銀天盤 ○日記帳扉 ○前項 ○次項


2000 「霜月は一日にして成らず(後編)」


十六日(木) 大学制度論

「意外に粘るぞ加藤清澄」


 明日の準備でフーラフラ。さすがに厳しいか。

 前日だというのにブッキングだかなんだかで会場設営が出来ない。全部明日。しかも録音機材のチェックもできない。全部明日。

 大丈夫なのか……。すんごく心配になってきた。


十七日(金) 清水安三研究会ワークショップ

「うちの大学にはプロフェッションが全然いないぞ。事務。十人に一人もいないぞ。くたばれ腐れ事務」


 朝九時集合。準備開始。

 今日は某美林大学創設者、清水安三氏についてのワークショップです。名前は勉強会ですが、先々清水安三学界化を目指している本格派発表。資料総計百数頁。制作の半分は俺。

 当日の雑用もやるので、他人事ながらちょっと入れ込んでいた今日このごろ。

 そんなわけで早速トラブル。昨日チェックしなかったの絶対まずいと思ってたんですが、案の定録音機材の動きがわかりません。担当職員の方が額に汗して準備して下さっているんですが、なんで説明書と首っ引きなんだよ……。

 確かにここ、栄光館は今年完成の建物らしいけれど、それにしたって担当機材の使い方を覚えてないのかよ。プロだろあんたら……。

 今日はこれを含めて「七つ」。大学職員の働きで嫌なこと、ムカつくこと、変だと思ったこと、殺害して家族を泣かせてやろうかと思ったことがありましたが、N坂姉が何も言ってなかったので俺も黙っておきます。今日は。

 でもF先生とO先生は黙ってなかったみたいですけど。O先生は学長宛に報告書出してたし。何人かクビになりやがれザマーミロ。

 俺は専門性の足りないプロフェッションは大嫌いなんだよ。そのうえそいつらに謙虚さがないと来たら、殺してくれと言ってるようなもんだろう。そうだろ?

 ……まあ殺しゃしないけどさ。手を出すほど子供でなし。だから正々堂々、理をもって正面から論戦で叩き伏せるだけなんだってば。何故か結果的に喧嘩になるが……。

 正論言われてムカつくような後ろめたいことならやらなきゃいいのに……。謎だ。


 と、そういう性格が無駄にプライドの高い人種を刺激するのだと説教食らったばかりでしたよ。ヘイヘイ。毎日寝て暮らせとゆうのか。嫌な世の中だ。

 嫌な世の中なりに勝手にカスタマイズして機材運転。……今考えるとぽじ君あたりを電話で呼んで手伝って貰えば良かったなー。

 お昼は余った弁当をご馳走になり二食食べたり。

 そうしたら「さっきのお弁当、まだ出せる? ○○さん(偉い人)の分がなかったらしいんだけれど」と言われ。まさか「俺が食ったのでないです。つーか今まさに咀嚼しているのがそれ」とは言えず首だけ振ってみたり。

 ともあれ、大きなミスもなく終わって良かった。これに向けて半年やってきたからなー。ホッとする気分もひとしおです。

 さー。大一番が過ぎて少しは暇になるといいなあ。


十八日(土) 大学教育史

「河邑から連絡が全然ないのですが、彼が来ないと明日は大変!」


 ガッコ。講義。帰宅。倒れるように就寝。起きたら夜。

 ……昨日までの強行スケジュールの疲れが出たのか、とはいえ本ゼミなので死ぬ気で講義だけは出たら、なおさらヤバかった。人間、疲れすぎると呼吸が止まってることに気づいたりします。苦しく思った後で。当然だっちゅーの。

 明日の若竹の準備をして寝るー。


 ところでドラクエの○○○○にやっと勝てましたよ。モンスター職ばかりで役に立たないガボを首にし、マリベルの家で寝ていた勇者メルビン宇宙ヒーローを参戦させたのが勝因のようです。

 モンスター職って、楽しいけれど系統だった技修得が出来ないから、いまいち戦力として読み込めないんだよねー……。ガボすまん。


十九日(日) 若竹の会

「鳩胸!」或いは「クルックー!」――最近のひとみ悟空のクセらしい。


 TRPGの日ー。

 今日は珍しく河邑などが来たが、時間が足りずに鷹村邸で続きをやってしまった。やっぱ、午前中集合はきついのか?

 つーわけで来月は午後、夜で部屋を取ってみるということに。しかし、プレ交やるなら前日でとっちまうか? 考えどころ。


二十日(月) K 教育政策 比較文化理論 教育課程論

「α派御殿更新しなさすぎ!」――柴三郎つーかゴメン存在を忘れてたわ


 そんなわけで、足が悪くて東京に出てこられなかった父方の祖母の所へ、父が亡くなったことを正式に知らせに家族でGOします。今更だけど。

 今朝の始発でるって、今もう四時ジャン。急げ急げ。

 ではまたー。帰宅は水曜。


二十一日(火) 新潟旅行

「新潟だ! ヤスダヨーグルトだっ!」


 始発で八王子へ。八王子から東京駅へ。

 なんか旅行代理店でお宿と新幹線がセットになったやつを頼んだらしく、行きの新幹線の時間が指定。しかも早い早い。東京駅までが遠い我々にはちとキツい。

 駅弁を買い込んで新幹線に乗り込んだときにはすでに気息奄々の俺と母。毎朝銀座まで通勤してるのでわりと平気な妹。そして元気いっぱい祖母。

 さすがに年寄りは朝に強い。もう、製作総指揮全て祖母の出発から新幹線まででしたよ……。

 新幹線では爆睡。上越新幹線はトンネルバッカでそれほど景色が見えないのと、言うまでもなく昨夜寝てなかったからです。なお、祖母はしっかり帰りに泊まる越後湯沢を車窓からチェックしていたそうで。

 新潟から寺尾へ。伯父さんの所に顔出して、その足で老人介護施設へ父方の祖母を訪ねる。思ったより全然健康。母方の祖母と会えたのが余程嬉しいらしく、年よりどうし茶飲み話に花が咲く。

 うすら一時間話したか話さないかで撤収。なんか忙しいな、とは思うが、色々時間の制約もあるらしい。これで最後でもないだろうから、と手を振る父方の祖母に見送られながら出立。

 お昼を食べて、新潟へ。そこから新幹線で越後湯沢まで戻る。

 まだスキーシーズンに入っていない越後湯沢の駅は……、なんつーかゴーストタウン。ガランとしたコンクリの空間に誰もいない。寒い。

 そこから旅館へ。旅館へ行ってみたらずいぶん大勢人が居て、駐車場もいっぱいだった。車社会? 新幹線が高いからみんな使わないのだろうか。

 荷物を降ろして、早速温泉に向かう大人チームを置いて、若者チームは市街地へ。お土産のあたりをつけたり、地酒を見たり、それにしても寒かった。

 山間の冬空は妙に静かで、稜線から洩れる残照と相まって一種独特の、とても寂しい世界から切り取られてきたような、妙な異世界観を醸し出す。無人の街路やシャッターの下りた商店、吹く風に揺れる軒先の干し大根。寂寞たる校庭の向こう、冷え切った色の学校。

 様々な風景がさらに異邦を強調する。夏は過ごしやすいのだろう。冬はもの凄い数のスキー客で溢れるのだろう。今は丁度その間隙か。この時期に来て良かったような気もする。

 宿が安いから。


 さて、冷え切って帰還。温泉でゆーっくりあったまって、種類はやたらに多いが量が少ない、正しい旅館の食事を頂き。

 食後は部屋のテレビを占有。NHKの『プロジェクトX』を見て一人で涙し、同室者の総スカンを食らい。

 いずらくなったので地下ゲームコーナーで懐かしの蒼穹紅蓮隊をプレーイ。宴会場がスゲーうるさい。正しい酔っぱらい団体が大量に! これぞ大型日本旅館。

 湯沢の夜は更けるのです。


二十二日(水) 旅行帰宅

「駅の酒売場はどれもこれも売り切れ!」


 朝ー。朝だよー。朝御飯食べて学校は行かない。

 朝食は最近ありがちバイキング。和・洋両方を全種類取れるだけ取ってきてテーブルに置き、一口食べては美味しかったら続け、美味しくなかったら俺の方に押しやる、という食べ方をする同行三人。俺非常に満腹な朝食。

 腹ごなしにお土産探しがてら、市内をぐるぐるぐるぐる歩いて廻る。朝見ると普通というか、昨夕感じたような不思議さは影を潜めていた。肌を刺す空気が心地よい。山間の静かな町だ。

 ヤスダヨーグルトとか日本酒とか、それっぽい土産を買って、駅弁買って新幹線へ。初の二階建て新幹線に興奮し車内をウロウロしていたらアッと言う間に東京に着いてしまいましたとさ。

 なんか駆け足で忙しい旅行だった。さあ、明日からは学校だ。


二十三日(木) 大学制度論(休講)

「しかし」


 祝日でした。

 しまったー……。け、計画が……。


二十四日(金) 文化人類学

「もう捨てる本が無いぞ……」


 今年もあと少しということで、やり残した仕事を列挙して片づける作業に着手。これがなかなかはかどらない。

 つーか、部屋整理だけで今日一日ほとんどを使ってしまったよ。トホホ。


二十五日(土) 

「何時間かかるんだこの部屋の整理には……」


 部屋整理終了……。

 単に整理であって掃除自体はこれから、とういのが泣けるが……。

 ともあれ、疲れた。

 これでやっと他の作業に入ろう。掃除? それはほら。ねえ。

 大掃除は十二月にやるものだよ。うん。


二十六日(日)

「パパからファックス来ないネー」

「来てるわよー? 手前に見せないだけで」


 知人ところの学園祭に顔を出そうとノコノコと都心まで出かける日曜日。

 飯田橋の某政大学。相原に住んでる人間としては、某政大学と言えばうちの奥だろう、釈然としない感覚が残るのだが、とにかく某政大学。

 案の定飯田橋で降りた瞬間迷う。都会はわかりにくくていけない。歩き疲れて高いところの公園でちょっと寝た、ら、アッと言う間に三時間くらい経って暗くなってんの。財布無事で良かったと嫌な感想。

 十八時頃というともう真っ暗でした。九段高校の近くなんてとぼとぼ歩いてるとまさにゴーストタウン。ビジネス街だから? 夜は人が居なくなるのだろう。

 議員会館の横の道とか、とにかく延々無人で逆に落ち着かない東京砂漠を越え、左になんか偉い立派な銀杏の木などを生やしているお屋敷の横の坂を下っていくと、結構いい勘してたらしく大学の裏手に出られた。

 いい勘していたら迷わないんだが。

 詰め襟に腕章の応援団風の立ち番に道を聞いて中へ。すでに後かたづけ中だったが、知人の所へ行ってみる。なんかスゲー高い、帝某大学もめじゃないようなビルが一つ建っていて、これは結構遠くからも見えたのだが、まさか大学だとは思わなかったなー……。

 さて、お目当ての教室到着。無人。撤収済み。当然いません。

 ……。

 しまった。この可能性は考えないようにしてたのでフォローが効かないぞ。

 とりあえず、ちょっと待ってみる。暇なので電気をつけて、教室を見物したが見事になにもなし。

「だからって空手の型をやるのはどうかと思う」

 いや、床が丁度ほら、板敷きで。

「あんまりドスンドスンやるから隣の人が見に来たじゃないか」

 ……今思うとアレはミスだったかもしれん。確かに。

「先に気がつけ」

 チッ。とにかく、居づらくなったので逃亡。知人とのコンタクトは諦めて、ファイヤーストームや学バンコンサートや振舞酒を堪能。

「振舞酒はまずいんじゃないの? 部外者」

 「院生です」って言ったもん。ちゃんと。

「某政の院生じゃないじゃん……」

 まあ、お祭りだし(無礼講表現)。

 それにしても某政の学食。なんかカレー屋があるのよ。俺が入ろうと思った瞬間準備中にしやがった。あのウィンナーカレーは旨そうだったなー。河邑食いに行ってレポートしてくれい。都会だし。

 もう一件。某政の学食の建物の一部には何故かベタベタとアニメポスターばかりが貼りまくってある区画があってビビる俺。しかし、そこで初めて「卒業」のOAVがあんな路線で進んでいることを知りビビリ倍増。

 ……いーのかアレは。現代さん的にはいーのか。


 さて、ただ酒も二杯三杯と飲むと段々申し訳なくなってくるのでそろそろ退散。せっかく都会まで来たしちょっと足を伸ばして……。

 月島の岸田屋までGO!


 閉まってました。


 さささ寒い。お目当てが開いてさえいなかった月島の商店街は寒すぎる……。急いで帰ろう。


 帰りに新宿に寄って、桂花でラーメンを食べようと思い立ったが吉日。しかし、店の前まで行ってこないだ凄く不味かったことを思い出した。磯野が「末広町店ならうまいぞー」と言ってくれていたが、そこは何処なんだそこは。

 ちょっとウロウロして、住友銀行のもうちょい奥の方にあるもう一方の桂花に入る。スープが熱い! あったりー。ここはそんなに不味くなってなかった。ホッ。

 で、帰った。帰りに橋本で飲み屋に寄ろうとしたらここも閉まってた。まともな飲み屋は日曜はやらんのね……。はぁ。勉強になった。高くついたが。


二十七日(月) K 教育政策 比較文化理論 教育課程論

「二十三日だから」――忘年会通告


 ところで、昨日電車に乗るときに暇になったらいけないと思って持っていった本。「犬神家の一族」。

 ミステリ好き好きとか言ってるわりに、実は金田一をちゃんと読んだ覚えの無かった私ですが、ハラダさんの「たたりじゃぁー」という台詞がなぜか妙に頭に残っており(詳細は不明)、それで読んでみようと思い立ったのでした。

 いやー、面白かった。古いとか関係ない。特に最後の犯人の格好良さ。俺は認めたくないけど認めざるを得ない生き様だ。古典はよい物だなあ。

 と、読み終わって気がついた。どこにも「たたりじゃぁー」って言う人出てこないジャン……。

 ……あっ!

 アレは、「八つ墓村」の方か! ひょっとして!?


二十八日(火)

「私の夢が一つも叶わなかったこんな世界なんか、さっさと滅んでしまえばいいんだ!」――ドラクエ7より


 ドラクエが完全に終了。完全というとあれだけどとにかく一区切り。

 で、ゲームクリア後の感想。ちょっと急いで遊びすぎた。

 とりあえずエンディングを見たあとで、今まで行ってなかったカジノやモンスターパーク等の横道要素をのぞいてみたら、これが大変面白い。

 特にカジノ。このゲーム、装備品が意外と種類が無くて、金貯めて一つ上のグレードの武器防具を買うまではじーっと我慢の子、という展開が少なくなかったのだけれど、カジノで、ラッキーパネルをやるだけで相当違う装備を持って旅が出来たことにゲーム終了後に気づくとわ。

 ……そーいやまめ先輩がラッキーパネルお勧めとは言ってたっけな。カジノはゲーム終わらせてから遊ぼう、ってのがミスだったな。

 まめ先輩と言えばもう一つ、あの人が「ドラクエはFFに比べて伝統的に本筋と無関係のサブゲームが弱い。7は結構マシな方だが」とも言っていたっけ。

 これも今考えると、ドラクエのカジノはFFと違って完全に本筋から浮いた存在でもなかったわけだ。途中カジノでちょっと息抜きすると、進行が楽になるという。

 俺は初見では攻略本は読まない派だけれど、こういう細かいところで「知ってればより楽しめた」要素は多かった気がする。ちょっともったいない遊び方をしたかもしれない。

 しかし、値段分は充分楽しめた。やっぱドラクエ面白いや。


二十九日(水)

「そろそろ冬布団を要求します。ハハウエへ」


 深夜の冷え込みが厳しくなってきた。ああ、冬だなと。


京極夏彦 「百鬼夜行――陰」 講談社 1999

 かつて「一番好きなヒロインは?」と聞かれて答に窮したことがあった。そーいやいろいろと本を読んだりアニメを見たり漫画を読んだり映画を見たり、数だけはこなしてきたけれど、嫌なクセでいつも作品構造とか、登場人物相関図とか、事件時のアリバイとか(ミステリ読みにありがち)そういうことを気にしてばかりで人物自体をきちんと見たことがあんまりなかったような気がする。

 かつて河邑に「君は本読みとしてはサイアクですね」と言われたのもむべなるかな。作者の渾身の人物描写とか、結構どうでもよかったのかもしれない。

 さて。これは京極夏彦の小説現代連載をまとめた物で、短編集とはいえ書き下ろしではない。よくもまあこれだけの作品数を見逃していたものだと自分に呆れながら、いつだか立ち読みでスパーっと流した覚えがあったもので、今回なんとなく借りてきて呼んだわけだけれど。

 京極堂シリーズの脇役の人達などが、どうして彼岸へ旅立ってしまったのか、その異常性の発露を丁寧に描いた……、とかそういう形式はどーでも良い。ファンなら楽しいしファンでなければ全然ワカラン話の集まり。

 この中の「文車妖妃」という話の主人公、京極堂シリーズ第一作「姑獲鳥の夏」の(たぶん)ヒロイン、久遠寺涼子。今更気づいたが、彼女を「一番好きなヒロイン」にあげていいのかもしれない。どういうところが好きなのかはネタバレなので伏せる。

 しかし、京極夏彦の登場からもう六年か……。そう思うと秋のせいかちょっと感傷的になった。


三十日(木) 大学教育史

「やっぱりダメだぞ加藤清澄」


 気のせいかガッコも忙しい雰囲気になってきた気がする。人が皆早足で歩むように見えるのは寒さのせいだろうか。寒いときこそ胸を張って歩くと実は暖かい気がするのだが、気のせいかもしれない。

 ネットゲーの方も昨日で一段落付いたので、ぼちぼち日記など書いてみたりページの再構成に手を出したりしてみている。早く追いつかないと。更新予定。


漆原友紀 「蟲師」 講談社 2000

 雑誌連載時からコミックになったら絶対買おうと思っていた作品。やっと登場!

 「今、ここではない世界」を扱う雰囲気バリバリでありながら、素材に旧日本を持ってきて、しかもそれに飲まれないよう、作者独自のアレンジを持って一つの世界を構築し、そのうえその世界の中で、日常と非日常の狭間に沈んだモノ達の浮き沈みを描く。素敵。

 一個残念だったのは、なんか、コミックで見るとちんまりしてるんだよな。映画でなくレンタルビデオで見てる感じ。うー……。

 こういう作品は連載時に大判のページで見た方が絶対いい、のだろう。そんなわけで今出ているアフタヌーン季刊増刊。是非読んでください。何度か紹介してるけど面白いです。


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