銀天盤 ○日記帳扉 ○前項 ○次項


2001 「如月生テレビ(前編)」


一日(木)

「他人事じゃないんです」


 〆切マイナス一日ー。

 未だ原稿手つかずー。

 なんとかしちくりー。


二日(金) 

「ヤヴァいって」


 〆切マイナス二日ー。

 一念発起して自分を追い込むため、敢えてゲームとかをやってみる。ガン・パレード!

 当然逆効果。ゲームだけ進む。


三日(土) イベント前日準備 K

「ムーンさんて凄いのよ。KOCのわかる人しかわかんねーって」


 〆切マイナス三日めー。

 一念発起して自分を追い込むため、敢えてネットゲーのオフ会のスタッフなどに志願してみる。

 とてもおもしろかった。


 ……。

 一日潰しちゃったけれどね。

 ヤヴァいって。


 いろんな人に会えたのは大収穫だったけれど、これを機会に気分転換するには明日のイベント本番が気になりすぎる。


四日(日) KOCオフ

「池袋、遠っ!」


 〆切マイナス四日めー。

 自分を追い込むた(以下略)。

 いやあ。楽しかったのよ。

 ……。


 なんーにも進まなかったな。結局。気分転換どころか、昨日に輪をかけていろーんな人に会えたのがとにかく楽しくて楽しくて。

 昔河邑が言っていたことだけれど、文字だけのコミュニケーションの世界でも知り合ってだんだん親しくなれば、実際会って喋ってみたいと思うようになるのが当然だと。

 そういう意味では、ネットゲーには「実際どういう人なんだろ」と興味津々な方たちが多かったのですが、会ってみたら面白かったよー。いろいろ勉強になったり。

 だから気分転換はいいから働け俺。


五日(月) K 最終ゼミ ゼミ打ち上げ

「本年度最後の講義ー。でも終わってないレポートがー」


 〆切マイナス五日めー。

 今日はゼミの終わりの日で、キツーい発表会と講評でヘトヘトになった後町田で飲み会でしたー。

 半端な値段の創作料理の店でグイ飲みー。料理はうまかったけれどあの値段なら俺は友達とだったら余所へ行くぞー、みたいなー。

 でもまあ、今日でガッコのスケジュールは全部閉じたわけだから、明日からはレポートに専心してがんばるぞー。

 いや、そう決めたのマジでマジでイヤマジで。


六日(火)

「ガンパレページ作ろかなあ。ドリームって言うな」


 〆切マイナス六日目。

 いや、昨日は決めてたんだけどサー。ガンパレとかやってたら忙しくて。

 ガンパレいいねー。ガンパレ。夏はガンパレ本だな。

 逃避? バカな!


七日(水)

「ひどい熱だ。しっかりしてくれプレステ!(※熱暴走)」


 むー。

 〆切マイナス七日目。

 そろそろこう、どうや? とか思って本を読み直してみたりしたのだけれど。

 なにを書いてるのかが全然頭に入らなかったり。

 どーしちゃったんだろう俺。こんなに読書苦手だったっけかなあ。

 確かにかつて河邑から「君は印象だけで本を読む、ある意味書き手にとっては最悪の読者ですね」と酷評を受けたけれど……。

 いやまてよ。単に成長してないだけか。

 なんだそーかー。寝よ寝よー。

 ……。


八日(木)

「ご託宣? ねえ、ご託宣なの?」


 〆切マイナス八日目。

 今日はガッコで先生のPCをセットアップしたりちょろっとはじめの方の操作覚えを手伝ったりするために家を出る。

 よく考えると家を出ること自体が凄い久しぶりのような気がする。

 すっかり不健康な暮らしですが、どうでしょうか。案の定車の運転中立ちくらみ。

 作業自体はチャッチャと終わったので先生と来年度の研究の話をしたり。よくもまあ、こんなに混乱した頭から研究計画が出てくるもんだと我ながら呆れる。

 とりとめもなく考えつくことはできるわけだ。

 全然まとめられないだけで。


九日(金)

「地元って意外と説明しづらい」


 昨日、ゼミの先輩が家政学院に行くというので交通について質問された。

「最寄り駅って八王子南野? 橋本?」

「いや、相原ですが」

「でも、バスがあるの?」

「微妙に……、いや、だから歩きましょう家政学院までくらい」

「歩くとどのくらい?」

「うすら三十分です。一駅くらいのもんですよ」

「バスだと?」

「バスなんぞ使ったことないので知らんです」

「役にたたんなー」

「異常ですよ。二キロやそこらを車なんて。うちの裏の道をずんずん行って、裏山を第二グランドの横へデスね」

「マテ。「山」って言ったか?」

「ええ。七国峠のところの道を」

「マテ。「峠」って言ったか?」


 そんなこんなで今日、車で送っていきました。

 歩いてもそれほど遠いとはおもわんのだけれどなあ。そりゃ確かに坂ですが。

 あ。〆切マイナス九日目です。


十日(土)

「祝日が全然嬉しくないってのは負い目かいな」


 〆切マイナス十日目。

 そろそろビクビクしてきます。

 昨日家政学院の話をしたけれど、相原には意外と大学があるのです。

 で、うちの祖母のところに「地元のお年寄りに聞く歴史」みたいな課題を出されたグループの婦女子が、聞き取り調査に来たことがあったそうなのです。

 祖母も話を聞いて貰えるなら嬉しいし、向こうもまあ、タルい一般教養のレポートを書くための取材にしちゃーまーそれなりの態度で、そこそこ礼儀も守って、話を聞いていったらしいのですよ。

 当日いきなり押し掛けて家の前でウロウロした挙げ句に「うちに何か用ですか?」と聞かれると学校の課題なんですとその場で質問を始めるいい年をした集団の学生共が果たして礼儀正しいのかどうかは俺に聞くな。

 ここまではまあ、微笑ましいな、と。


 その後、祖母のところには「あそこのお婆さんが話してくれたよ」という情報を仲間から得た学生共が何グループもやって来て、しかもメモは取るふり、返事は生返事、質問は一つ目のグループと同じ、という情けなくも「そうだろうなあ」と納得せざるを得ない、今の大学生のレベルを端的に示すエピソードが積み重なりましたとさ。

 とっぴんからりのぷう?


 直接俺の責任じゃないと頭じゃわかっちゃいるけれど、情けない話だよな。顔から火が出るというか、やってらんねーというか。

 うちのお祖母ちゃんをがっかりさせないでくれよ家政学院。ああ。

 学生にちゃんと勉強して欲しいと望むことが贅沢な先進国ってのはなんなんだ。


十一日(日) 建国記念の日

「二月も三分の一が……」


 〆切マイナス十一日目。

 この二連休で勝負をつけるべく、新しく罫線を引いて臨戦態勢の大学ノートを片手に堺市民センター図書分館に突撃。席を確保していざかかれー。


森博嗣 「そして二人だけになった」 新潮ミステリー倶楽部特別書 1999

 分厚いハードカバーのわりには、いつもの正調森音階である段階からはととんと入ってくる、ので序盤のキャラつかみ等をしっかりこなせばサクサク読める。と、思う。

 前評判の高かった本なので、ちゃんとトリックに挑もうと思い細かいところまで深読みしながらじっくり読んでいった。閉鎖状況と人間関係という「雪の密室」的おなじみのテーマを踏襲、しつついつものように自然科学的見地から側面補強して読んでいて心地よい「騙され具合」を提供してくれる森ミステリを、騙されないように読むのは苦労したというか単に疲れただけのような気もする。

 オチもちょっと、一回ではつかみきれないので再読、再々読を必要とするのだけれど、なかなか腑に落ちたというかんじではない。

 トリックを解こう、と思ったときに「正解」を求める心理が強く働いてしまったわけで、その時点ですでに俺の負けだったような気がする。これはアンチミステリではない、と思う、のだが。

 この先はご自分で読んでみて確かめられたし。ミステリ好き以外にわけわかんないこと書いてスマン。


十二日(月) (振り替え休日)

「昨日は良く本読んだー」


 だから! レポートを書きに来てるんだよ! 〆切マイナス十二日目の!

 なんで読書メモが増えるんだよ! 本読みに来てるわけじゃないんだよ!


高田崇史 「QED 百人一首の呪」 1998 講談社

 マサキ君が確かわりと誉めてたんだよな。QED。

 だからそのつもりで読み始めました。えー、ミステリです。

 百人一首を凄く研究した人だと思うのですよ。その知識を元に小説を書いて、一本話にしてるのは凄いことです。

 で、お話は拙いです。描写でけっこう脱力したり。引っかかります。気になります。

 筋書きも「ミステリの 殺人事件に するための」(季語なし)って感じで。いい表現が……。

 同人誌?

 同人誌でこれだけのものを書く人がいたら凄いので今のはちょっと良くない例えでした。でも気分的に。

 これが一冊目、らしい、ので、先を考えれば十二分に注目株なのですが。同じ方法論で来た人に抜群な人が多いのがちょっと損でしたかね。

 でも、もうこのあと二冊書いてるんだっけこの人。このレベルの作品を量産できるなら凄いです。


十三日(火)

「だからレポート書けよ俺」


 〆切マイナス十三日目。

 不吉だね。いや、〆切破りがすでに不吉だけれど。


 今日は振り替え休日で図書分館が休みなのでさすがに本を読みません。借りてきた本も読みませんよ。

 借りてきた本だけでなく、外に置いてあった「図書館の本だけれど持って帰っても良いですよ」図書も読みませんとも。だいたい、持って帰っても部屋に場所がないんだから、持って帰っても仕方ないしねえ。

「じゃーそのハードカバー『薔薇の名前(上・下)』について釈明はないわけね」

「これはだって、ねえ? 薔薇の名前のハードカバーが持って帰っていいよーと置いてあったら、それはお持ち帰りでしょう! 考えるまでもなく!」

「この部屋、本の冊数だけなら私文書館並ね」

「ラインナップを考えれば、下手な漫画喫茶にも負けないぜ! それにしても確かに整理ができてないな。良し。ちょっと分類するぞ」 

 ……。

 はっ!

 また無為に一日を過ごしてしまった気がする。なんで蔵書分類だけで一日潰れるんだ。


十四日(水)

「ふつうのひ」


 今日は普通の日です。

 あ。〆切マイナス十四日目です。

 バイト五時間ほどやりました。

 ゲームも五時間ほどやりました。

 以上。


 一応、家族とか親戚とかまあええ。それなりに。

 黙れ俺。


十五日(木)

「うわ。半分終わってるし」


 〆切マイナス十五日目。

 図書館ごもりの二日間で「それなりに」まとまったアウトラインはできているので、骨組みに会わせててきとーにワードを当てはめて文章を作る夏休みの課題読書感想文駆け込み仕上げ的作文術に取り組んでみる。

 失敗。

 つぎはぎだらけでなにを言いたいのかわからないどころか、なにをテーマにしているのか、そもそも課題の本を本当に読んだのか我ながら疑問なニセ文章が大完成。

 なんだかなー。なんなんだかなー。


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