ただこの時を待ち望んでいた――心のどこかで怯えていた――
仇を討ち、祖国を取り戻す――それだけのために生きてきた。そのためには奪われた怒りと腕に抱けるものだけを持って駆け抜けてきた。それ以外は捨てるしかなかった……捨てたのだ。
捨てたものの代わりに言い訳ばかりが増えていった。その罪悪感すら奪われた怒りに転嫁した。時が来るまで生き延びるのだとひたすら逃げた。
そして、時が来た――
手が届かないと諦めていた子供を抱き締めることができた。
これだけはと守り抜いた子供達はいつの間にか抱えていた腕から抜け出して自らの足で立ち、道を拓いて進み始めた。
全てを奪った戦いは終わった――そう実感した時、初めてあなたがいないことに気付いた。
あなたを無視していた訳ではなくて、時が来ればあなたも戻ってくるのだと、そう思わなければ前に進むことはできなかった。
それが手を離してしまったことの言い訳だと解っていたから、自分に掛けた暗示が解けるこの時が怖かったのだ。
――あなたがいない
奪われたのではなく、捨てたのでもなく、互いの意思で離れたのだ。ただこの時のために。
宿願が果たされた今、選んだ道は間違いではなかったと、この道を進むしかなかったのだと、頭では判っているのに受け容れられない。
覚悟が足りなかったのだ。
離れる時に覚悟したつもりが全くできていなかった。多くを失って、その痛みを知っていたはずなのに、知っていたからこそできなかった。『仕方ない』の一言で片付けてしまった。
願いは叶ったのに、嬉しいはずなのに、こんなに空虚なのも仕方ないのだ。
だから、進むしかない。あなたへと続く道を切り拓くしかない。
あなたがいないのなら、捜せばいい。最早言い訳になるものなど何もない。
ただ、あなたさえいれば……それでいい。
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