瀕死のエッセイスト(しりあがり寿、角川書店 1500円)

 泣けた。最近次第に涙もろくなっていることに加え、祖父を看取ったことで「死」について漠然と考えていた時に手にしたため、不覚にも胸をつかれた。それは祖父が死の間際まで比較的意識が鮮明で、まさに瀕死の状態に長くあったことと深い関係があると思う。
 瀕死とはつまり生と死の境界線上に立っているということだ。その線の上に立つとおそらく両方の地平が見えているにちがいない。作者はその境界線上へと想像力で踏み込み、そこから見えるさまざまな風景をマンガという形にスケッチしたように見える。だから、僕は祖父の亡くなる瞬間のことを、祖父の魂が境界線を越える瞬間を思い出し、その時彼の目に映っていたものが何かをこのマンガの中に探りたくなるのだ。
 むろん、このまんがの中にその答えはないのはわかっている。でも分かっていながら、探してしまうのだ。(97/1/14)


漫画荒野 RN/HP