変なテンションで寝てしまったので変な気分続行の最終日。
起床から午後一時台の新幹線に飛び乗って帰路に就くまでの間に、朝食から荷造りからアイビースクェアの倉庫漁りから昼食から土産買いから新幹線の切符当日買いから……。
とにかくこの日の午前中は最終日ということもあり詰め込めるだけの予定を詰め込んだ感があり、なにをどうやって時間内に終わらせたのか今でも良く覚えていない。美観地区で最後に皆でうどん食ってるときには全員ぐったりを通り越してなんか悟っていた感じだけ覚えている。
ともあれ、岡山発の新幹線に滑り込んでなんとかセーフ。さらば。さらば倉敷。また会う日まで。
また会うときは単に観光で来たい。もう是非。
帰りの新幹線の中では、全員さすがにぐったり就寝。強行軍だったしなあとこの五日間の旅行を思い浮かべる。
とにかく毎日一カ所、必殺の心意気で資料調査。毎晩そのストレスを消すべく飲み。そして俺だけ特別メニューとしては院試の勉強とネットゲー……。
「頭がおかしかった」とにかくこれだけは言える。
しかし実際、ある意味人生を決めるとさえ言える試験の本当に前日まで、倉敷にバイトに行ってるというのは我ながらどういうことなのだろうか。今までにも人生のピンチは何回かあった気はするが、中でもかなりの押し迫った状況にあるのではないだろうか。だって明日だぜ? 明日。明日の試験に向けてなにをどうやったか俺。
そして「バタバタしても仕方がない」という悟りですらなく、俺も単に旅行の疲れで眠りに落ちてしまった。新横浜で解散し、横浜線での帰宅途中でまた睡眠。
なんとか家まで辿り着いてまた睡眠。
……。
明日の試験はどうなるのだ。俺。
そんな調査旅行終了。