2001 「弥生らしく(前編)」
三日(土)
「あ。明日じゃん」
〆切ブッチ三十一日目までくるとある意味開き直り。
気がついていたと言えばいたことなのですけれど。居合いの審査が明日ですね。
……昨日まで旅行に行ってたのに。
そんなわけで今日は死にものぐるいの付け焼き刃でした。明日ってなによ明日って!
四日(日) 居合道三段審査
「付け焼き刃総決算」
〆切ブッチ三十二日目より審査ぁ!
昨日根を詰めすぎたのか寝坊しましたが、審査は初段、二段、三段の順で行われるので昼前にいつものごとく綾瀬の東京武道館に着くと、まだ三段審査のエントリーすら始まっていませんでした。
今回は初段を受ける同門の方が二名いらしたのですが、このお二人はすでに審査突破済み。まずはお祝いを申し述べたあと、一緒に三段を受ける人と一緒に練習。
道場で審査の合間の自由練習時間以外では刀を抜いてはいけないので、廊下とか人のいないところで格好だけやっているのは間抜けといえば間抜けですが、こちとら必死です。必殺です。秒殺です。他にやることもないしなあ。
もーわりと破れかぶれになったころ審査開始。自分の順番まで他の人たちのを見て待つわけですが、五人ずつ審査を受けるこの組が、技前にばらつきがあると見ていてもひどく目立つ。上手くて目立つのは良いけれど、悪目立ちだけはしたくないなあ、と考えると気が重い。
大学の居合道部などで一緒に来ている人たちは技も間も揃えてくるので、まるで演舞のようにも見える。そういう中に一般の道場から来ている人が入るとどーしても目立つのだなあ。
で、俺の番。俺以外全員道着揃い。ヤラレター。もう気分はグランドブルー。
まーなんとか、失敗しない程度にはやり遂げて戻ったけれど、やはり他の四人は五本の技の組み合わせもタイミングもきっちり揃えていたので俺だけ浮いてたなあ、という感は拭えず。いいなあ、仲間。合わせられるだろうし。
結果はなんとか合格してました。二月はバタバタしててほとんど練習していなかったのに、なんとかなるものだなあ。
帰りがけにせっかく都内まで来たので、御ふらんすさんにこないだ教えてもらった神田のあたりのお店に行こうと決めて歩き回るが、日曜のせいでほとんどの店が閉まってしまっている。うなぎの店に是非行きたかったのだけれど、涙をのんで断念。うどんの店も行きたかったぁ。
代わりにガード下の親子丼屋が開いていたのでそこへ。ここは旨かったぁ。普段は混んでてなかなか入れないようだけれど、また来よう。必ず来ようと決意。御ふらんすさんにはまたどっか店を教えて貰おう。ウヒヒ。
五日(月) K
「あ。雛祭り終わってるし」
〆切ブッチ三十三日目が重い。
旅行後で審査後でイベント系が一息ついたので、またもや家事雑務。ぬか床がわりと壊滅的なのが泣ける。やっぱ毎日手を入れないとダメなんだなぁ。
夜、道場へ昨日のことを言われるだろうなあ、と下を向きながら行くと意外にもH口先生から「あの五人の中では抜群に上手かった」と誉められてしまった。年に一回だぞこんなことは。
思うに、半ばやけっぱちでやったことで、緊張せずにやれたのが良かったのかもしれない。そういえば一級の審査ではガチガチに緊張して袈裟切りの納刀の時逆に入れたっけなあ。あんなことしてたの俺くらいだし。
今回の審査ではそういえば、顔面当ての時に鞘を落としてしまった人がいたけれど、あの人もすぐに拾って差して、続きをやっていたら受かったものな。やはり平常心というか、動じない心は大切なのだろう。
驚・恐・疑・惑。この四つをなんとかできるようにするのが、武術の鍛錬の目標の一つだという。なかなか難しいだろうけれど、覚えるだけ覚えておこうかと思う。
六日(火)
「急がば地形調査から」
〆切ブッチ三十四日目で悪いかチキショー。
なんか突然焦りだしたので、いやもう充分遅いのだろうけれど、今更ながらレポートのために基礎文献読み漁り週間開始。
本当は専攻外の講義のレポートなど、そんなに手間をかけてやるようなものではないのだろうけれど、もはやこの道からしかゴールが見えない気がする。なんとかしてくれ俺。なんとかしてくれ俺。
七日(水)
「知恵熱月間」
〆切ブッチ三十四日目は多少なりとも進行中。
前にも書いたけれどこの辺の日記は五月の連休明けに思い出しで書いてます。
で、この一週間くらいはとにかく「勉強してた」以外の具体的なことをほとんど覚えてないのですね。
八日(木)
「魔球とか投げてえ」
〆切ブッチ三十五日目も状況同じく。
とりあえず提出のために封筒を買ってきてみたり。型を作ってあてはめないといけないような気分になる。有効か。どうか。
九日(金)
「弱火で五十時間」
〆切ブッチ三十六日目だとよ。
ハッキリ言うと記憶にはないのだけれど、たぶんこのくらいの時期に何度かhitomiツアーズで夜にどっかに連れてってもらったりはしてるはずなんだよな。それはずいぶん息抜きになって助かっていた。
あと、昼間に深大寺蕎麦を食べに行ったり(未遂)、なんかどっかへ出かけて都内だかへ行ったような気もするんだが、どうだったかなあ。
とにかくこの時期くらいから集中的に煮詰まってきてました。ハイ。
十日(土) K
「煮詰まるどころか空焚きです」
〆切ブッチ三十七日目。四十日行っちゃうって。
土曜は道場があるのでまだしも気が紛れる。
もーホントにそれだけ。基礎文献もなにも読んでも読んでも「へえ」で終わってしまって中からなにも出てこない。どういうことなんだ。
十一日(日)
「空焚きどころか鋳潰しです」
〆切ブッチ三十八日目開始。
ダメ。もうこれ以上加熱しても薬缶が蒸発する。ダメ。
日記も掲示板も止まりきってしまってネット上では生死不明だし。しっかりしてくれ俺。
とか言いながらネットゲーだけは継続中、というかこれに力を注がざるを得なくなって時間を食われまくっているわけですが。頭が痛い世の中だ。心がイタい世の中だ。
十二日(月)
「KOCの話」
〆切ブッチ三十九日は縁起悪そう。
ネットゲーといえばゲームでして、「ゲームは楽しく」を標榜する人間としては楽しく遊ぶために努力を怠らないわけですよ。対戦格ゲーの経験が長い身としては、勝敗を競う形のゲームで起きうる人間同士のトラブルというヤツには高校時代でたいてい遭遇しておりますし、楽しく遊ばないことには結局自分が損だ、ということは身に凍みてわかってますし。
そういう辛い、痛みを伴った経験をしていない人たちと一緒にやっていくのが、これが思ったよりも八割り増しで辛い。辛い。辛い。
あの人達のことをバカだとか思慮が足りないとか想像力が欠如しているとか言ってはいけないのだろうけれど、単に経験が足りないだけなのだから温かく見守らなければならないのだろうけれど。
俺も聖人君子じゃないからなあ。同じ目線で語れる人がほとんどいない、という状況はあまりあまり面白くないよ。
で、そんなKOCで責任者とかやってるわけです。まー傲慢を承知で言えば、せっかく楽しく遊べる世界を自分で立てたカベで制限してわざわざつまらなく遊んでいる人たちに、もっと肩の力を抜いて単なるゲームとして遊べば気楽で楽しいよ、ということを伝えたくて。
で、そういうことを口で言うのは苦手なので、今までみたいに気楽な立場でもないし、責任者であるからには不言実行で、行動で示そうと思って頑張ってみたわけですが。
いやあ。伝わらんね。
良く妹子が、俺に何故友人がいるのかまるで理解できないと言うのだけれど、確かに今ままで、普段の行動や発言から根っこのところを察してくれる友人達に恵まれてきたのだなあ、と痛感。
ありがたいことです。逆境にあることで今までの幸せが見えてしまったよ。はふ。
問題は全然解決しないけどね。
十三日(火) バイト
「休み中は学食がほとんど閉まっているとわ」
〆切ブッチ四十日の区切り。
気分転換をかねて、あとずーと停止している作業状況に青ざめつつ、本日はガッコへ行って一日バイトをしてきました。
仕事って、やらないと溜まるのだね。
段々四方八方が塞がりつつある。やばいんじゃないだろうか。これは。
十四日(水)
「KOCの話、2」
〆切ブッチ四十一日目かぁ。
一昨日の続きになるけれど。
我々が今のように、他人のプレイスタイルには可能な限り干渉を避けつつ、自分らは一本筋の通った遊び方でゲームにアプローチし、その遊び方によって他者から敬意を受け、かつまたゲーム全体の遊び方をより良きコミュニケーションへ変えていきたい、という考え方に至るまでには相当の紆余曲折があったことは確かである。
例えば対戦格ゲーであれば、強いキャラを使うヤツ、投げハメを使うヤツ、待ちを使うヤツ、体力勝ちを狙うヤツ、そういう輩を非難し、蔑み、罵倒して場合によってはリアルファイトに繋がるようなことが確かにあった。
自分が投げハメをせず、キャラ勝ちを理由にキャラ選択をせず、果敢に攻め、また相手が実力を引き出すように戦う、ということは誇るに足る戦い方であるとは思う。そういう遊び方で対戦ゲームに参画することを「楽しい」と考え、例え負けても楽しむことが出来ることは、精神衛生上も良いし、素晴らしいことだと思う。
だが、だからといってそれを他人に押しつけてはいけない。自分のプレイスタイルを他人に押しつけるということは、他人からもそのプレイスタイルを押しつけられることを表している。これはゲームに限らずだが、自分のやり方にどんなに自信と自負を持っていても、それを他人に押しつけるということは、他人からも同じだけのことをされても文句を言ってはならない、ということである。
これは常識だと思うのだが、意外にわかっていない自称「良識派」が多くて辟易する。
例えば俺はスト2でザンギを使っているわけで、足の遅い投げキャラの悲哀を十二分に味わってきている。特に昔はガイルやサガットで乱入してきて、待ちやハメを使ってまで勝とうとする輩のことを大嫌いだったわけですが。
かーなり練習してそういう人たちともまあなんとか、五分くらいに戦えるようになった頃余裕が出てきて、こういう風に考えるようになった。「でも、やっちゃいけないとは決まってないよなあ」と。
ゲームだからね。バランスが本当に悪くて嫌なら遊ばなければいいんだ。実際、俺はその後SNKのゲームとかで「相手の全力を引き出すように」戦おうとすると詰んでしまって勝負にならない、攻め攻めが超有利な対戦ゲーには手を出していない。遊ぶ遊ばないの選択権はプレイヤーにあるのだから。
その選択で「遊ぶ」を選んだ以上、ゲームの中で出来ることはなにをやっても良いわけだし、なにをやられても文句を言うべきではない。ここにはゲーマーとしての自負と誇りが混じってくるので、当座目先の勝ちが欲しい人にはなかなか納得して貰えないだろうけれど、ある程度勝てる人ならわかってくれるはずだ。
ぐだぐだ言うのはみっともない。
そんなわけで、ある時期から俺は対戦格ゲーに関しては「アリアリ」派に転向したわけです。待ちでもハメでもご存分になさい。強いキャラで勝つのもどんどんどうぞ。
でも俺が勝つけどね。うぇへへへー。俺って格好いい! 強い! ザンギで待ちガイルだって潰しちゃうよ! ミラクル!? いやあ。だって強いから!
これは、楽しい。もちろん実際には手も足も出なくて負けることも多いけれど、うっかり勝てたときには圧倒的に楽しいのですね。
ここで一つ重要なのが、「アリアリ」だからといって、自分が待ちやハメやキャラ勝ちで勝っても、それはちっとも面白くないのね。むしろ凹む。主義を捨てて勝ってもなあ。金払ってるの面白くないよ。
そういう経緯を経て、悟った方針が一つ。自信を持っている方針が一つ。
「余所は余所。俺は俺」
これは俺の持論だけれど、ゲーマーには美学と実力が必要だと思う。ただ、勝てればよい、という人は単なるキラーであってゲーマーではない。単に楽しければいい、という人もエンターテイナーであってゲーマーではない。
自分なりのスタンスを持ち、しかも勝ちを狙う。キラーに勝てる実力と、エンターテイナーに負けない面白さを打ち出すべき存在として自らを定義づけたとき、ゲームを楽しむという行為を最大限に満足できるゲーマーが生まれるのだと思う。
そういう視点からKOCを見てみると、圧倒的にゲーマーがいないのだね。
ゲーマーにとって最大の命題は「(自分が)ゲームを楽しむ」ことであって、他人のプレイスタイルに横槍入れて自分の考え方を敷衍することじゃないだろうに。なんでかしらないけれど他人の遊び方そのものへの干渉が多すぎる。
自分の遊び方に自信があるなら、文句つけてないでそれを貫徹して、しかも(重要)勝てばいいじゃないか。その遊び方が楽しく、しかも勝てるやり方であるとアピールできれば、自然にみんなその人と同じような遊び方をしてくれるはずなんだから。
ゲームである以上勝敗はあるわけで、そういう場所では勝つために手段を選ばない人は必ず出てくる。そんな当然の事実を受け入れることも出来ずに、「お前等は狡い。ズルしてるんだから勝つのが当然だ。恥を知れ」とか、言ってなんになるのよ。場が悪くなるだけじゃん。
勝つために手段を選ばない人に、手段を選んでるのに勝っちゃうのが美味しいし楽しいのに。そりゃまあ大変な努力と研鑽が必要だけれど、真面目に遊ぼうと思ったら苦労しなくっちゃ。
負けるのは気にくわないが、努力するほどの根性はなく、勝ち組を貶すことで自分のプライドを守り、頑張ろうよと声をかけられると頑張ってもしょうがないよと斜に構えてかわす。果てはこんなゲーム面白くないとかどうとか。
じゃあやめろよ。
その奥にどれほど崇高な意志が潜んでいるのか知らないが、俺から見ると単に自分が勝てないから文句を付けているガキにしか見えない。ガキの相手は本当に疲れる。
あー若い頃色々揉めて苦労しておいて本当に良かった。さもなきゃ俺もアレと同レベルのガキのまま来てたんだろうなあ。くわばらくわばら。
なお、ネットゲーはネットワークのゲームでありますれば、勝敗を競うというゲームの要素の他に、もう一つネットワークという半端コミュニケーションツールの要素も絡んできます。こっちの方面から見てもガキが多い。なんたることだ。
これについてはまた後にいずれ。
十五日(木) 15:00帝某大学
「母校コンビニ出来てやんの」
〆切ブッチ四十二日目らしく。
今日は大学時代の担当教官に呼び出しを受けていたので行って参りました。冷や汗ものです。
昨年一年の成果を問われたり、半分諮問ですわな。基礎文献の読み込みに関してまだまだ足りないところがあることが露呈し暗澹たる思い。
景気づけに夕飯おごってもらったので多少持ち直したけれど、こりゃなかなか前途は多難だなあ、と自覚。
今年は厳しい新学期になりそうだ。