ユリイカ4月号 特集J−コミック’97

 ユリイカ4月号がマンガに関して特集を組んだ。サブタイトルに「マンガ家が語るマンガの現在」とあるように、マンガ家にさまざまなジャンルのライターらがインタビューするという形式でまとめられており、マンガ家の生の声が分かる所が興味深かった。また、その実力や個性派ぶりが注目されながらも、あまり評論の対象になっていなかったマンガ家を取り上げている点も、広い範囲でマンガを捉えようという編集部の考えが感じられた。
 内容と僕の一言感想は以下の通り。

 よしもとよしとも×古屋兎丸「俺たちはマンガの何を面白がっていたのか」
  よしもとよしともが宮崎駿のアニメでレンズと画面の関係などを意識したというのがおもしろい。

 梅図かずお+岸野雄一
  狂気とも言えるような両極端な状態を振幅しているのが「生命力」で、安定は「死」だそうだ。

 吉田戦車+澤野雅樹
  高橋留美子が好きというのには驚いた。

 山本直樹+川口俊
  これまでボーダーライン上だったけど、このインタビューで買わなければいけない人にランクアップ(笑)。いや、予備校時代に森山塔名義の「ペギミンH」は持っていたけれど・・・。

 くらもちふさこ+角倉良樹
  天然コケッコーやっぱり買おう(^^;。それから文庫ででてる旧作も買わねば。

 荒木飛呂彦+斉藤環
 好きな映画監督は、イーストウッド、コッポラ、デ・パルマ、スピルバーグ。リンチやキューブリックはいいところはあるが、自分に取り込もうという気持ちにはならないそうだ。こうした、エンターテイメントへの志向がジャンプで長年活躍するひけつかも。  

 業田良家+中条省平
  マンガを書く上での一番のテーマは「いかに生きるべきか」だそうだ。作品にある種のバランス感覚があるのはそのためか?

 伊藤理佐+香山リカ
  会社の後輩たちが「おるちゅばんエビちゅ」にハマっていた。ハムスターものの中でも一番濃いやつなのに、楽しそうに(笑)読んでいた。彼女たちは「微熱なバナナ」は読んでいるのだろうか。

 安野モヨコ+伏見憲明・斉藤綾子
  このインタビューをはじめこの特集ではフィール・ヤングの名前がけっこう出てきた。この雑誌ってやっぱり少女マンガ系の雑誌でははずせない一冊ということか。

 伊藤潤二+阿部幸弘
  名前しか知らなかったけれど、一度読んでみよう。長田ノオトより、趣味に合いそう。

 村田ひろゆき+轟夕起夫
  この人にインタビューしただけでも、この特集は目のつけどころが違う。こういうマンガが批評の対象になることは作品にとっていいことではないかもしれないけれど、確実に人気があるこうしたプログラム・ピクチャー的な作品が全く無視されている状況もまた、おかしいのだ。

 町野変丸+木村重樹
  インタビューを読んでも、町野作品のどこがすごいかが、うまく分からない。確かに、すごい変なのは確かだけれど、何がどうと説明できないのだ。  
 
東陽片岡+永江朗
  もっと攻撃的な人(根本敬みたいな)だと思ったら、違うタイプの人だった。

 南Q太+越川道夫
  男としていろいろ反省しました。妹にマンガの原作書いてもらったら、全くふつうの少女マンガチックな作品で、感覚的に理解できなかったというエピソードが印象的。でも、女性作家とは今まで知らなかった。

 黒鉄ヒロシ
  デフォルメされた描線が好き。健康な笑いなんてない、という姿勢が今の独自の地位を築いたのだろうか。とりあえず新選組を買おう。
 
 高田祐子
 昔、妹が買っていた別冊少女フレンドで気に入って単行本まで買った作品が「篠原家ご一同様」。今読んでも十分面白い。当時はもっとポピュラリティーのある作家になるかと思ってたけど、結構独自の路線をつっぱしってるみたい。他の作品も買おっと。

と、いうわけで大変読みごたえのある内容でした。(97/03/31)


雑談的独白 RN/HP