1998年2月下旬


<2月21日・土>
◇ 帰宅した後、徹夜のハイテンションのままウテナのビデオを見る。やはりオレにとっては、あの演出のスタイルこそがウテナであって、ストーリーへの興味は二の次であることを実感する。とはいうものの、多少のばらつきもありつつ、テンションを保っているのはやはり見事か。チャンバラのシーンがいつもスタイリッシュに処理していているのは、個人的には苦手ではあるのだが、アニメ的には正しい処理である。

◇ 今朝方の影響で、ちょっとカラオケ付いてしまったので、夕方から池袋にカラオケに出かける。最近は全く新しいレパートリー入れていないので、もっぱら虫干しといっった調子。で、その後はパンツを履いているシャブシャブ(失笑)「池袋牧場」で飲み放題、食べ放題を食べた後に帰宅。前日の影響もあってばたんきゅー、である。


<2月22日・日>
◇ 昼に目が覚めると、取引先からのファクスが届いている。納期を何日過ぎているのか分かっているのかしらん。と思いつつも、とりあえず懸案が一つ片づいた。というわけで、みなさんも仕事の納期はちゃんと守ったほうがいいと思います。いやマジで。

○ 午後3時から新橋の徳間ホールで「金田伊功上映会」に参加する。なんでも氏は、スクェアUSAの制作するCGムービーに参加するために、渡米するとか。日本のアニメの現場を離れるということで、この上映会が開かれたのである。上映された作品は、
大空魔竜ガイキング「猛烈火車カッター」
無敵超人ザンボット3「海が怒りに染まるとき」
無敵鋼人ダイターン3「遙かなる黄金の星」
とんでもナイトドンデラマンチャ「ドンはカウボーイ」   の四本。
 特に、ドンデラマンチャは、ナンセンス・アニメの極北ともいえる出来映え。あれで金田アクションがなければ全く意味がない作品になっていだろうが、あのアクション−ここでのアクションとは、つまりチャプリンやキートンの芸と同義−だからこそ、きっちりギャグアニメとして成立しているのである。
まあ、民放が一局しかないところで高校時代まで過ごしたアニメファンとしては、上映作品のウチ半分は見たことがあるというのは、悪くない成績でしょう。

◇ その後の飲み会にも参加。あちこちには池田憲章氏や小松原一男氏、野田卓雄氏など名前しか拝見したことがない方々がいたりして、一介のファンとしては、頭の中を特撮ヒーロー列伝とかハーロックとか幻魔大戦が行き来して、クラクラする。モニターでは歴代の金田作画のシーンを集めたビデオも上映されていて、これまた血中アニメ濃度が強烈に上がる。同席になった方々と、ガンダムや富野由悠季監督ネタとかで盛り上がる。一応その場でアニメ四段(笑い)と認定される。また、伝説の『逆シャア本』を貸して下さるという話もいただいて、ありがたくお借りすることに。
2次会もあったみたいだけれど、会社へ寄ってさっと仕事をして自宅へ戻る。そして、LDでもう一度、無敵超人ザンボット3「海が怒りに染まるとき」を鑑賞するのであった……。


<2月23日・月>
◇ いろいろ仕事をせねばと思いつつ、ゆっくりと休養して、ゆっくりと出社。とりたててこれといったこともない日なので、ゆっくりと仕事をしてさっさと帰宅する。


<2月24日・火>
◇ 今日は町中をいろいろ徘徊して、仕事関係の書物を漁りつつ仕事へ出かける。 


<2月25日・水>
◇ なんだかいろいろ仕事をしていたような感じ。


<2月26日・木>
◇ 帰宅して月末の精算を始める。毎月のことながら、けっこう立て替えていた金額が多くて、これじゃやはりキャッシュフローが少なくなって生活が苦しくなるというのもわからないでもないのだが。ともかく先月は締切に間に合わず、総務担当者と険悪な仲になってしまったので、セッセと書き進める。しかし、この会社は事務手続きが煩雑だよなあ。世間はどこもそうなのかしらん。

○ というわけで、ただ精算をするのも退屈なので、「Vガンダム」のビデオを見ながら、手作業を進める。レンタルしてきたのは、1、2、13巻。やはり最終回のラストシーンは素晴らしい。ただ、そこへいくまでがカッタルイところが多すぎるのがこの作品の欠点ではあるのだが。「日本アニメ史学研究序説」(北野太乙、八幡書店 1200円)では、このラストを「聖女が悪女を許したのである」と解説し、それまでの富野作品とは別の部分があると指摘していた。ていた。シャクティが、カテジナのワッパのコンパスを直してあげて、ウーイッグへ帰る道筋を示すというのは、そういう意味でも象徴的なんだろう。

△ 同書のアニメ史を俯瞰するという試みは興味深いんだけれど、この本の最大の特徴は「マクロスプラス」を積極的に評価しているところではないか(笑い)。ボクは、物語が破綻しているのは嫌いではないのだが、それは、破綻することで現実の何かを映し出すとか、作者の激しい思い入れが顔を出す、とかそういう場合である。マクロスプラスのお話の未整理な感じというのは、そのどちらでもないでしょう。ネタバレを恐れずに書くのなら、ガルドが自分の記憶を誤った形で封印していたことが、あの作品を一番興ざめにしている。記憶を勘違いしているガルドに対して、一応、周囲の2人は、あとからみると彼を気遣っているように見えないわけではないが、その気遣っている心境に感情移入というか、理解ができないんだよなあ。それさえなけば、もう一ランク評価があがるのだが。
 あれはやはりビジュアル優先のアニメであって、それ以上でもそれ以下でもないと思う。各演出家へのコメントが比較的辛口でポイントをはずしていないことを考えると、「マクロスプラス」の高い評価には頭をひねらざるを得ない。個人的にはああいう学問的通史への試みより、人間の動きをダイナミックに追ったノンフィクションとしてのアニメ史を読みたいのだが。 


<2月27日・金>
◇ 今日はさっさと帰宅できるかなと思いつつ、明け方まで酒を飲んでしまい、結局土曜日朝にご帰宅。うーん、カラダに悪いのう。

□ 書店売りになったばかりの「ナショナル・ジオグラフィック」をペラペラとめくってみる。つ、つまらん雑誌だ。きっと、最後のカウボーイことロバート・キンケイド(笑い)みたいな渋めのキャメラマンが撮影したのであろう貴重な写真は確かにきれいだ。内容も資料価値は高いと思う。でも、なぜこの情報を今読まなくてはいけないのかという、つまりは雑誌を支えている根本のコンセプトがいまいちよく分からないのだ。何も週刊誌みたいにしろといっているわけではないが、南極最高峰に登山するという類のルポをそのまま掲載されても、はあそうですか、としかいいようがないのが正直なところ。科学ファンはこの雑誌をどのように受け取っているのでしょうかねえ>辛口批評家の森山さん。

△ 科学雑誌といえば、最近は何も読んでいない。かつて読んだことがあるのは「ニュートン」と「科学朝日」と「サイアス」ぐらい。クオークとか日経サイエンス、あと岩波の「科学」だっけ? そのあたりは全然読んだことがない。「サイアス」は科学と社会のクロスオーバーする部分をポイントにしていてその狙いはよく分かるのだが、個人的にはもうちょっと科学で遊ぼうという雰囲気があればなあ、と思う、たまたま買った科学朝日もそういうストロングスタイルの科学記事ではなく、科学コラム的話題が多い号を選んで買っていたこともあって、ボクはそう思うのだ。ニュートンは科学雑誌界のアニメージュという印象ですね(意味不明)。なんといっても、昭和天皇の学術的業績を特集した(笑い)のはこの雑誌ぐらいではないだろうか。


<2月28日・土>
◇ 目が覚めたらもう午後4時である。それで「Vガンダム」を見始める。見慣れてくると、気になるところは多々あるものの、結構お話にノレてくる。この勢いで全部見直してしまおう。シャクティも毎回、見て下さいっていってるし。私はお願いされると結構弱いのである。いやマジで。

○ 血中アニメ濃度が上がりっぱなしの昨今故に、「地球へ…」のLDも持ち出して見始める。このシナリオは、マンガからの脚色としてはかなり上等な部類。原作が細かいエピソードの積み重ねで心理を描いていたとすると、こちらは枝葉を刈り込んだ分、因果関係をもっと明確にして登場人物の心理を追いやすくしている。そして一番イイのは、そういう作業をしながら、映画版用のキメシーンが新たに創作されている点。このあたりは、原作が手元にないので間違っている可能性もあるのだが、ソルジャーブルーの「静かだ」というセリフ、グランドマザーに自らの血でもって反抗するキース・アニアンといったあたりは、新たに創作、あるいは演出の比重を原作より重くなっていて、それが映画ならではの迫力を生んでいるのだ。それから、あまり叙情に流れない上品な佐藤勝のスコアが映画に風格を与えているのはいうまでもない。

しかし、この映画、カメラワークについてはちょっと疑問が残る部分もある。たぶん1カットが長い、というのが大きな要素かもしれないが、すごく独特な動き方をしていると思う。うまく言葉にできないけれど、被写体がロング→アップ→ロングと、カメラへの接近と離脱をする際に、ややパンする、といった感じであろうか。このパターンのカットは頻出するのだった。

◇ そして、午後9時から会社へ……。しかしそれは結局無駄足になったまま午前1時に帰宅。取引先からの連絡を待ちながら、「少女革命ウテナ」を見る。黒薔薇編に突入したら例の合唱が、混声によるユニゾンに変更になっていた。まだちょっと慣れないのだけれど、女性だけのほうが気に障る感じがあってよかったなあというのが第一印象。

○ ムック「みんなのマンガ」(毎日新聞、905円)を読む。オーソドックスといえば聞こえがいいが、なんの工夫もない構成に大きくため息一つ。マンガの好きな識者(←便利な言葉だ)31人に勝手にアンケートを依頼して、それを再構成したベストテンランキングが一応のウリで、それに監修である村上知彦さんの総論、各界の有名人による私の1冊、10人の編集長へのインタビューという構成。ランキングについてのコメントは別として(一言いうなら完結していない、ドラゴンヘッドが1位、七夕の国が19位というのは、個人にはちょっと解せないところがある)、一番つまらないのは編集長インタビューだろう。

 もともと個別にインタビューしたものを、あたかも全員がその場にいるように(つまり座談会のように)再構成しているという時点からして意味不明である。内容も当たり障りのない内容で、つまりは企画そのものが失敗だったということなのだろうから、それをなんとか読めるものにするために、座談会風にしたのかもしれないけれど、中身がないのはいかんともしがたいなあ。


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