1997年10月上旬


<10月1日>
 ◇ というわけで、再開。気負わずのんびりと書いていこうと思う。

 ○ 仕事を終えて帰ってきてから、やたらとテンションが高くなってしまい眠れない。眠る前に、コミック、GON!(カゲマンのラストのコマに大爆笑。これとBOY’S BE…のグラビアが唯一?の収穫か?)と「JESUS 後編」(安彦良和、NHK出版)を読んだ為なのかもしれない。高校時代にユダとキリストが双子で、それにより「復活」が演じられるというアイデアを思いついたことがあったのを思い出した。そんな田舎の高校生のいい加減な妄想よりはるかに、丁寧に聖書を読み込んで作ってあって感激した。
 眠れぬまま、しょうがないので、「風俗の人たち」(永沢光雄、筑摩書房 2400円)を半分ぐらいまで読み進める。 筆者がぼっくより3つほど年上のころに書かれた、ペーソス溢れるルポ。出来がいいとか、そういう種類ではないと思うのだが(それについてはAV女優についてもそういう感想を持っている)、なんだかその人柄の良さにつられて読んでしまう。

<10月2日>
 ◇ 眠い。が、起きて仕事で恵比寿まで。昨年訪れたときはまだ工事中だったJR恵比寿駅の駅ビルが完成していて、えらいにぎわいよう。昼時の混んでいる喫茶店に入るも、店員がまだ不慣れなためかてんてこ舞いしていて、そんな店員の姿を見ているだけで疲れてしまう。同駅で某国出張秘密写真をDPE店に出す。
 夕方遅くに会社に戻って、たまっている仕事をザザザザザと音を立てて処理する。9月が決算月だからとはいえ、俺の事務作業嫌いは変わらないのだ。
 会社で夕食を食べると更に眠くなる。そういえば、今日仕事で会った人は「緊張すると眠くなる」と言っていた。怒られている時とか、運転免許試験中(卒業検定でハンドル握っている最中!)なんかにも眠くなったことがあるとか。不思議だ。

 ○ 昨晩みた「ネクスト戦記 エルガイア」とかなんとかいうアニメ。どこかで聞いたような見たような設定だが、それはそれでいいだろう。俺はかなり粗雑な設定には寛容だからいいようなものの、嫌いな人は怒るかもね。ただ、人間をメーンにしたSFアニメの演出法を持っている人というのは少ないようだ、という事実をを実感するばかり。まあ、好意的に「化けることを期待します」とは書いておこう。難しいと思うけど。
 俺的には1クールで終わるアニメより、向こうのスタトレとかシチュエイションコメディーみたいなアニメを一番期待しているのだが、それは無理なのかなあ。番組放送の慣習の差は大きいと言うことか。

 そういえば、今日仕事で会った人は、エヴァで血中オタク濃度が上昇して、つい「ダンバイン」のビデオとか見返してしまった、と言っていた。あまりそういうタイプには見えなかったので驚きだった。

<10月3日>
 ◇ 今日は埼玉県まででばってお仕事。道中、取引先の方と「アニメ評論家という存在があるか?」という話題になり、アニメに出自を持ちながら社会も見ている人(つまり、いわゆるスタンダードな映画評論家のようなポジション)とするなら、東浩紀氏がそれに一番近い存在なのではないか、という一定の合意を見る。取引先の方曰く、アニメの中か外かという距離感において上野俊哉氏と東氏は大きく違うのであろう、と。それには大きく頷いてしまった。

 ○ 某所で1/1フィギアを見る機会があった。なんつーか、「アニメのキャラって結局2次元じゃん」ていうありがちな批判を飛び越えるようなそのアニメ的に「リアル」な造形に、なにやら自分の持っているパースペクティブが狂うようなインパクトがあった。
 平面な顔に巨大な目、巨乳に細くて長い足。もしかすると普通の人は気持ち悪いっていうかもしれないが、ボクにはそういう感覚はなかった。むしろ、アニメに涵養されたセクシャリティの部分がものすごく強烈に刺激されて、高校時代に「ダーティーペア」の下敷き持っていた、とか、「セラムン」に転んだ瞬間とか、をフォラッシュバックのように思い起こさせられた。

<10月4日>
 ◇ 結局、朝まで仕事。へろへろの状態で帰宅して、午前10時過ぎから仕事がらみでラジオの電話インタビュー?のようなものを受ける。相手の姿も見えず、どんな雰囲気のコーナーかも理解できていなかったのでヘロヘロな中身の回答。やっぱり俺はしゃべるのは下手だわ。

 ○ 一眠りして、ちょっと仕事上の電話連絡。その後買い物にでかけて、MDを買おうかなあ、と悩みつつも見送り、地元書店で「VOW8」(宝島社、900円)、「東大オタク学講座」(岡田斗司夫、講談社 1800円)、「「報道」のTBSはなぜ崩壊したか」(川辺克朗、光文社 1600円)。それに、WIREDと日経エンタテインメント、キネ旬。レンタルビデオを借りて帰るが、ビデオを見ないでガガガを見てしまう。

 ☆ ガガガは完全に群像劇になってますなあ。視聴率がふるわないから、もっと子供向けに軌道変更でもしたのかと思ったら、ボクがはじめてみた第1話よりもマニアックなムードになってました。

 その後はビデオで「レムナント6」を鑑賞。ダメともいえず、傑作ともいえず、ちょっと居心地が悪いかも。好意的な評価も、否定的な見解も同じだけ可能のような気がする。最大の欠点は、「少年の踊り」に説得力がなかったこと。あのシーンは、監督の文芸指向がちょっと鼻につかないでもないが、それ以上に、あの少年が踊るような内的必然があるようなキャラクターになってなかったことが問題だろう。
 もともと言葉が不自由とか精神的に抑圧されているとか、そういう「彼自身が言葉に頼れない状況」みたいなのがあれば、生死の狭間で踊るというのも理解できないでもないが、そういう描写はなかったものな。
 J・MOVIEWARSにそこまで要求するのは可哀想かも知れないが……。それとPG。

<10月5日>
 ◇ いつものように昼過ぎに起き出して、「古奈屋」でうどん。それから歩いて、駒込にある日本庭園「六義園」へ。自分の部屋から徒歩でいける範囲に、あんなに大きな庭園があるとは知らなかった。もともとは、大名のつくった庭で、岩崎弥太郎の手を経て、都に寄付されたものだという。
 残念ながら、芝生でゴロゴロできるような庭ではなかったが、庭園内にある築山はかなり高くて、上ってみると園内が一望できるほどであった。帰宅途中でケーキを買うが、食べてみると甘過ぎ。やれやれ。それとサクッとPG。

 ○ 午後5時ごろから二時間ほどは仕事モード。それが終わった後は、駅前の居酒屋で夕食。鶏肉のねぎまみれというメニューがなかなか美味であった。帰宅してからLDで「未来世紀ブラジル」を鑑賞しつつ、沈没。また、アニメ「名探偵ホームズ」の「海底の財宝」を久しぶりに見たが、オモシロ過ぎる。アニメ演出の一つのお手本のような気もする。

 ☆ 金曜日の夕方、某局の「ザ・ヒューマン」を見た。特集は「”波動”」。バカというか、愚かというか、根拠が曖昧すぎる(個人的には、ない、と思っているゾ)波動を、あんなに肯定的に扱うなんて正気とは思えん。スジャータで有名な名酪(あれ、社名変更していたかな?)の取り組みも同番組で紹介していたが、これなんて「別冊宝島」で、かなりトンデモ度が高いことが証明ずみであるのに……。
 番組中に、バランスをとった意見があればともかく、健康とか命に関わる話題なので安易に「アトピーに効いた」(番組中でそういうインタビューが一件あった)というような部分だけを強調するのは間違いである。いや、マジで局に抗議の電話をしようかと思ったゾ。

<10月6日>
 ◇ 昨晩は「未来世紀ブラジル」を見ながら沈没してしまい、目が覚めたのは午前1時半。当然そこから眠れるわけもなく、「VOW8」を読んだりして時間を潰す。規則正しい生活をしていないと、結局週末って何もしなかった割には、寝不足という最悪の事態になるんだよなあ。なんとか、週末有効利用計画をたてなくては。というわけで、寝不足の上、寝違えたまま会社へ。ええ、仕事はサクッと済みます。まあ、私の苦手な事務処理については、総務部から怒られまくりですが、低姿勢でなんとかクリアです。

 △ サッカーネタをまとめて。まず、祝・ジュビロ磐田優勝。オフト監督がいっていた「3年で優勝を狙えるチームにする」にはやや遅れたが、メデタシメデタシ。そして、日本代表。ツメの甘さは一体なんだ。もう脱力の極みでゴンス。ただ今の時点で、加茂を替えることになんの意味があるのだろうか、という気もする。川渕「天皇」のなさることだからなあ。結局、鍋ツネ(とでも描いておこう)と川渕が仲が悪いのは、同類だからではないのだろうか。やれやれ。

 ○ 昨晩「東大オタク学講座」(岡田斗司夫、講談社 1800円)読了。講義の内容はともかく、最後についているレポートは、なんだかどーでも良すぎる。もともとあの講義でレポートというのが難しいのかもしれないが……。個人的に興味があるのは岡田氏は、どれぐらいの人数を不可にしたか、ということである。これで単位の認定が甘かったら、おいしすぎる授業ではある。まあ、芸人として講師をやっている、と言われたらなんとも言い返しようがないのは百も承知であるが……。

<10月7日>
 ◇ 少しでも映画に触れようと、昨晩は帰宅してからビデオで「太陽の王子 ホルスの大冒険」を見る。今更なんだけれど、その存在が大きすぎてついつい見ることを避けてしまう作品というのはありますよね。この映画もそんな一本でした。でも、先日衛星放送でOAされているのをチラと見たところ、ヒルダの歌が流れており、その歌声に魅了されたため、早速ビデオでレンタルすることにした。
 さて、作品について。テーマもさることながら、ヒルダがあんなに魅力的とは……不覚であった。キャシー(でしたっけ、どうぶつ宝島のヒロイン)を陽とするなら、まさに陰のヒロインとも呼ぶべき存在感。特に、刺繍が出来ないことを笑われたために、村を襲ってしまう部分は、彼女の屈折した心理を見事に現している。ちなみに彼女の声は、最近若者の間でブレイクしているという噂の市原・家政婦は見た・悦子。
 さきほども書いたが、ヒルダの歌はいい。また、劇中の合唱は今聞くとやや古風だが、労働歌として生活描写をしながら場面転換をスムーズにする、という点の効果は十分に果たしている。現代の説教師・中野翠氏なら「民青くさい」といいそうなシーンだが、俺的にはオッケーである。
 欠点は、迷いの森のシーンからカタルシスに至る部分にテンポの乱れがあるところ。太陽の剣を鍛え直す(団結の象徴)ことと、マンモスの襲撃の時間関係が曖昧で緊張感が薄れるほか、ホルスが迷いの森で悟った真実が具現化されるプロセスが弱いため、あと一歩のところでテーマの打ち出しが弱くなっている。

 高校時代に熟読した高畑氏の「ホルスの映像表現」は、僕が映画を考えるようになった原点の1冊であるが、ついに見ることができて満足である。

 ○ 仕事の合間に書店で買い物。カレーファンの私としては買わずにはいられない「カレーライスと日本人」(森枝卓士、講談社 650円)、それに読んでみたら偶然少年法の問題が書かれていた「破滅 梅川昭美の三十年(毎日新聞社社会部編、幻冬舎 495円)、それにいろんな意味で興味がある「若い読者のための短編小説案内」(村上春樹、文藝春秋 1238円)、勢いで購入した「メディア人間 コミュニケーション革命の構造」(中野収、勁草書房 2800円)。ついで(?)に「天下御免の向こう見ず」(爆笑問題、二見書房 1000円)、「天使の時空船」(松本零士、潮出版社 590円)。

【日記猿人関連】
 ☆ 日記読み日記をめぐる周辺が、ちょろっとガヤガヤしているみたいですね。ビギナーの方はいきなり日記読み日記にテロられたらまあ怒るのも当然でしょう。まあ、俺も初めて読んだときは「なんだこいつらは」と思ったもの。作者もそれなりの考えは持っているはずなので、正統な反論(プロバイダに電話は反則、ね)なんてのはできるのならバンバンすればそれでいいんではないでしょうか。
 ただ、どこかの日記では、日記読み日記のやっていることを誹謗中傷なんて書いていたけれど、それほど大した物ではないでしょう、というのが僕の意見。内容については、いちゃもんというにはぬるいし、皮肉というにはストレート過ぎるといったところでしょうか。むしろ、アレの果たしている役割はむしろ日記界の「ニッチ産業」みたいなのといえるのでは?
 まあ、誹謗中傷なんて書く方は、どこか後ろ暗いところがあるのかも。(例えば他人の日記を登録したことがあるとか) 

<10月8日>
 ◇ 会社で仕事の進行上だらだらと午前2時から午前7時ごろまで時間を潰すはめに。やれやれ。今日は早く帰りたかったのになあ。しょうがないので、「破滅 梅川昭美の三十年」(毎日新聞社社会部編、幻冬舎 495円)を読む。やりきれない内容だった。稚拙であるが故に、社会を巻き込んだ大事件に発展した三菱銀行猟銃強盗人質事件は、梅川昭美の心の闇を我々にかいま見せただけだったのだ。その闇の中に「合理的な理由・動機」というものは隠されてしまい、関係者の死を納得しうるだけの「物語」を作る材料は一つもない。関係者への取材から浮かび上がる細かな人間関係は、その理由を説明する数少ない材料の一つであるが、

 気分が暗くなったので「カレーライスと日本人」(森枝卓士、講談社 650円)を読む。簡単にカレー伝播の歴史をまとめる。1774年、ベンガル総督の英国人・ヘィスティングスが英国に紹介。1774年には家庭用料理本に紹介されたように、やがてイギリスでカレーは一定の定着をみせ、C&B社もカレー粉を取り扱うようになる。日本へは、明治維新とともに洋食の一環として紹介され、大正時代にほぼ定着。その間にシチュウの料理法がミックスされ、肉とともにジャガイモ、ニンジンがごろごろする現在の日本のカレーのスタイルが成立する。なお、カレーが国民食の地位を確立したのは、軍隊でメニューに取り入れられたことが大きい原因のようだ。
 なかなかコンパクトにまとまっている上に、様々な時代のレシピまでついていてお得感がある。

 ○ てなわけで、寝て起きて会社へ。淳久堂で必要な資料を買って、サササーと仕事をして帰宅。

 △ その淳久堂で購入したトンデモ物件。「住宅マンガ 20代30代の安くていい家えらび」(岡田憲治・船橋渉、エール出版社 1400円)。内容はいわゆる「マンガで見るガイド」なんですが、そのマンガが不条理マンガっぽいというか、ガロ系(これはガロに失礼な表現かなあ)アート入ってます絵、というか一番近いのは東南アジアのコミックスに近いかもしれません。そんな怖い絵で、「若いカップルがさまざまな動物たちに家の購入ポイントを教わる」という、メルヘンというか悪夢のような物語が展開するわけです。絵をご紹介できないのが残念ですが、一読の価値はあります。

<10月9日>
 ◇ 中途半端な徹夜のダメージをまだ引きづりつつ会社へ。まあ、お仕事お仕事という感じで過ごしました。そして、そのまま10日朝8時半までお仕事。うーん、ちょっとヘヴィかも。まあ、週末が休みなんでこんな展開になってしまったわけですが……。と、おもいつつ前日の日記を更新したりして。とはいうものの、今日は仕事ばっかりの日でしたので、この程度でおしまい。  

<10月10日>
 ◇ というわけで、朝食(最近、コンビニで売っている豆の煮込みが好み)、PG、洗濯と眠気をこらえながらこなします。正確に言うと、わずかばかり頭の中に巣くっている「眠気」を、徹夜明けのハイテンションがきれいに押さえ込んでいる、という状態かな? 今週末は法事のために実家に帰省するので、そのために必要な準備なぞをします。
 で、昼食は店屋物。みそ煮込みうどん大盛りを頼んで食べた。汁は薄味で全体としてはまあまあの域を出なかったけれど、大根は「これはおでんか?」と思うほど柔らかく煮られていて、それはおいしかった。食べると眠くなるので、そのまま気絶。気づくと午後4時。うーん。また、なにもしない週末になりそうだ。これは本気で「週末再生検討委員会」を発足させねば。
 帰省の支度をして、居酒屋で晩御飯。サンマがミディアムという感じの焼き具合でちょっと生臭い感じだった。串カツも、見本写真の半分ぐらいの大きさしかなくて、つい笑ってしまう。その後は、暇に飽かせてカラオケなど。この間、頭の中で無限リフレーン状態になった「キカイダー01」を歌う。しかし、GIGAはダメだな。そして、午後10時7分のこだまで静岡へ向けて出発。

○ 午前零時過ぎに実家に到着。とりあえず某国出張のパリ土産(某国には名物なし、ということで乗り換えに使ったパリで購入)なぞを家族に渡す。で、父親とワインをドイツ2本ほど。その間に、祖母が結婚相手はいないのか、と尋ねるので、鋭意努力しております、と官僚のような答弁をしておく。
 父親と情報交換すると夢枕獏の「神々の山嶺」を薦められる。父は大絶賛。「鉄道員」はあまり口にあわなかった様子だし、お気に入り作家である佐々木譲の「総督と呼ばれた男」も、父はあまり気に入っていなかった様子だったが。岩波から出た中沢新一のポケモン本を薦めようと思ったら、すでに購入済み。ただ、父はポケモンのなんたるかを知らなかったので、簡単に解説しておく。これならゲームボーイを持ってくれば話が早かったのに。

 △ 父に「「育毛剤」を使ったほうがいいのではないか」と、アドヴァイスを受ける。大きなお世話といいたくなるが、痛いところをつかれたかも。

☆ 静岡の深夜では、「エコエコ…」がオンエア中。それにSTの「DS9」もやっていた。


もっと過去

偽名日記へ

RN/HP

もう少し未来