「彼女たち」の連合赤軍(大塚英志、文藝春秋 1800円)

 これまで筆者がキーワードとしてきた「かわいい」に対する追求を、連合赤軍を軸としたここ4半世紀の歴史を素材として展開している。前半は連合赤軍の永田洋子の獄中イラストから端を発し、その乙女チックさから、80年代に開花する女性性の萌芽がすでに70年代の連合赤軍内にも見られていたこと証明する。後半はその歴史観に立って戦後そのものを取り扱う。断続的に発表された原稿にもかかわらず、論が次第に深まっていく構成は読みごたえがあった。
 僕たちの世代に浅間山荘事件にいたる一連の流れが分かりにくいのは、仲間をリンチするというメカニズムが体感できないからだ。僕たちの世代はおそらく、そこまで対立を産むまえにお互い離れてしまうはずだ。(今の時代あれほど濃厚な人間関係をつくれるのはそれこそ新興宗教しかないはずだ)。だから、内部の「路線対立」が、お互いの気持ちを共産主義の言葉でしか表現できなかった結果と考える筆者のとらえ方は実感できるものがある。
 筆者はオウムやM君の救いがたい不毛に抗うには、サブカルチャーの「矮小さ」を歴史に接ぎ木することが必要だと指摘する。だからこそ筆者は連合赤軍事件を、サブカルチャーの歴史の上に再構築したのだ。サブカルチヤーそのもののすの野が広がっている今、サブカルチャーをとらえ直すこうした作業は非常に貴重だ。妙な言い方になるが、「おたく」世代がそのこだわりを持ったまま大人になるにはこうした手段しかないと思う。(97/1/15)


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